フランスを代表する映画監督フランソワ・トリュフォーの生誕90周年を記念して、6月24日(金)より3週間限定で角川シネマ有楽町にて『生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険』が開催される。
この度、全上映作品のスケジュールが決定し、併せてメインビジュアルが解禁となった。
フランソワ・トリュフォーは1932年パリで生誕。劣悪な家庭環境の中、孤独な少年時代を過ごした彼は度々学校をズル休みして、映画館を逃避の場に。何度も放校された挙句14歳のときに独学を決意。以降も学びの場は常に映画と書物。まさにメインビジュアルに記載された「映画が彼の人生だった。」のコピーの通り、映画を愛し、映画に愛された生涯を送った。
本特集上映は、そんな彼の人生が反映された“冒険”と“多様性”に満ちた映像表現を体感できる絶好の機会となる。上映作品は短編含め全12本。中心となるのはカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した1959年の処女長編『大人は判ってくれない』をはじめ、自己を投影した“アントワーヌ・ドワネル”を主人公とする作品群。『アントワーヌとコレット<二十歳の恋より>』(62・短編)、『夜霧の恋人たち』(68)、『家庭』(70)、『逃げ去る恋』(79)が4Kデジタルリマスター版で本邦初公開となる。
それ以外にも彼の代表作7本を上映。自ら“真の初監督作”と呼ぶ短編『あこがれ』、軽快なタッチの犯罪喜劇『私のように美しい娘』、世界中の映画人を魅了した古典的名作『突然炎のごとく』、イザベル・アジャーニの鬼気迫る演技が話題を呼んだ『アデルの恋の物語』など、どれもが一級の愛の名作ばかりだ。
また公開期間中には、前東京国際映画祭ディレクターの矢田部吉彦氏、アンスティチュ・フランセ日本の坂本安美氏のトークショーも行われる。
上映作品
『大人は判ってくれない』(4Kデジタルリマスター版)
カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、トリュフォーの名を一躍国際的に知らしめた名作にして、「ヌーヴェル・ヴァーグ」映画を代表する一本。
家庭にも学校にも居場所がなく、ついには非行に走って感化院送りになる14歳の少年アントワーヌ・ドワネルを主人公とした半自伝的作品。静止画を用いて解釈を宙吊りにする開放型のエンディングは、その後の映画にさまざまな影響を及ぼした。撮影開始直前に亡くなった、アンドレ・バザンに捧げられている。
1959年/フランス/モノクロ/99分
原題:Les Quatre Cents Coups
コピーライト:(c)1959 LES FILMS DU CARROSSE/ SEDIF
『アントワーヌとコレット<二十歳の恋>より(短編)』(4Kデジタルリマスター版)
「アントワーヌ・ドワネルの冒険」第二弾として作られた短編。思春期を迎えたドワネルの、初恋から失恋へいたる悲喜こもごもが描かれる。
監督として石原慎太郎やアンジェイ・ワイダも参加した(人選にはトリュフォーの意見が反映されている)全五話からなるオムニバス映画『二十歳の恋』(62)の一挿話として製作された。レコード製造会社に勤務し自活している17歳のドワネルが、古典音楽のコンサート会場で女子学生コレットに一目ぼれするも、彼女からは恋愛対象と見なされない悲喜劇。
1962年/フランス/モノクロ/30分/
原題:Antoine et Colette<L’Amour à vingt ans>
コピーライト:(c)1962 LES FILMS DU CARROSSE
『夜霧の恋人たち』(4Kデジタルリマスター版)
「ドワネルの冒険」第三弾にして、同連作初のカラー映画。語り口がより軽やかになり、笑いの要素も強まって映画作家トリュフォーの成熟を感じさせる。
20代前半になったドワネルは、兵役を終えてさまざまな職に就くが、次々にクビになってどれも長続きしない。他方で彼は恋人クリスチーヌとの愛を育んでいるのだが、雇用主の魅力的な細君にフラフラとよろめいてしまったり、危なっかしい。前二作以上に楽天性と喜劇色が強まり、演出にも余裕と円熟味が感じられる一篇。
1968年/フランス/カラー/91分
原題:Baisers Volés
コピーライト:(c)1968 LES FILMS DU CARROSSE/ CONTACT EDITIONS / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIES
『家庭』(4Kデジタルリマスター版)
「ドワネルの冒険」第四弾。結婚し、長男をもうけたドワネルだが、一家の大国柱となるにはほど遠い未熟ぶりで……「快活で可笑しいが、その背景に哀しみと思慕も感じられる映画」(ノア・バームバック)。
前作の最後で婚約したドワネルとクリスチーヌが結婚し、子どもをもうける姿が描かれる。しかしドワネルは家庭生活に落ち着くどころか、日本人女性と不倫するなど相変わらずフラフラとして頼りない。作中に散りばめられたゴダール、アラン・レネ、ジャック・タチ、ジョン・フォード、ジャン・ユスターシュ、ジャンヌ・モローらへのオマージュや目配せを探してみるのも一興。
1970年/フランス/カラー/97分
原題:Domicile Conjugal
コピーライト:(c)1970 LES FILMS DU CARROSSE / VALORIA FILMS / FIDA CINEMATOGRAFICA
『逃げ去る恋』(4Kデジタルリマスター版)
「ドワネルの冒険」五作目にして最終作。。「ほんもののおとなになれず、子どものままでいる」(トリュフォー)中年にさしかかったアントワーヌ・ドワネルを軽快に、だがその底に苦悩を滲ませつつ描く完結編。
相変わらずさまざまな職と女性を転々としているらしいドワネルも今や30代半ばで、クリスチーヌとも離婚。そんなある日、彼はかつて失恋したコレットと再会し・・・過去四本の連作からの抜粋を回想場面として再利用しつつ、かつてコレット役を演じたマリー=フランス・ピジェを再び起用してレオーと共演させるなど、完結編にして総集編と呼ぶにふさわしい作品となった。
1979年/フランス/カラー/95分
原題:L’Amour en Fuite
コピーライト:(c)1979 LES FILMS DU CARROSSE
『私のように美しい娘』
アメリカ人作家ヘンリー・ファレルの同名犯罪小説が翻案。ベルナデット・ラフォンの陽気な人間的魅力が遺憾なく引き出された、男性社会に対する諷刺的視線を秘めた軽やかな犯罪喜劇。
女性犯罪者をめぐる著作を準備中の若手社会学者が、殺人罪で服役中の娘カミーユへの取材を試みる。自らの半生をめぐるカミーユの談話を聞くうちに、学者は彼女に夢中になってしまい、その無実を証明しようとやっきになるが……
男たちを手玉にとって生き延びる元気いっぱいのヒロインを、トリュフォーとの協働は最初期の短編『あこがれ』(57)以来となるラフォンが溌剌と演じた痛快篇。
1979年/フランス/カラー/98分
原題:Une Belle Fille Comme Moi
コピーライト:(c)1972 LES FILMS DU CARROSSE/ SIMAR / COLUMBIA FILMS
『恋のエチュード』
『突然炎のごとく』の原作者ロシェの小説を翻案した、もう一つの親密にして激しい三角関係の物語。トリュフォー自身、本作を「傑作」だと考えていたといわれる。
20世紀初頭。パリ在住のフランス青年年クロードは、母の旧友である英国婦人の娘アンに誘われて、ひと夏をウェールズで過ごすことになる。英国でクロードは、アンの内気な妹ミュリエルと惹かれ合うようになるが……原作となったアンリ=ピエール・ロシェの小説は、カトリーヌ・ドヌーヴとの別れが原因で鬱状態になったトリュフォーが、診療所に持ち込んだ唯一の書物だったとされる。
1971年/フランス/カラー/130分
原題:Les Deux Anglaises et Le Continent
コピーライト:(c) 1971 LES FILMS DU CARROSSE / CINETEL
『突然炎のごとく 』
「『突然炎のごとく』は生と死への賛歌であり、カップル以外にはいかなる愛の組み合わせも不可能であることを1歓びと哀しみを通じて表明した作品である」(トリュフォー)。
トリュフォーが敬愛してやまないアンリ=ピエール・ロシェの半自的小説を翻案した、どこか宿命論的な三角関係の物語。第一次世界大戦前後の仏・墺・独を舞台に、ボヘミアン的生活様式と芸術愛好を共有する親友同士のジュールとジムが、気まぐれで奔放な女カトリーヌと出会ったことで始まる、彼らの長きにわたる奇妙な愛情生活が描かれる。
1962年/フランス/カラー/106分/原題:Jules et Jim
コピーライト:(c)1962 LES FILMS DU CARROSSE/ SEDI
『あこがれ(短編)』
ブリュッセル映画祭で最優秀監督賞を受賞した、トリュフォーにとっての「真の初監督作」。ベルナデット・ラフォンの映画デビュー作でもある。
習作短編『ある訪問』(54)に続く二本目の短編監督作だが、トリュフォー自身は本作を「真の初監督作」と呼んでいる。舞台となるのは南仏の田舎町。この町の小僧っ子たち(「小僧っ子たち」は本作の原題でもある)がひとりの若い娘にのぼせあがり、気を惹くために彼女とその恋人に悪戯を仕掛ける姿を描く。娘を演じるのはこの後ヌーヴェル・ヴァーグ映画を代表する女優の一人となるベルナデット・ラフォン。
1957年/フランス/モノクロ/18分
原題:Les Mistons
コピーライト:(c)1957 LES FILMS DU CARROSS
『終電車』
ナチスへの秘かな抵抗を続けながら上演活動を続ける劇団の女座長。その奮闘ぶりを、スリルとロマンスを絡めて描いた、トリュフォー映画中最大の世間的成功を収めた一本。
1942年、独軍占領下のパリ。モンマルトル地区を拠点とする女優マリオン率いる小劇団が、検閲、反ユダヤ主義、物資不足に抵抗しながら上演を継続し、文化の灯を絶やすまいと奮闘する姿を描きつつ、ヒロインを中心とする三角関係の物語をもサスペンスフルに綴っていく。セザール賞10部門(最優秀作品賞と最優秀監督賞を含む)で受賞し、フランスのみならず米国でもヒットした。トリュフォーがフランス映画界を代表する正統派作家として認められたことを印象づけた作品。
1980年/フランス/カラー/131分
原題:Le Dernier Métro
コピーライト:(c)1980 LES FILMS DU CARROSSE / TF1 / SEDIF / SFP
『野性の少年』
「精神的父親」アンドレ・バザンと「孤独な非行少年」トリュフォーの関係が重ねられるかにも見える、感動的な医師と野生児の物語。
フランス人医師ジャン・イタールが、19世紀初頭に発表した「アヴェロンの野生児」をめぐる諸論考に基づく作品。もともとトリュフォーは家庭や社会に受け入れられない子どもや、他者との意思疎通に困難を抱える子どもに深い関心を抱いていた。白黒で撮られた本作ではトリュフォー自らイタールを演じ、見捨てられた子どもに教育を授け、愛情を注ぐ人物を演じる。本作を観たスピルバーグは、『未知との遭遇』に俳優としてトリュフォーを起用した。
1969年/フランス/モノクロ/85分
原題:L’Enfant sauvage
コピーライト:(c)1969 LES FILMS DU CARROSSE / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIES
『アデルの恋の物語』
新進女優イザベル・アジャーニの鬼気迫る演技に世界が注目した、(狂気の)愛をめぐるきびしくもロマンティックな内省。
文豪ヴィクトル・ユゴーの次女アデルの日記に基づき、19世紀半ばに彼女が経験したあるできごとを描いた作品。『野性の少年』で歴史的事実に基づく映画作りの楽しさに気づいたトリュフォーは、本作で再びそれを試す機会を得る。アデル役には、当時20歳のイザベル・アジャーニが抜擢された。本作における演技で、彼女は史上最年少でオスカー主演女優賞候補となるなど高く評価された。また作品自体、批評家たちから絶賛され、国内外の映画賞を多数受賞している。
1975年/フランス/カラー/97分
原題:L’Histoire d’Adèle H.
コピーライト:(c)1975 LES FILMS DU CARROSSE / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIE
『生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険』
6/24(金)~7/14(木)東京・角川シネマ有楽町、名古屋・伏見ミリオン座、
7/1(金)~大阪テアトル梅田にて開催他、全国順次公開予定
※劇場によって上映作品の変更の可能性がございます。
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/truffaut90
公式Twitter:@Truffaut90
提供・配給:KADOKAWA