香港で社会現象となったオムニバス映画『十年』を元に、日本、タイ、台湾それぞれで、自国の現在・未来への多様な問題意識を出発点に、各国約5名の新鋭映像作家が独自の目線で10年後の社会、人間を描く国際共同プロジェクト「十年 Ten Years International Project 」の日本版、『十年 Ten Years Japan』が、2018年秋テアトル新宿ほかにて全国順次公開する事が決定した。
昨年の釜山国際映画祭で製作発表をし世界中のメディアから注目され、アピチャッポン・ウィーラセタクン(『ブンミおじさんの森』)が監督として参加したタイ版は、2018年5月8日ー19日(フランス時間)に開催される第71回カンヌ国際映画祭特別招待作品として選出されるなど、世界から注目されている本プロジェクト。
日本版のエグゼクティブプロデューサーは、最新作『万引き家族』(6月8日公開)が第71回カンヌ国際映画祭に自身5度目のコンペティション部門への出品が決定した是枝裕和監督。若手監督の育成を日頃より実践している是枝監督だが、”オムニバス映画”の総合監修を務めるのは自身初の試みとなる。
是枝監督の最終ジャッジのもと、脚本(プロット)のクオリティ、オリジナリティ、将来性を重視して5人の日本の新鋭監督たちが選ばれ、2017年10月~12月に各作品の撮影が行われた。
家族の個人データをデジタル遺産として受け継いだ家族の物語『DATA』(津野愛監督)の主演は、2018年4月期ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」の主演をはじめ、2019年の「いだてん~東京オリムピック噺~」でNHK大河ドラマ初出演と、今一番勢いのある若手実力派女優・杉咲花。産まれてすぐに亡くなった母の面影を求め、デジタル遺産によって明らかになる母の知られざる一面をたどる女子高生を演じる。
AI知能で道徳を刷り込まれた特殊学区の子供達を描く『いたずら同盟』(木下雄介監督) の主演は、圧倒的な存在感と確かな演技力で国内外で活躍し続け、本年も主演作『かぞくいろ』(吉田康弘監督/2018年公開)のほか、『パンク侍、斬られて候』(石井岳龍監督/6.30公開)、『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督/2018年公開)など話題作への出演も絶えない、日本映画界を代表する俳優、國村隼。
『美しい国』(石川慶監督)で主演を務めるのは、『海を駆ける』(深田晃司監督/5.26公開)など話題作への出演が続く若手実力派俳優の太賀。自衛隊徴兵制が義務化された日本で、徴兵制告知キャンペーンを請け負った広告代理店で働く若者を好演している。
75歳以上の高齢者に安楽死を奨励するという未来版“姥捨て”を描く『PLAN75』(早川千絵監督)の主演には、老人に死のプランを勧誘する公務員役として、『OVER DRIVE』(羽住英一郎監督/2018年公開) にも出演する、川口覚。
大気汚染によって地下への移住を強いられた母娘の姿を描く『その空気は見えない』(藤村明世監督)の主演には『半世界』(阪本順治監督/2019年公開)への出演も控える池脇千鶴。
以下、各キャストからのコメントも到着。
杉咲花さん コメント
記憶のなかにあるもの、自分だけが目にしたものは、その他のどんなものにも変えがたいかけがえのない宝物で、たったひとつの秘密で。
それを誰かに教えてみたり、逆に知ったり、信じたりしながら生きてゆく私たちの命は、とても尊いものなのだな、と改めてこの「DATA」という作品に思わせていただきました。
確かに存在したはずの小さな光にいつまでも目を向け続ける、舞花のピュアでまっすぐな人柄にとても魅力を感じました。
優しい空気の流れる津野組はとても居心地が良く、とても幸せな時間でした。
國村隼さん コメント
10年後の母国を想う…。現在、アジアそれぞれの国で起こっている様々な問題や出来事、自然の事象。
それらを踏まえて激動する東アジア各国の10年後を見据え、これを映画で描きだしていく。このアイデアにとても興味を持ち、共感も出来ました。
またその作品群の先鞭をつけたのが、僕のキャリアにとても縁の深い香港だという事も参加への大きな後押しとなりました。
この企画に関わった国々がお互いに共感したり影響しあったりして、そこからまた何かが生まれるだろうと、それもまた楽しみにしています。
太賀さん コメント
「美しい国」の脚本を読んだ時、途方もなく突き放された気持ちになりました。
それは主人公と同じような、自分自身の無自覚さへの失望でした。出演を即決しました。
近い将来がどうなってしまうのか、映画でさえ必要とされているのかもわかりませんが、変わりゆく日本でこうした作品がいま産み落とされる事にとても意義を感じます。石川組に参加出来た事を誇りに思います。
川口覚さん コメント
人間は、自分以外の人の本当の心の中を一生知らずに死んでいくものなのかもしれない。
そんな事を感じながら、今、この時代に生きる者として、10年後というテーマを掲げた映画に俳優として携われた事にとても感謝しています。
早川監督はじめスタッフの皆様と、素敵な共演者の方々と「PLAN75」のテーマを切実に受け取り、撮影に臨みました。
ぜひ沢山の方にご覧いただきたいです。
池脇千鶴さん コメント
どんなプロジェクトであろうと、本が面白ければ参加したいと常々思っております。
「その空気は見えない」も、とても短いお話ゆえに、想像をかきたてられる本だったので、面白そう、やってみようと思いました。
撮影期間は短かったですが、もっとじっくりやりたかったと思わせてくれる現場でした。
監督のことも、スタッフのみなさんのことももっと知りたかった。
その儚さも短編の良いところでしょうかね。わくわくする現場をありがとうございました。
「十年 Ten Years International Project 」とは
BBCをはじめ海外の主要メディア、日本でも各新聞&テレビに取り上げられ、香港で記録的大ヒット。10年後の香港を舞台に、5人の若手新鋭監督達が近未来を描き、社会現象となった短編オムニバス作品『十年』(2015年製作。日本公開2017年)。
インディペンデント作品であるにも関わらず単館系で大ヒットを記録、2016年香港電影金像奨(Hong Kong Film Awards)で最優秀作品賞を受賞。中国では国営メディアに批判され上映禁止となった問題作を元に、日本、タイ、台湾それぞれで、自国の現在・未来への多様な問題意識を出発点に、それぞれ約5名の新鋭映像作家が独自の目線で10年後の社会、人間を描く国際共同プロジェクト。アジア地域の社会的意識向上のためのムーブメントとして、また国際社会への相互理解を深めたいというオリジナル版スタッフの熱い想いを受け継いで、2016年、プロジェクトが始動した。
各国で共通するテーマは「物語のテーマは、10年後の自国の未来」「監督は、約5名の新鋭監督を起用すること」という二つ。アピチャッポン・ウィーラセタクン(『ブンミおじさんの森』)が監督として参加したタイ版は、 2018年5月8日ー19日(フランス時間)に開催される第71回カンヌ国際映画祭特別招待作品として選出されるなど、その輪は世界各国に広がりはじめている。
国際映画祭を含む世界での上映をはじめ、日本映画業界に一石を投じる、前代未聞の国際共同プロジェクトである。
ストーリー
『PLAN75』
【キャスト】川口覚、山田キヌヲ、牧口元美 ほか 【監督】早川千絵
高齢化問題を解決するために、75歳以上の高齢者に安楽死を奨励する国の制度『PLAN75』。
公務員の伊丹は、貧しい老人達を相手に“死のプラン”の勧誘にあたっている。
一方、出産を間近に控えた妻・佐紀は認知症の母親を抱え途方に暮れていた。
命の価値を揺るがすシステムの中で葛藤する人々を描く問題作。
『いたずら同盟』
【キャスト】國村隼ほか 【監督】木下雄介
国家戦略IT特区となった、とある田舎町の小学校。そこに通う子供たちは、人工知能システム“プロミス”による効率的な将来予測と画一的な道徳に従いさえすれば苦しむことはない世界が日常となっていた。
ある日、小学校で飼っている老馬へ、殺処分の判断がなされる。いつも反抗的で独りトラブルばかり起こすリョウタだが、クラスメイトのマユとダイスケとともにいたずらを画策する。
『DATA』
【キャスト】杉咲花、田中哲司 ほか 【監督】津野愛
母の生前のデータが入った「デジタル遺産」を手に入れた女子高生の舞花。
データをもとに母の実像を結ぶことに喜びを感じていたが、母の知られざる一面を見つけてしまい・・・。少女の目を通した、記録と記憶を巡る物語。
『その空気は見えない』
【キャスト】池脇千鶴ほか 【監督】藤村明世
大気汚染によって地下への移住を強いられた日本。「地上の世界は危険だ」という母の教えを守り、地上の生活を知らずに地下の街で育った10歳の少女ミズキは、地下での生活に何の疑問も持たずに生活していた。
ある日、ミズキの友人カエデが地下の街から突然姿を消す。ミズキはカエデが残したある物を見つけたことをきっかけに、まだ見ぬ地上の世界に夢を抱くようになる。
『美しい国』
【キャスト】太賀、木野花ほか【監督】石川慶
自衛隊徴兵制が義務化された日本。徴兵制の告知キャンペーンを防衛省から請け負った広告代理店に勤める渡邊は、政府からの要請で若者に親しみやすいポスターデザインに変更する為、元のデザインを担当したベテランデザイナー・天達に一人謝罪しに行くことに。そこで天達のデザインに込められた思いを知ることになる。
作品タイトル:『十年 Ten Years Japan』
公式サイト:http://tenyearsjapan.com/
コピーライト:(C)2018 “Ten Years Japan” FilmPartners
2018年秋、テアトル新宿ほか全国順次公開