12人の映像監督による12本の短編映画製作プロジェクト」『DIVOC-12』(読み方:ディボック-トゥエルブ)の発表会見が行われ、『新聞記者』(19年)で第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめとした主要3部門を受賞した藤井道人監督、日本のみならず世界で社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』(18年)の上田慎一郎監督、第41回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞を受賞した『幼な子われらに生まれ』(17年)の三島有紀子監督の参加が発表された。
ソニーグループでは今年4月、新型コロナウイルス感染症により世界各国で影響を受けている人々を支援するために「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」を設立した。この基金を活用した支援活動の一環としてソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが『DIVOC-12』プロジェクトを発足させた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めるように支援していく。
本プロジェクトでは、クリエイターと俳優の一部を公募し、新しい表現の機会をサポートするほか、各作品の制作過程において感染予防を徹底し、コロナ禍の社会における新しい映像制作方法に挑戦していく。収益の一部は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国内の芸術・文化活動のサポートのため、日本芸術文化振興基金へ寄付されるという。
映画製作プロジェクト『DIVOC-12』発表会見 概要
日時:10月19日(月)
登壇者(※敬称略):上田慎一郎監督、三島有紀子監督 ※藤井道人監督はコメント動画にて参加
齋藤 巖(株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ディストリビューション ゼネラルマネージャー)
シッピー 光(ソニー株式会社 サステナビリティ推進部 CSRグループ ゼネラルマネジャー)
菊地 洋平(株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ディストリビューション ローカルプロダクション&アクイジション シニアマネージャー/プロデューサー)
場所:Ginza Sony Park B4
《監督挨拶&質疑応答》
■監督挨拶
上田監督:今日はお集まり頂きまして、また配信を見て頂いている方もありがとうございます!今回3チームで、合計12監督で作るということで、本当にこんなたくさんの監督達と関わり合いながら、1本の映画を作るということは中々ないので、とてもワクワクしております。よろしくお願い致します。
三島監督:私は今年の2月末に夏帆さんと妻夫木さんが出演の映画『Red』というのを公開したんですが、その後すぐにコロナ禍に入ってしまったので、こうしてリモートや直にお会い出来てとても嬉しく思います。先ほど上田監督がおっしゃったように、上田監督、藤井監督と一緒に映画を作れるということも珍しいことですし、後輩たちと一緒に今もワイワイとしながら映画の話をしています。そういう風に映画を作れるのが、とても楽しいなと思っています。今日はよろしくお願いします。
■今回のプロジェクトオファーがあった時の感想
上田監督:今回の企画を聞いた時は、もちろんまだコロナ禍で今よりもっと気を付けなきゃいけない時だったんですが、“このコロナ禍で制作をするべきじゃない”、“エンターテインメントをやるべきでない”という声、“そういう時だからこそやるべきだ”という色んな意見があると思います。自分は白か黒がどっちかではないだろうと思ってたんですね。出来ることを考えてやるとシンプルに思っていたので、まさにそういった企画でしたし、“これはやりたい!ぜひ!”と思いました。言い方が難しいですが、コロナ禍がなかったら絶対に実現しなかったプロジェクトだと思います。私自身、どのような映画を作るのかということはもちろん大事ですが、どういう体勢で映画を作るのかということをすごい大事にしてます。前作の『スペシャルアクターズ』という映画は、物語がないところからキャストを選んで、キャストとワークショップをした後に物語や企画を作りました。さらにその前の作品では3人の監督共同で長編を監督するということもやりました。今回は12人の監督で、また限られたスタッフの中でさらに10分という色んな枷があるということが逆に新しいものを作ることになるんだろうなと思って受けました。
三島監督:上田監督とも一緒だった、ドイツのフランクフルトの「ニッポン・コネクション」映画祭に映画『Red』を選んで頂いて、女性監督達とトークセッションをしました。
その中で監督達みんなが「これから映画って撮れるんだろうか」「これから私達どうなっていくんだろうか」という話を心細い感じで話していました。その時のみんなの姿を見て、「きっと今までになかった新しいシステムや、やり方が生まれてくるよ。今まで撮りにくかった若手監督、女性監督が撮れるチャンスがきっと出てくるって私はそう思ってる」と話していた時に、この話を頂いたんです。なので私がこの企画に参加した理由は明瞭で、一つにはみんながどよんとしている時に、”自分達の作りたいものを作っていいですよ!”ということ。後は自分が女性というのもあるので、”性別、年齢、国籍、関係ありません!”という考え方。もう一つは、自分が主に東映京都撮影所の演出部で勉強させて頂きましたけど、演出部で勉強している皆さんに、いつか映画を撮れるチャンスを持ってもらいたいなという思いがあったので、その一歩として出来ることでもあるので、ぜひやらせて頂きたいという風にお返事したのを覚えています。
■今回のプロジェクトに対する意気込みについて
上田監督:今回は3チームじゃないですか。チーム内ではやり取りをたくさん重ねると思うんですが、やはり他のチームはどうかなと気にもなるじゃないですか、いい意味で。他のチームはどういったものを作るのかなって楽しみでもあり、ちょっとしたライバル心と言うか、そういったことで相乗効果が出てくるんだろうなっていうのは思いましたし、個人的には『カメラを止めるな!』を作るまで、短編映画を8本ぐらい連続でやったんです。
今回は久しぶりの短編映画。長編ではなく、短編映画でしか出来ないやり方があるので、挑戦があるものを作りたいなと思ってますね。
三島監督:やはり後輩たちが監督を出来るということが一つ大きいのと、後は色々なシーンの形があると思いますが、作りたいものがある作り手を支援するということと、その作品を一緒に作るスタッフ達、キャスト達へも支援するという形が自然な形で今回は実現できるということを楽しんで映画作りをしていきたいです。後はコロナ期に映画を作る人たちは必ず色んなことを考えたはずですよね。作れない時間があったからこそ何を発信していくのかというのことは、きっと深く考えると思うので、その蓋を一気に開けて頂いて、自分自身も、後輩達も、一緒に作っていく仲間達も、みんなで一緒に発信していきたいというのが今までと違う一番の意気込みですね。
■今回それぞれが扱うテーマについて
上田監督:僕のチームは“感触”というテーマです。これは自分から提案させて頂きました。テーマを何にしようかって色々と考えましたが、コロナ禍ってすごい“感触”が失われてた時期だったと思ったんですよ。
人に触れるっていうこともそうですし、音楽とか演劇とか映画館で映画を見るという生でエンターテイメントを味わうという“感触”も失われてた時期でした。
それをテーマに、“感触”とは何なのか”“感触が失われた時期は一体どういうことだったのか”というのを探せたらいいなと思っています。あまり限定的なテーマにするといけないなと思っていて、一言に感触と言っても、チーム4人の監督の感触が違うという意味もありますし、コロナ関係なく時代的にデジタル化が進んでいて、本が電子書籍になったり、音楽はCDではなくサブスクで聞いたりしていますよね。
モノの感触がどんどん無くなっている時代だと思うので、そのような意味でもチーム4人それぞれが“感触”を見つけて、それを探す映画になればいいんじゃないかなと思いました。
三島監督:私は“共有”って言う言葉を提案させて頂いて、“それでいきましょう!”と私の方も言って頂いたという形なんですけれども、やっぱり自分がコロナ禍で色々考えている中で、こんなに世界中が同じことに苦しんだり、悲しんだり、喜んだりって共有したことって中々なかったなと思って。ある種、救いがないように思えるこの時期を世界中が共有して、その後に、じゃあ私たちは何を共有していくのか。共有していきたいのか。っていうことを色んな方達と一緒にディスカッションしながら作れたらいいなって思ったことがキーワードにした理由の1つです。
あとは、私も自由であってほしいと思っているので、表現者の皆さんには。なので、応募してくださる方皆さんがそれぞれに、“自分が面白い!”“今これを発信したい!”って思うことをきっと出して頂けたら、必ずその共有という要素は入ってくるのではないかと思って、共有がいいなと思いました。
■苦境に立たされている映画業界のために何をしていきたいか
三島監督:コロナ禍で最初にやったことが今まで自分の映画をかけてくださった映画館にメールとマスクを送ることだったんですね。自分で自分に気付いたというか、映画を上映して頂ける映画館が自分にとって本当に大事だったんだなっていうことがものすごく大きく感じました。それが1番最初だったっていうのが私もびっくりしてるんですけど、その後にその自分の映画が上映してない映画館でも何か縁があったり関係があったりしたら、手紙を書かせて頂いたり、個人でやっているので少ない量ですが、マスクを送らせて頂いたりして、やはり自分自身が映画館に救ってもらってきたというのが大きくありますので。そういう意味でも映画館というものの良さをきちんと皆さんに伝えていくことが私としてやれることの1つかなと思いました。
あとはさっきの話でもみんな落ち込んでたという話もそうなんですけど、これから映画って撮れるのかな。いつか「よーいスタート!」とかけられるのかな。クランクインの日って迎えられるのかな。って、みんなが思ってた時期に、いや想像しようよと。撮影初日は大概何かトラブルが起こりますよね。だけど、みんなで乗り越えて、その日を迎えて、「よーいスタート」って1カット目が回って、その日のスケジュールを終えて帰ってくる。その帰り道に、クランクインを迎えられたねっていう、その目線の話をしようよというようなことをとにかく”想像しよう”って言っていたので、その”想像しよう”っていうことがまあその自分がやった2つ目のことだったんですね。
3つ目が、役者さんたちに自分の生活を撮ったドキュメンタリーでもいいので自分が今どういう気持ちでどういう風になっているのかをiPhoneでも何でもいいから撮ってくれと言って、そういう話をしながらインタビューをしたり、自分たちを見つめていくということに向き合ったり。
最後に上田監督がおっしゃってたように、やはり自分自身も何を発信していくのか思った時に、今映画界にとって沢山の方に喜んでいただける映画がとても大事だと思うんですけど、それぞれがピュアな気持ちでピュアに映画を作っていきたいなっていう風に思いました。
■若手監督への支援の意義について
上田監督:僕もまだまだ若手ですし、まだ作るチャンスがない時ってやはり人間怖いので何もないところから自分で作り出すのって相当なパワーがいるし、なかなか出来なかったりするんですけど、何かそのチャンスや機会を与えていただけると体と頭がガっと動き出して、「やるぞっ」ていう時があるので、今回のような機会を作っていただきたいなと思います。機会を作ることでどんどん作品が生まれていくと思うので。
三島監督:私は東映撮影所で勉強をさせて頂きましたが、映画の現場には演出部と言われている助監督たちがたくさんいます。みんな映画を作りたくて現場に入るわけです。私自身も撮りたいのに撮れない時を経て、やっと企画が通って撮らせていただけてから、こういうの撮らない?と言っていただけるきっかけもいただいて、こうして今映画を撮れているという道筋がありました。そういう道を今悶々としていて作りたいものがある人たちに映画を撮れると思っていただけると言うのがすごく大きいかなと思っています。
■公募監督や俳優のオーディションに関して
上田監督:自分もまだまだ若手なので偉そうなことは言えないですが、劇場長編作の『カメラを止めるな』が公開する前まではすごい無知で無名でした。でもそんな自分がいろいろ知らなかったからこそ出来たこともあっても大人になるにつれ色々なことを知ったことによって出来なくなってくることも多かったりすると思います。その時僕が言っていたのは「無知で無名で無謀だと無敵になれる」って言ってたんです。まだ色々知らないからこそ今までのやり方に捉われない方法みたいなものができると思うので、そういった姿を見せて欲しいなと思いますし自分もそれを見て勉強させてもらいたいなって思っています。
三島監督:作る機会が本当に減ってしまった、私自身も実は春先に撮影する予定だったものが一気に中止になったりしたものがあったものですから、“作りたい”、“演じたい”という渇望を素直に出してもらって、それをみんなで受け止めて一緒に発信していければいいなっていうのが大きいです。
《藤井道人監督 コメント全文(動画)》
本日は会場に行くことができず大変申し訳ございません。今回『DIVOC-12』の企画に呼んで頂きまして本当に有難うございます。上田監督、三島監督とともに、そして若い監督達とともに12本のショートフィルムを作れるということで非常にワクワクしております。
(Q.意気込みは?)
みんな、すごい企画考えてくるんだろうなと思ってちょっとドキドキしてます。焦ってます!
(Q.藤井監督のテーマ“成長への気づき”について)
自分が解釈したのは“道のり”だったのかなって。自分たちでカメラを買って、最初に10万円とかで自主映画を撮ってたんですけど、その中で確実に“成長”というものはあるわけで、あの辛い時期があったからこそ、自分が若い作家たちにしてあげられることは自分にしかできないことだと思います。今回やる自分の作品もそういうものを大事にしてできたらなと思っています。ただ、非常に難しいテーマだとも思ってます。
(Q.監督や俳優のオーディションについて)
楽しみですね!どんな監督さんたちが来るかっていうのは全く分からない状態なので、“この人、本当に映画しかないんだな”っていう人をちゃんとフックアップできるように選びたいなと思いました。(新型コロナウイルスの影響で)現場が少なくなってやっぱり表現する場が少なくなって、すごくフラストレーションが溜まってる若い俳優さん達ってたくさんいると思うんです。そういう方々をちゃんと見てあげられるような監督でいたいなと思います。
コロナを経て、やっぱり様々なことを作家(作り手)たちも考えたと思いますし、僕たちが未来に向けてどういう作品を届けられるのかということを、自分自身もしっかり考えながら良い作品作っていきたいと思います。何卒、応援の程よろしくお願いします。
会見の最後に上田監督は、「自分はコロナ禍で動けない時にリモートで映画を作りましたが、作ることで自分自身がすごく救われました。自分自身はエンターテインメントがなかったら本当に死んでいたんじゃないかというぐらいエンターテイメントに救われて生きてきた人間なので、今回の映画を見て少しでも気分が明るくなればいいなと思いますし、映画を作りたいとか、俺も作ってやろうと思う人が現れたら良いなと思います。そんな映画を作ろうと思います。」と力強くコメントした。
また、三島監督も「(世の中の)空気の流れもありますし、どんな自由が奪われていくのかも分かりませんし、本当にこれからどういう時代が来るか分からないなとよく思うんです。日本、世界中で今まで映画を作れなかった時代もあったわけで、その中で先人の映画監督たち、発信者たちがやってきたように風穴を開けて我々も発信していければいいのかなと思いますし、その一つがこのプロジェクトになってくれればと思います。今回我々が映画を作るわけですが、我々が作ったものが皆さんに楽しんで頂けて、次もその次もずっとこのプロジェクトが続いていき、たくさんの映画を作りたい人たちにチャンスがくるようなプロジェクトに育っていってもらえたらいいなと思っています。頑張ります、宜しくお願いいたします。」とこのプロジェクトにかける想いをコメントした。
プロジェクト名について
「DIVOC」はCOVIDを反対に並べた言葉です。「12人のクリエイターとともに、COVID-19をひっくり返したい。」という想いが込められています。また、DIVOCのそれぞれの文字が表す下記の意味を軸にプロジェクトを進めていきます。
Diversity(多様性)/Innovation(革新)/Value(新しい価値)/Originality(個性)/Creativity(創造)
12人のクリエイターたちは3チームに分かれ、藤井監督チームは“成長への気づき”、上田監督チームは“感触”そして三島監督チームは“共有”をテーマに作品を制作していきます。12人の監督のうち、3名の監督を11月19日(木)23時59分まで公式ホームページ(https://www.divoc-12.jp)にて募集します。今後、俳優の募集も同ホームページにて開始予定です。創造力で“世界を沸かす”『DIVOC-12』製作チームの熱い想い、Withコロナの時代での日本が誇るクリエイターたちの挑戦に、是非ご期待ください!
作品タイトル:『DIVOC-12』
監督:藤井道人 上田慎一郎 三島有紀子 他順次解禁
制作統括:and pictures
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.divoc-12.jp
公式Twitter:@divoc_12
公式Instagram:@divoc_12
コピーライト:(C) 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
2021年 全国ロードショー