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ドキュメンタリー映画『レンブラントは誰の手に』に学ぶ絵画修復の仕事とは…本編映像解禁!専門家の解説も ―2/26公開

レンブラントは誰の手に

『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(14)で美術館の舞台裏に深く切り込み、アート好きだけではなく多くの映画ファンの心をつかんだオランダのドキュメンタリー作家 ウケ・ホーヘンダイク。彼女の最新作『レンブラントは誰の手に』が2月26日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開される。

バロック絵画を代表し、没後350年以上経った今でも絶大なる人気を誇るオランダの巨匠画家・レンブラント。作家が作品を生み出せば、画商はそれを見出し、コレクターは買い求め、美術館は競い合う。「光と影の魔術師」の異名を持つ彼が残した作品の美と魅力はもちろん、彼の作品に魅了される人々の情熱とそこに生まれる物語をドラマティックに映し出していく。

この度解禁されたのは、絵画修復家のマーティン・ベイルが画商ヤン・シックス11世に依頼された絵画を修復する様子を捉えた本編映像。

2014年にドイツでオークションに出品されていた作者不明の作品「Let the Little Children Come to Me」。シックスはその大きな作品に若かりしレンブラント本人の顔が描かれていることを発見し、レンブラントによる作品だと確信して落札。映像の冒頭では、ヤン・シックス11世がその絵画と向き合い、レンブラントによる作品であると考える理由を説いている。真相を確かめるため、未熟な画家によって上塗りされたと思われる部分の修復を、絵画修復家のマーティン・ベイルに依頼した。

今回はそんな修復の仕事について、美術家で美術工房アトリエ・ニンフェア主宰の松澤周子氏の解説とともに紹介する。松澤氏は多摩美術大学を卒業後、イタリアのフィレンツェで修復の工房を設立、現在は日本で絵画教室や西洋美術史の講師として活躍、展覧会も開いている。

そもそも絵画の修復とはどのような仕事なのか。松澤氏によると「修復とは、劣化した部分、破損した部分、傷んだ部分を修理、修正、補修してオリジナルの絵を未来に繋げること」だという。様々な工程があるが、例えば絵の表面を保護する役割を持つニスは、時間の経過とともに汚れがつき、劣化の為ひび割れが出来ていく。そのため50年から100年に一度は溶剤でクリーニングして新しい保護膜のニスを塗る必要があるそうだ。

映像の中で行われているのは、レンブラントによる元の絵を確認するために上塗りされた部分を剥がすという作業。絵の表面を少しずつ削っていくという地味な作業ではあるが、見ているこちらまで息を止めてしまいそうなほど緊張感がある。綿に染み込ませている瓶に入った液体は「ペトロール」と呼ばれる石油系の溶剤だ。乾いた絵の表面に一時的に艶を出して絵をよく見るためや、古いニスの層を除去する強い溶剤が絵の具層にダメージを与えないよう拭き取るために使用する。

ベイルは作業期間を4年と見積もっているが、修復にかかる期間は絵の大きさや破損の度合い、修復の難度やどこまでの修復を行うかによって変わるため、実際に見て調査をしないと分からない。巨匠画家による作品の場合、資本価値が高く、間違いがあってはならないため、設備の整った研究所で紫外線や赤外線、X線による調査や顔料の検査といった自然科学的方法による多くの調査をするのにこれほどの時間がかかるのだという。

このように大掛かりな調査を伴う修復となれば、描き手のわかっていない絵を削ることに対してベイルが「不安だ」と話すのは無理もない。地道で根気のいる作業を、カメラは時間をかけてじっくり捉えていく。絵画に隠された真相を探るため、巨匠画家の作品を未来に繋げるために奮闘する修復家の仕事を間近で確認できる、貴重な映像だ。

高価な美術作品と密接に関わる画商や修復家の仕事を身近に感じられる映像も見どころの『レンブラントは誰の手に』は、2月26日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

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