多くの科学者や識者が警鐘を鳴らす、海洋プラスチック問題。年間800万トンものプラスチックが海に捨てられているという。その大半は海底に沈み、海面や海中を漂うプラスチックも永久に分解されず、マイクロプラスチックとなって食物連鎖の一部になっていく。プラスチックゴミによる海洋汚染の実態とは?そしてプラスチックが海に、プランクトンに、クジラに、海鳥に、人体に及ぼす影響とは―?
デイビッド・アッテンボロー、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、バラク・オバマ他が出演。ドキュメンタリー映画『プラスチックの海』が11月13日(金)アップリンク渋谷・吉祥寺他全国順次公開となる。
シロナガスクジラに魅せられ、幼い頃から追い続けていたクレイグ・リーソン。しかし、世界中の海を訪れる中、プランクトンよりも多く見つけたのはプラスチックゴミだった。美しい海に、毎年800万トンものプラスチックゴミが捨てられている事実を知り、海洋学者、環境活動家やジャーナリスト達と共に、自身が監督となり世界の海で何が起きているのかを調査し撮影することを決意する。
21世紀に入り、生産量が激増しているプラスチック。便利さの一方で、大量のプラスチックが海に流出し続け、近年は5mm以下の「マイクロプラスチック」による海洋汚染にも大きな注目が集まっている。調査の中で明らかになるのは、ほんの少しのプラスチックしかリサイクルされていないこと。海鳥の体内から、276個のプラスチックの破片が発見されるなど、海に捨てられたプラスチックで海洋生物が犠牲になっていること。そして、プラスチックの毒素は人間にも害を及ぼすかもしれない。
撮影クルーは世界中を訪れ、人類がこの数十年でプラスチック製品の使い捨てを続けてきた結果、危機的なレベルで海洋汚染が続いていることを明らかにしていく。
クレイグ・リーソン監督 プロフィール
ジャーナリスト、映画監督、活動家。
BBC、CNN、アルジャジーラ、ナショナルジオグラフィック、ディスカバリーチャンネル、Australia’s ABC等に出演。司会者、ニュースレポーターとして活躍し、ジャーナリストとして30年の経験を持つ。起業家としてLeeson Media International、Ocean Vista Films CEOを務める。I Shot Hong Kong Film Festival創設。プラスチック・オーシャン財団エバンジェリスト。1999年からドキュメンタリー作品を制作、2016年公開の映画「プラスチックの海(原題:A PLASTIC OCEAN)」は国内外で15以上の賞を受賞。2017年の国連総会では短縮版(22分)が上映された。
監督Q&A
Q. 海洋プラスチックゴミの問題に関心をもった理由を教えてください。
A. 海の生き物に興味を惹かれ、海が遊び場であり学び舎になっていたからです。幼い頃から、産業公害が地元の沿岸水域に与える影響を知っていたことが、私自身にも影響を与えました。
Q. 海洋プラスチックゴミ問題が地球規模の問題だと気付いたのはいつですか?
A. 2010年、私はそれまで気付かずにいた海洋汚染の原因に気が付きました。それは、長年「使い捨て」だと教えられてきたプラスチックです。それから、私はプラスチックが人間と海洋生物に与える影響を徹底的に研究しました。
Q. 地球規模で対処すべき重要な課題だと思う理由はなんでしょうか?
A. プラスチックは人間が作り出したモノです。自然界にあるべきでない、またどう処理すべきかわからないものなので、堆積し、病のように地球を侵しているのです。地球の資源が持続的に存続するよう回復するよりも早く、私たちはその資源を使い切ってしまっています。海こそが私たちを生かしていると教わった人はごくわずかです。シルビア・アール博士の言うように、「綺麗な海がなければ、緑豊かな自然も存在しない。」天候、酸素、綺麗な水、食糧、医薬品となるものは海から、もしくは海の恩恵に支えられています。
Q. 『プラスチックの海』を通して成し遂げたいことはなんでしょうか?
A. 問題を知らなければ、何もしないですよね。知ることが、問題に関わることに繋がります。問題を提起することによって、対話が始まり、変化が引き起こされることを望んでいます。協同し機能するような、海洋プラスチックゴミ問題の解決策はすでに私達の周り(身近)にあるのです。この問題の情報を共有することこそ、プラスチックの取り扱いに関する公共政策の転換につながります。
Q. 映画制作は監督自身にどんな変化をもたらしましたか?
A. 自分も世界の一部だという認識がより強くなりました。実際にプラスチック使い捨て反対のキャンペーンでは、大声を上げて活動しています。気がつくと私はスーパーで精算中の人や、テイクアウト商品を手渡す店員、カフェのオーナーや銀行員、政治家など誰にでもプラスチック製品の使い捨ての悪影響について話しているんです。自然に優しくサスティナブルな投資や、利益が持続可能性や環境への責任に基づいているビジネスに強い関心を抱くようになりました。
数字で見る『プラスチックの海』
世界中の人々が毎週クレジットカード1枚分に相当する5gのマイクロプラスチックを摂取している!?
人間が1年間に体内に取り込むプラスチック量は、推定約250gに上ると言われている。また、このままプラスチック使用が増加し続けると、プラスチックごみの総量は2050年には海の魚の量を超えると予測されている。
●年間3億トン以上のプラスチックが生産されている。50年前の約5倍の量。
●250mlの油と3リットルの水を使い1リットル用のペットボトルを製造している。
●欧州では毎年1500万トンのプラスチックゴミが埋め立てられている。
●米国では毎年380億本のペットボトルが廃棄、200万トンのプラスチックゴミが埋め立てられている。
●1秒間に4,000個のペットボトルが使われている。
●年間800万トン以上のプラスチックゴミが海に捨てられている。そのうち大半は海に沈んでいる。
●プラスチック製品の半数は使い捨て。平均するとプラスチック製品の寿命はなんと12分。
出典:映画『プラスチックの海』本編
日本でも・・・
●日本周辺の海に漂う量は世界平均の約27倍と言われている。
●日本はプラスチックごみの総量は940万トンで世界第5位。
●日本人口1人当たりのプラスチック廃棄量は年32kgで世界第2位。
出典:国連環境計画(UNEP)報告書「シングルユースプラスチック,2018」、平成30年8月環境省作成資料「プラスチックを取り巻く国内外の状況」
『プラスチックの海』出演者の言葉
米国での使い捨てのプラスチック消費量は1人につき年間約136キロ。
プラスチックは丈夫であるが故に優れている反面最悪な素材でもあります。今までに作られたプラスチックのほぼ全量が地球上に残っています。今や世界での生産量は3億トンを超える状況です。
プラスチック製品の半分は使い捨てです。2050年には世界人口が約100億人に達しプラスチックは3倍になるそうです。
(クレイグ・リーソン監督)
私たちはごみをごみ箱に捨てたり、海やビーチに投げ捨てたりします。
それで無くなったと見なすのです。
海のプラスチックごみは8割が陸からのものです。
内陸で出たごみでも海に到達する可能性があります。
地球全体が人類の住み家です。ごみを捨てていい所はなく、ごみからは逃げられません。
海は自分1人の庭ではなく全ての生物の庭であり家と同じなんです。
海洋は地球にとって支配的な影響力を持ちます。実際は地球の大半は海なんです。
(海洋学者 シルビア・アール博士)
地球環境の改善には海洋環境を改善すること。
海洋が破壊され機能を果たさなくなれば全生物が危機に陥るだろう。
(動物学者 デイビッド・アッテンボロー卿)
私たち人間はここ10年で20世紀より多くのプラスチック製品を作ってる。
そのうち半分の製品は使い捨てと言われているわ。
分解できない素材なのに使い捨てたら、どうなるの?
地球はごみであふれ返り捨て場がありません。
できる限りプラスチックで包装してない食品を買うわ。
まずは一般消費者が行動することです。
(フリーダイバー タニヤ・ストリーター)
作品タイトル:『プラスチックの海』
出演:クレイグ・リーソン、デイビッド・アッテンボロー、バラク・オバマ、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、リンジー・ポルター、ジョー・ラクストン、ダグ・アラン、ベン・フォーグル、マイケル・ゴンジオール他
監督:クレイグ・リーソン
プロデューサー:ジョー・ラクストン、アダム・ライプジグ
製作総指揮:ソンジア・ノーマン、ダニエル・アウエルバッハ、クレイグ・リーソン
脚本:クレイグ・リーソン、ミンディー・エリオット
撮影:マイケル・ピッツ
編集:ミンディー・エリオット
音楽:ミリアム・カトラー、ローレンス・シュワルツ
原題:A PLASTIC OCEAN
100分/2016年/イギリス・香港
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/plasticocean/
2020年11月13日(金)アップリンク渋谷・吉祥寺他全国順次ロードショー