イタリアの異端児ピエル・パオロ・パゾリーニの生誕100年記念上映となる『テオレマ 4Kスキャン版』『王女メディア』 の2作品が、3月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開される。
1975年に突如この世を去ったイタリアの異才ピエル・パオロ・パゾリーニ。フェデリコ・フェリーニや、ベルナルド・ベルトルッチをはじめとした数多くの監督たちの脚本を手掛け、61年に『アッカトーネ』で映画監督デビュー。ヴェネチア映画祭で審査員特別賞を受賞し、米アカデミー賞で3部門にノミネートされた『奇跡の丘』で世界的な評価を高め、“生の三部作”と呼ばれた『デカメロン』『カンタベリー物語』『アラビアンナイト』では、ベルリン映画祭銀熊賞、同映画祭金熊賞、そしてカンヌ映画祭審査員大賞をそれぞれ受賞した。詩人や作家としても活躍し、スキャンダラスな話題に事欠かなかったが、その唯一無二の存在は、巨匠から新鋭まで数多の映画作家を魅了し、没後46年を経た今もなお影響を与え続けている。
この度、横尾忠則、坂本龍一、THE COLLECTORSの加藤ひさしのほか、詩人の小池昌代、漫画家・文筆家のヤマザキマリ、画家のヒグチユウコ、音楽家の渋谷慶一郎、映画監督の深田晃司、映画誌・比較文学研究の四方田犬彦ら、パゾリーニに魅了された総勢9名からのコメントが到着した。
コメント(順不同・敬称略)
22年前にテレンス・スタンプに『テオレマ』についてインタビューした事がある。彼にパゾリーニの印象を尋ねると「パゾリーニはクレイジーでは無いが、イタリア人で共産主義者で危険なセックスが好きなホモセクシャルで映画監督でとても複雑な奴だった」と語ってくれた。そして、撮影前のロンドンでの打ち合わせの時に「ブルジョア家族全員を誘惑し、性的な関係を持つ訪問者の役をやって欲しいんだ」と言われたそうだ。そこで彼は「俺にピッタリな役だ」と二つ返事で出演を決めたらしい。テオレマはプロレタリアートからブルジョアジーに向けた下克上だ。この観念的で難解なパゾリーニ映画をテレンス・スタンプの引力が見る者全てをスクリーンに釘付けにさせる。
―加藤ひさし(THE COLLECTORS)
むき出しになった瞬間が、あたかも内臓のように映画のなかから飛び出してくる。
ぞくぞくする。生きていると思う。これが詩だ。これがパゾリーニだ。
―小池昌代(詩人)
10代の終わり頃、新宿のアートシアターという映画館でフェリーニ、ゴダールらの新作と並んで何の事前の知識もなく『テオレマ』『豚小屋』『王女メディア』などのパゾリーニの映画を見て強いショックを受けた。それまで知っていた映画とは異なる何かを観た気がした。映画をこれだけ壊し、拡張することができるのかと驚いた。
―坂本龍一(音楽家)
この国はこんなに優雅に滅びない。
モーツァルトのレクイエムを通奏低音に描かれる終りの始まり。
シルヴァーナ・マンガーノの溜息は音楽だ。
―渋谷慶一郎(音楽家)
ひたすらに魅入ってしまう映像の連続。
そしてテレンス・スタンプの存在感。
生きること。死ぬこと。
素晴らしい作品を大きいスクリーンで観れるチャンスが嬉しい。
久々にこの映画に対峙して新たなる視点を再発見したいです。
―ヒグチユウコ(画家)
自分にとって十代の頃に見たパゾリーニ作品の思い出は難解でも深刻でもない、茶目っ気あふれる遊び心にスクリーンを弾むように闊歩する俳優たちの姿だった。そこには心をワクワクさせる映画の冒険があった。
―深田晃司(映画監督)
無知の安泰を崩し、抉り出される孤独と不安、倫理に潜む狂気と耽美の散文を全身全霊で描く表現者パゾリーニ。
彼による映像作品が上映され、その衝撃を受け止め、彼について熱心に語る人々のいた時代があったことを、あらためてこのふたつの作品を通じて懐古している。
―ヤマザキマリ(漫画家・文筆家)
パゾリーニの映画は“連続”している。
『テオレマ』で描かれたある部分が『豚小屋』にあり、
『豚小屋』のある部分が『王女メディア』の中にもある。
僕自身も『豚小屋』と同じような構成を持った映画を、撮ろうと思っていた。
パゾリーニに先を越された。
―横尾忠則
「わたしはさまざまな情熱を生きたが、それを知る者は少なかった。」詩人、小説家、論争家。つねにスキャンダルの渦中にありながら、性と政治のタブーに挑戦した映画監督。生誕百年。パゾリーニの真の姿がはじめて解明されようとしている。
―四方田犬彦(映画誌・比較文学研究)
また、2日連続でトークイベントの開催が決定。パリゾーニ生誕100年前夜であり公開初日となる3月4日(金)には、俳優の三上博史が登壇。「アナザースカイ」(日本テレビでのテレンス・スタンプとの対談も大きな話題を呼んだ三上が『テオレマ』の魅力について余すことなく語る予定。
そして誕生日となる3月5日(土)には、映画監督、詩人、作家と、あらゆる面からパゾリーニを長年研究し、今年11月に「パゾリーニの永遠」(作品社)を刊行予定の四方田犬彦が登壇し、神秘的なパゾリーニ・ワールドを解説する。
イベント概要
3月4日(金) 生誕前夜祭
【開催日時】3月4日(金)『テオレマ』19:00の回上映前
【劇場】新宿武蔵野館
【登壇者予定】三上博史
【チケット販売】
オンライン販売:3月2日(水) 00:00より販売開始
劇場窓口:3月2日(水)劇場オープン時より販売開始
3月5日(土) 生誕祭
【開催日時】3月5日(土)『王女メディア』14:20の回上映後
【劇場】ヒューマントラストシネマ有楽町
【登壇者予定】四方田犬彦(映画誌・比較文学研究)
【チケット販売】
オンライン販売:3月3日(木) 00:00より販売開始
窓口販売:3月3日(木)劇場オープン時より販売開始
※その他詳細は各劇場サイトにてご確認ください
作品タイトル:『テオレマ 4Kスキャン版』
出演:テレンス・スタンプ、シルヴァーナ・マンガーノ、アンヌ・ヴィアゼムスキー
原案/監督/脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
撮影:ジュゼッペ・ルッツォリーニ
音楽:エンニオ・モリコーネ
1968年/イタリア/99分/カラー/1:1.85 ビスタビジョン/
日本初公開:1970年4月11日/日本語字幕:菊地浩司
配給:ザジフィルムズ
コピーライト:(c) 1985 – Mondo TV S.p.A.
ストーリー
北イタリアの大都市、ミラノ郊外の大邸宅に暮らす裕福な一家の前に、ある日突然見知らぬ美しい青年が現れる。父親は多くの労働者を抱える大工場の持ち主。その夫に寄りそう美しい妻と無邪気な息子と娘、そして女中。何の前触れもなく同居を始めたその青年は、それぞれを魅了し、関係を持つことで、ブルジョワの穏やかな日々をかき乱していく。青年の性的魅力と、神聖な不可解さに挑発され、狂わされた家族たちは、青年が去ると同時に崩壊の道を辿っていく…。
作品タイトル:『王女メディア』
出演:マリア・カラス、ジュゼッペ・ジェンティーレ、マッシモ・ジロッティ
監督/脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ製作:フランコ・ロッセリーニ
撮影:エンニオ・グァルニエリ衣装:ピエロ・トージ
1969年/イタリア=フランス=西ドイツ/111分/カラー/1:1.85 ビスタビジョン/
日本初公開:1970年7月17日/日本語字幕:関口英子
配給:ザジフィルムズ
コピーライト:MEDEA (c) 1969 SND (Groupe M6). All Rights Reserved.
ストーリー
イオルコス国王の遺児イアソンは、父の王位を奪った叔父ペリアスに王位返還を求める。叔父から未開の国コルキスにある〈金の羊皮〉を手に入れることを条件に出され旅に出たイアソンは、コルキス国王の娘メディアの心を射止めて〈金の羊皮〉の奪還に成功。しかし祖国に戻ったイアソンは王位返還の約束を反故にされ、メディアと共に隣国コリントスへ。そこで国王に見込まれたイアソンは、メディアを裏切って国王の娘と婚約してしまう。メディアは復讐を誓い…。
3/4(金)より2作品同時ロードショー!ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか
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