【レポート】映画『滑走路』埼玉県特別試写会で大庭功睦監督×片山慎三監督(『岬の兄妹』)トークイベント開催!

滑走路

夭折の歌人・萩原慎一郎の遺作となった歌集を原作とした映画『滑走路』が11月20日(金)より全国公開となる。

この度、本作の埼玉県特別試写会が行われ、上映後のトークイベントに本作の大庭功睦監督と『岬の兄妹』の片山慎三監督が登壇した。

 

目次

映画『滑走路』埼玉県特別試写会 概要

日時:11月8日(日)※上映後
登壇者:大庭功睦監督、片山慎三監督
場所:SKIPシティ映像ホール

大庭監督と片山監督は、ともにSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018の国内コンペティション長編部門に参加し競い合った仲であり、また長年助監督として経験を築いてきた監督同士であるなど共通点が多く、冒頭から話が盛り上がる2人。

イベント前の試写会で映画を観ていた片山監督は「原作は偶然知っていて読んでいたんです。歌集からよくここまで完成度の高いオリジナルストーリーを作り上げたなぁ、と感動しました」と熱気冷めやらぬ感想を述べた。続けて「群像劇だと思って映画を観ていたのに、段々と3人の人生が交錯してきて、最後には全部が繋がるという構成の妙にヤられた。そしてところどころホラーっぽかったり、サスペンスっぽかったりちょっと変わった演出が加わっていて面白かったですね」と大庭監督ならではのポイントを指摘してニヤリ。

それに対し大庭監督は、「いつか撮ってみたいという願望があるからか、油断するとホラー映画になってしまう傾向があるんですよね(笑)。時間が交錯していく作りについては、原作歌集の中に過去を思い返す歌と、現在の歌、さらに未来への希望を託した歌が混在していたのが着想となりました」と明かす。

滑走路

大庭功睦監督

また片山監督は大庭監督らしい演出があったシーンに、浅香航大扮する若手官僚の鷹野の職場を挙げ「ここは難しい専門用語の台詞が飛び交っていて、『シン・ゴジラ』をやられていた大庭さんっぽいのかなと(笑)。あと、予算が潤沢にある映画ではないのに、セットの作り込みも与えられたものをうまく利用し、しっかり設計されているのは助監督経験の長い監督ならでは」と称賛。

大庭監督は「片山さんも僕も助監督出身。もうお互い10年以上やってるよね。助監督経験が長いと、現場でどこにお金がかかるのか、そしてお金をかけられない場合の誤魔化し方をよく知っているんです。SKIPシティや配給の KADOKAWAもロケ場所として、うまく雰囲気を変えながら使いました。」と語る。

「以前に、『予算の少ない映画の方がより芸術映画になる』という鈴木清順監督の言葉を聞いたことがあります。お金がなければそれをカバーするために、努力や創造力が働いて、その苦労がアートになっていくんです。その言葉を頼りに映画製作を行っている節もある」という大庭監督の考えに、片山監督も深くうなずいた。

片山慎三監督

キャスティングについて話が及ぶと、「前作『キュクロプス』の池内万作さんや杉山ひこひこさん、その前の『ノラ』で主演をしていた染谷将太さんも出演されていましたね」と片山監督大庭監督は「池内さんやひこひこさん、染谷くんなど、以前に仕事をしたことのある方々が現場にいると安心します。やはり監督の現場での仕事は多い。いろいろな部署を見て声をかけなくてはいけないので、すでに信頼がある役者さんにお願いできると僕もとても楽なんです。さらに彼らは自分で役を解釈して演じてくれる優れた役者さんたちでもあるので、現場でもあまり指示は出さずに任せていました」と答えた。

さらに片山監督は「皆さん素晴らしい演技をされていましたが、特に坂井真紀さんの演技には引き込まれました」と話し始めると、大庭監督も「坂井さんはすごい女優さんでした」とうなずく。「以前、助監督時代にご一緒させていただいたこともあり、坂井さんは今回僕からご指名させていただきました。自分の出演していないパートも含めて、自分の役の役割と在り方をよく理解してくれていました。映画が伝えたいメッセージの核心部分をつくセリフがあったのですが、テストもやらず本番一発で決めてくださり、さすがだなと思いました」と撮影を振り返った。

助監督という多忙な仕事の傍ら、これまで自主映画の制作にも精力的に取り組んできた2人。自主映画と商業映画の違いについてMCから聞かれると、大庭監督は迷わず「違うのは予算だけ」ときっぱり答える。「もちろん予算があれば機材の量も増えるし、現場がスムーズになってやりやすくもなる。でもみんなをまとめる監督の仕事としては、自主でも商業でも変わりません」という言葉に、片山監督も賛同した。

またSKIPシティ国際Dシネマ2018で2人がノミネートされたことについを振り返ったトークも展開。片山監督は「軽い気持ちで応募したのですが、おかげ様でいろんな方々に映画を観て頂けて、そこから仕事につながっていきました。とても有難い機会をいただいたと思っています。新人監督に対して一番良い支援をしている映画祭ですよね」と語り、大庭監督は「現場に人を送り出す映画祭のイメージ。中野量太さんや、白石和彌さん、上田慎一郎監督もみんなここで成果を得て、商業映画でも評価されている。『キュクロプス』を出したのは、映画祭の働きが好きだったから、ここで認められたい一心でした」と明かした。

当日は『滑走路』のイベントではあったが、片山監督の新作『そこにいた男』も本作の1週前の11月13日(金)より公開となる。既に映画を観ていた大庭監督は「壇上で褒め合うのは気持ち悪いかもしれないけど(笑)、お世辞抜きで本当に面白かったです。実際に起きた事件をモチーフにオリジナルストーリーを作られているんですが、男と女のもつれの中にある一瞬の美しさをうまく切り取っていたように思いました。片山さんの映画で⁉と自分でもびっくりしましたが泣きました」と赤裸々に感想を述べ、片山監督も恐縮しきりの様子だった。

イベントの最後には片山監督が「『滑走路』本当にいい映画なのでぜひ広めてください。僕の映画の話もでたけど観なくていいですから、ぜひ『滑走路』を!」と呼びかけると、大庭監督は「片山監督の『そこにいた男』。充実した映画体験となること請け負いなので、ぜひ見てください。その後にはぜひ『滑走路』もね」とお互いの映画をアピールし合っていた。

夭折の歌人が遺した魂の叫びを映画化。
現代をもがき生きる人々の姿と希望を描いた人生賛歌

あふれる才能を遺し、突然この世を去った歌人・萩原慎一郎による「歌集 滑走路」。あとがきを入稿した翌月、32歳の若さで命を絶ち、デビュー作にして遺作となった一冊の歌集が映画化された。いじめや非正規雇用を経験しながら、それでも生きる希望を託した歌は、苦悩を抱える人へのエールとして多くの共感を集め話題に。新聞やTVなどでも次々と取り上げられ、歌集にしては異例のベストセラーを記録した。

原作歌集をモチーフにオリジナルストーリーとして紡がれる本作。数々の話題作に出演する水川あさみが扮する翠(みどり)、実力派俳優として活躍目覚ましい浅香航大扮する若手官僚・鷹野(たかの)、そして新人・寄川歌太が扮する中学2年生の学級委員長。それぞれ“心の叫び”を抱えて生きる3人の人生が、やがて交錯していく―。非正規、いじめ、過労、キャリア、自死、家族― 現代を生きる若い世代が抱える不安や葛藤、それでもなお希望を求めてもがき生きる姿を鮮烈に描き出す。

ストーリー
厚生労働省で働く若手官僚の鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ追及を受けた鷹野は、そのリストの中から自分と同じ25歳で自死した青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始めるが──。

作品タイトル:『滑走路』
出演:水川あさみ 浅香航大 寄川歌太
木下渓 池田優斗 吉村界人 染谷将太
水橋研二 坂井真紀
監督:大庭功睦
脚本:桑村さや香
原作:萩原慎一郎「歌集 滑走路」(角川文化振興財団/KADOKAWA 刊)
主題歌:Sano ibuki「紙飛行機」(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
撮影:川野由加里
照明:中村晋平
録音:西正義
装飾:小林宙央
音楽:永島友美子
編集:松山圭介
VFX:田中貴志
助監督:桜井智弘
制作担当:赤間俊秀
製作:「滑走路」製作委員会、埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ
制作プロダクション:角川大映スタジオ、デジタルSKIPステーション
配給:KADOKAWA
PG12

公式サイト:kassouro-movie.jp
公式Twitter:@kassouro_movie
コピーライト:(C)2020「滑走路」製作委員会

11月20日(金)、全国ロードショー

 

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