30年ぶりにサイゴン(現ホーチミン)へ帰郷した主人公がアイデンティティを探す旅路を圧倒的な映像美で綴った『MONSOON/モンスーン』(2022年1月14日(金)公開)の撮影監督ベンジャミン・クラカンが”挑戦的なテイク”の裏側を語るコメントと、新たな場面写真が解禁された。
変わり果てた街に馴染めず、どこか旅行者のような主人公・キットを演じたのは『クレイジー・リッチ!』(18)で注目を浴び、『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』の主演に抜擢されハリウッドでも活躍中のヘンリー・ゴールディング。イギリス人の父とマレーシア人の母を持つことから、キットの持つ複雑なアイデンティティに強い共感を抱いたという。監督・脚本は、『追憶と、踊りながら』(14)のホン・カウ。カウもまたキット同様に、カンボジアから逃れてベトナムに渡ったのち8歳まで同国で過ごし、”ボート難民”として渡英していた過去を持つ。
キットのアイデンティティをめぐる旅は、現代ベトナムを映し出した魅力的な風景を通してより深められる。サイゴンには、大量のバイクが道路を行き交い、巨大なビルが立ち並ぶ一方、ハノイは、古い町並みを残す。前者では新世代が活躍し、後者では旧世代が昔ながらの暮らしを営んでいるが、年齢的には新世代に属するキットが心安らぐのは後者だ。そこには彼にとって、懐かしい景色がまだ息づいている。故郷にいながらも孤独を感じているキットが、過去の面影を巡る旅の中で見つけた〈自分〉とは―?
本作で撮影監督を務めるベンジャミン・クラカンは、第93回アカデミー賞(R)で作品賞ほか5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した、医大生キャシーの復讐劇を描く映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』で撮影監督を務めた。これまで、第31回サンダンス映画祭ワールド・ドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した『Dark Horse(原題)』や、『ハイエナ』(15)、第72回英国アカデミー賞英国作品賞にノミネートされた『Beast』なども手掛けてきた彼が今回、『MONSOON/モンスーン』へも撮影監督として参加し、ホン・カウ監督と初めてタッグを組んだ。
ベンジャミン・クラカンは撮影当時を「ベトナムは非常に魅力的でした」と振り返る。本作の撮影まで、イギリスでしか撮影現場を経験していなかった彼にとってベトナムでの撮影は初めての試みで「異なる環境を開拓する機会は刺激的なもの」だったという。
ホン・カウ監督が普段用いないような美的なテイクを提案していったクラカン。「プロット先行の脚本ではなく静観的な映画でしたので、挑戦的な撮影に対してオープンだと感じました。押しつけがましさを出さず、登場人物に余地を与えて、登場人物が沈思している瞬間をいかにして捉えるかが重要だと私たちは同意しました。また、ベトナムは非常に濃密な環境ですので、それと対照的な静謐さとスローなテンポで、キットが苦労しながらも周囲と関わる様を表現したいと思いました」と語る。
この度解禁された場面写真も、ベトナムの湿度や風をそのまま肌で感じられるようなショットや、画面を越えて今にも喧騒が聞こえてきそうな人混みの景色などが印象的だ。
また、クラカンは脚本を読んだ時、ホーチミンの個性が際立って感じたと語る。「私は都会的な映画が好きなんです。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の大ファンで、セットがあたかも一つの役のような作品を好みます。」
これはホン・カウ監督にとっても重要な観点となり、ロンビエン橋や統一会堂といったベトナム戦争における重要なランドマークを撮影場所に選んだ。そこで撮影することで、明確にそうしたランドマークに言及することなく、過去と現在を潜在的に表現している。
ベトナムでの旅を経験したことのある人には見慣れた風景も度々登場する本作。“今”のベトナムを映し出す風景とともに、ぜひ各シーンのロケーションにもご注目を。
ストーリー
キット(ヘンリー・ゴールディング)は、両親の遺灰を埋葬すべく、30年ぶりに祖国であるサイゴン(現ホーチミン)に足を踏み入れる。キットは6歳のとき、家族とともにベトナム戦争後の混乱を逃れてイギリスへ渡った、”ボート難民”だ。以来、これが初めての帰郷だった。もはやベトナム語すらままならない彼は、英語が話せる従兄弟のリー(デイビット・トラン)の助けを借りながら、どこか大事な場所を探し始めるが、思うようには進まない。サイゴンは今やすっかり経済成長を遂げ、かつての姿は見る影もなかったからだ。そんな中、ネットで知り合ったアフリカ系アメリカ人のルイス(パーカー・ソーヤーズ)と一夜をともにするキット。ルイスの父親はベトナム戦争に従軍したという過去を持ち、そのことを隠してこの国で暮らしていた。その後、両親の故郷ハノイへ向かったキットは、サイゴンで知り合った学生リンの実家が営む伝統的な蓮茶の工房見学をする。それはキットの知る”古き良きベトナム”の姿にようやく触れられた時間でもあったが、リンにとっては時代遅れなものらしい。サイゴンに戻ったキットは、リーから自分たちの家族の亡命にまつわる”ある真実”を聞かされることになる―。
作品名タイトル:『MONSOON/モンスーン』
出演:ヘンリー・ゴールディング、パーカー・ソーヤーズ、デイビット・トラン、モリー・ハリス
監督・脚本:ホン・カウ『追憶と、踊りながら』
2020/イギリス、香港/85分/5.1ch/カラー/原題『MONSOON』
配給:イオンエンターテイメント
公式サイト:monsoon-movie.com
Twitter:@MONSOON_MOVIE
コピーライト:(c)MONSOON FILM 2018 LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
1/14(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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