55歳で夫を亡くした後、息子のすすめで小説講座に通い始め、主婦業の傍ら本作を執筆。63歳の新人としてスポットを浴び、史上最年長で第54回文藝賞を受賞、第158回芥川賞もW受賞した若竹千佐子による50万超えのベストセラー「おらおらでひとりいぐも」。日本のみならず、韓国、中国といったアジア圏をはじめヨーロッパでも翻訳版の刊行が進み、“賑やかな孤独と圧倒的な自由”という視点から世界的にも大きな共感と注目を集めているこの作品が、映画『おらおらでひとりいぐも』として映画化されることが決定した。
監督は、『南極料理人』をはじめ、『キツツキと雨』、『横道世之介』、『モリのいる場所』など数々の話題作を手掛け、ブルーリボン賞最優秀作品賞(『横道世之介』)をはじめ数々の国内外の映画賞を受賞するなど、名実ともに日本を代表する監督のひとりである沖田修一。さらに原作に惚れ込んだ沖田監督が自身で脚本も執筆した渾身の一作となり、監督が出演を熱望した田中裕子、蒼井優との初めてのタッグで原作の魅力がどのように映像化されるのか、期待を集めている。
主人公は、75歳でひとり暮らしをしている“桃子さん”。1964年、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、身ひとつで上京してから55年。夫・周造と出会い結婚し主婦となり、2人の子供を育て、これから夫婦水入らずの平穏な日々を過ごそうと思った矢先、突然夫に先立たれ途方に暮れていた。
しかし、ひとり家でお茶をすすり、図書館で借りた本を読みあさるうちに、46億年の歴史に関するノートを作り、万事に問いを立ててその意味を探求するようになる。すると、桃子さんの“心の声”が、ジャズセッションに乗せて内から外に湧き上がってきた!桃子さんの孤独な生活は、現在と過去を行き来し、いつのまにか賑やかな毎日に変わっていく――
晩年の「普通」の女性が描かれ、それによって「普通」の人が勇気づけられる、今までありそうでなかった物語。各書店で売り上げ1位を席巻した原作は、桃子さんの人生を「娘の時代」「妻の時代」「祖母の時代」と3つに分けて描かれており、シニア世代のみならず、すべての世代の人からも共感とさわやかな感動を呼ぶ作品となっている。
「現在」の桃子さん(75歳)を演じるのは、15年ぶりの主演作となる田中裕子。世代を超えて熱烈なファンを持ち、NHK連続テレビ小説「おしん」をはじめとして、映画『天城越え』、『男はつらいよ』シリーズなど、いまや伝説となっている数々の名作に出演する田中が、令和の時代に、15年ぶり(映画『いつか読書する日』以来)に主演を務める。近年では、テレビドラマ「Mother」、「Woman」、「anone」など話題作にも出演し、昨年公開された『ひとよ』(白石和彌監督)では圧倒的な存在感を見せ、大絶賛されている。長きにわたって第一線で活躍する田中が、誰からも愛される主人公・桃子さんを魅力的に演じる。
そして、蒼井優が「娘の時代」「妻の時代」(20~34歳)の桃子さんに決定。現在の桃子さんが懐かしく、そして愛おしく思っている時代の桃子さんを、田中裕子と心をひとつに演じる。映画『フラガール』に始まり、『東京家族』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『宮本から君へ』などの作品で、多数の受賞歴をもち、その実力は折り紙付き。最新作『ロマンスドール』での熱演も話題となっており、さらに魅力が増している蒼井の新たな表情を見ることが出来る。
世界的に高齢化が進む中、82歳のアプリ開発者や81歳のDJといった表現者たちが活躍し、年齢に関係なくパワフルに生きる女性たちが増え続けている。世界有数の長寿国である日本では、2020年に日本人女性の2人に1人が50歳以上となり、充実したシニアライフを送る女性も増え続けている。そんな日本のすべての女性たちに、勇気とパワーを届ける映画が誕生した。
<原作>
おらおらでひとりいぐも
若竹千佐子
河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026374/
ひとり暮らしの桃子さん。おらの今は、こわいものなし――
あなたの人生の応援歌、50万部突破の感動のベストセラー。
コメント一覧
脚本・監督
沖田修一
この原作をどうやって映画にするのか、企画をいただいた時、映像化が難しいと思う反面、他にないような不思議な映画になりそうだとも思いました。田中裕子さんとのお仕事は、毎日が刺激的で、緊張もありましたが、桃子さんの、生活の機微のようなものを撮っている時の、あの楽しさを思い返すと、とても素晴らしい時間だったと思います。また、蒼井優さんが、若い桃子さんに丁寧に向かってくださり、監督としては、もう二人の桃子さんを撮りながら、ひたすら感動していたのでした。
【プロフィール】
1977 年、埼玉県生まれ。01年、日本大学芸術学部映画学科卒業。短編自主製作映画数本を経て、02年、『鍋と友達』で第7回水戸短編映像祭グランプリ受賞。06年、初の長編『このすばらしきせかい』発表。08年、「後楽園の母」をはじめとする数編のTVドラマで脚本や演出を手がける。09年、『南極料理人』で商業映画デビュー。同作は全国公開され、09年度新藤兼人賞・金賞、第29回藤本賞・新人賞、第1回日本シアタースタッフ映画祭・作品賞2位、監督賞などを受賞。12年公開の『キツツキと雨』はドバイ国際映画祭では日本映画として初めて三冠受賞を達成、13年2月公開の吉田修一原作『横道世之介』では、第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞、第5回TAMA映画賞最優秀作品賞はじめ日本の映画賞を総ナメにし、パリのKINOTAYO映画祭でもソレイユ・ドール観客賞(=グランプリ)を受賞するなど、国内外で高い評価を得た。18年5月公開『モリのいる場所』でも第10回TAMA映画賞特別賞、第40回ヨコハマ映画賞脚本賞など日本の映画賞を多数受賞し、日本映画界の次代を担う作家として期待されている。公開待機作には上白石萌歌主演『子供はわかってあげない』(2020年初夏公開)がある。
出演
田中裕子 (現在の桃子さん(ももこ)役 <75歳>)
スタッフの皆さま キャストの皆さま、お疲れ様でした。
今回の撮影では、最初図書館に恐竜の図鑑を借りに行って、小学生のコーナーでしたが、その時からなんだかもう小学生のような気分になりました。
撮影の中で、図画工作の時間がありました。
音楽の時間もありました。体育の創作ダンスの時間もあったし、遠足も行ったし。保健かな?湿布の貼り方っていうのもあったような気がします。
遠足ではとてもお天気に恵まれてきれいに澄んだ空気の中、雑木林でどんぐりや松ぼっくり拾ったりしました。あのどんぐりや松ぼっくりも寒い冬をくぐって朽ちてゆくんだと思いますが、雑木林にはまた春がやってくるんですよね。
私も日々朽ちていくのでありますが、この歳になってこの作品に会えて、沖田監督にお会いできて、嬉しいです。監督の撮影中の一喜一憂される姿が目に焼き付いています。私のこれからの日々に監督のあの姿を思い出してニヤニヤできる事が、私にとっての小さな春になりそうです。皆さま、ありがとうございました。
【プロフィール】
1955年4月29日生まれ、大阪府出身。NHK連続テレビ小説「マー姉ちゃん」(79)でデビュー。1981年公開『ええじゃないか』『北斎漫画』で第5回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞をW受賞。1983年にはNHK連続テレビ小説「おしん」の主演を務める。同年公開『天城越え』(83)でモントリオール世界映画祭主演女優賞、第26回ブルーリボン賞主演女優賞、第57回キネマ旬報主演女優賞、第38回毎日映画コンクール女優主演賞を受賞。2005年『いつか読書する日』『火火』などで第79回キネマ旬報主演女優賞、第30回報知映画賞主演女優賞、第60回毎日映画コンクール女優主演賞を受賞。
2010年には紫綬褒章を受章している。2015年から2018年にかけては舞台「NINAGAWA マクベス」(蜷川幸雄演出)が日本を皮切りに世界5都市で上演。最新の出演作は2019年公開『ひとよ』(白石和彌監督)など。
蒼井優 (昭和の桃子(ももこ)役 <20歳~34歳>)
「田中裕子さん主演、沖田修一監督作品」という、何があっても映画館で観たい作品に、自分も携わらせていただけたこと、心から嬉しく思います。
私は、田中裕子さんが演じられる「現代の桃子さん」の、20代と30代パートで出演し、現代パートでは桃子さんの脳内の声をやらせていただきました。この作品は桃子さんという1人の女性のお話ですが、映画をご覧になられる方、皆さんのお話でもあると思います。桃子さんの今に想いを馳せたり、娘、直美の言動に自分を重ね反省したりしながら撮影を進めていました。1人の人生にスポットをあてた作品でありながら、壮大で奥行きのある、ユーモア溢れた作品になっていると思います。
オファーをいただいた時から、早くこの作品を観たくてたまりません。田中裕子さんとご一緒させていただくことも夢でしたので、世界中に自慢したいくらい幸せです。
【プロフィール】
1985年8月17日生まれ、福岡県出身。『リリイ・シュシュのすべて』(01)のヒロイン役で映画デビュー。『花とアリス』(04)、『ニライカナイからの手紙』(05)、『フラガール』(06)などで主演を務め、『フラガール』で第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞をダブル受賞したほか、国内の映画賞を総なめにした。近年の主な映画出演作に、『オーバー・フェンス』(16)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16)、第41日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)、『斬、』(18) 、『長いお別れ』(19)、『宮本から君へ』(19)など。公開待機作に『ロマンスドール』(20年1月公開) がある。
原作
若竹千佐子 『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社刊)
『おらおらでひとりいぐも』が映画になるなんて夢のようです。ましてあの田中裕子さんが主役だなんて!!
同世代、大好きな女優さんです。桃子さんが大勢の人を介してもう私の手の届かないところに大きく羽ばたこうとしています。作者として何より嬉しいことです。
【プロフィール】
1954年、岩手県遠野市生まれ。
遠野で育ち、子どもの頃から小説家になりたいと思っていた。岩手大学教育学部卒業後は、臨時採用教員として働きながら教員採用試験を受けるが、毎年ことごとく失敗。目の前が真っ暗になるほど落ち込む中で夫と出会い、結婚。
30歳で上京し、息子と娘の二児に恵まれる。都心近郊の住宅地で子育てをしながら、深沢七郎、石牟礼道子、町田康、河合隼雄、上野千鶴子の本を愛読していた。55歳のとき、夫が突然、脳梗塞で死去。悲しみに暮れ自宅に籠る日々を送っていると、息子から「どこにいても寂しいんだから、外に出たら」と小説講座を勧められ、通いはじめる。主婦業の傍ら本作を執筆し、2017年、第54回文藝賞を受賞しデビュー。2018年1月、同作で第158回芥川賞を受賞する。
ストーリー
75歳の桃子さん、圧倒的に自由で賑やかなひとり暮らし!
主人公は、75歳でひとり暮らしをしている“桃子さん”。1964年、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、身ひとつで上京してから55年。夫・周造と出会い結婚し主婦となり、2人の子供を育て、これから夫婦水入らずの平穏な日々を過ごそうと思った矢先、突然夫に先立たれ途方に暮れていた。
しかし、ひとり家でお茶をすすり、図書館で借りた本を読みあさるうちに、46億年の歴史に関するノートを作り、万事に問いを立ててその意味を探求するようになる。すると、桃子さんの“心の声”が、ジャズセッションに乗せて内から外に湧き上がってきた!桃子さんの孤独な生活は、現在と過去を行き来し、いつのまにか賑やかな毎日に変わっていく――
作品タイトル:映画『おらおらでひとりいぐも』
出演:田中裕子 蒼井優
脚本・監督:沖田修一
原作:若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社刊)
製作:『おらおらでひとりいぐも』製作委員会
配給:アスミック・エース
公式HP:http://oraora-movie.asmik-ace.co.jp/
コピーライト:(C) 2020 「おらおらでひとりいぐも」製作委員会