アオキ裕キが主宰し、ホームレスたちと“生きる舞”を表現するダンス集団「新人Hソケリッサ!」の姿を追ったドキュメンタリー「ダンシングホームレス」が2020年3月より、シアター・イメージフォーラムにて全国順次公開することが決定した。
来年、東京オリンピックを迎える日本で、政府によるホームレス追い出し政策、社会のホームレスへの無関心などがある中、踊りで肉体表現をし社会とつながる彼らの姿は、いまの日本社会を映し出す―。
路上生活経験者だけで構成されたダンスグループ「新人Hソケリッサ!」。普段の私たちの生活からは、ホームレスの姿は見えない。しかし本作では実名で登場し、その日常が包み隠さず描かれる。メンバーは家庭内暴力や病気、社会的な挫折を味わい、疎外感に苛まれながらホームレスになった。しかし今、踊ることが彼らと他者、そして社会との唯一の接点になっている。
このグループの主宰者は、振付師のアオキ裕キ。日々路上生活するホームレスは五感などの身体感覚が原始的な身体に近いと考え、人間本来の生命力溢れる踊りを見たい、とソケリッサを始めた。グループには、”人に危害を加えない”以外ルールはない。無断で本番を休んでも構わない。アオキは言う「社会のルールがいいですか?」と。アオキは、彼らのあるがままを受け入れ、踊りに昇華する。このドキュメンタリーは、彼らが踊ることで社会復帰していく様を描くような、ありがちな物語ではない。家族も財産もすべてを失ったホームレスたちが、唯一残された肉体と、圧倒的な熱量で、彼らにしかできない肉体表現を追求していく姿を描く、これまでにないドキュメンタリー。彼らの過去、現在、そして彼らの生きている証である踊りを力強く見つめていく。
どん底を経験したホームレスによる”生きる舞”。
それは社会への痛烈なメッセージである。
新宿のバスターミナルで路上生活をする西篤近。ダンスで生計を立てたいと願うが、人間関係がうまくいかず、借金も膨らみ、親にも縁を切られ、ホームレス生活を始める。一度は野垂れ死ぬことも考えた西が出会ったのが、路上生活経験者だけで構成されるダンスグループ「新人Hソケリッサ!」だった。主宰者の振付師アオキ裕キは武者修行に行ったアメリカで同時多発テロに遭遇した衝撃から、帰国後にソケリッサを立ち上げる。社会からも妻からも逃げた小磯松美。メニエル病を患いドロップアウトした横内真人。父親の暴力から逃れ路上生活者となった平川収一郎。アオキはそんな全てを捨ててきた人たちから生まれる「肉体表現」を追求しようとしている。彼らを応援してくれる人もいるが、時として「わかりにくい」「踊れるなら働け」と罵倒されることもあり、苦悩する。しかし、アオキは不器用で、いまあるようにしか生きられないホームレスたちのそのままを受け入れ、彼らも踊りを通してもう一度生きがいを取り戻していた。物語のクライマックスでは渾身の肉体表現をメンバーが魅せる。
作品タイトル:『ダンシングホームレス』
出演:アオキ裕キ、横内真人、伊藤春夫、小磯松美、平川収一郎、渡邉芳治、西篤近、山下幸治
監督・撮影:三浦渉
編集:前嶌健治
撮影:桜田仁
音楽:寺尾紗穂、石川征樹、平沢進、ダニエル・クオン
プロデューサー:佐々木 伸之
エクゼクティブ プロデューサー:田嶋 敦
製作 配給:東京ビデオセンター
2019/日本/DCP/99分 cTokyo Video Center
公式サイト:thedancinghomeless.com
コピーライト:(c) Tokyo Video Center
2020年3月上旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開