【重要】アネモ会員システム全面リニューアルのお知らせ

【レポート】『帰らない日曜日』ライター・翻訳家の村上リコ×映画評論家の森直人が20世紀の英国&メイドを徹底解説!

帰らない日曜日

映画『帰らない日曜日』が5月27日(金)日本公開となることを記念して開催されたトークショー付き試写会に、英国文化とメイドに詳しいライター・翻訳家の村上リコと映画評論家・森直人が登壇し、舞台となったイギリスの時代背景や作品について徹底解説した。

目次

映画『帰らない日曜日』トークショー付き試写会 概要

日程:5月19日(木)20時20分~20時50分
登壇者(敬称略):村上リコ、森直人
場所:神楽座

アカデミー賞6部門にノミネートされた「キャロル」などを手掛けたイギリスの敏腕プロデューサーが手がけ、カンヌ映画祭などで絶賛された本作。その魅力について、19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスの日常生活、特に執事やメイドなど家事使用人に詳しい村上は「原作よりさらに女性の視点が大事にされている。時代の移り変わりが繊細に描かれている点がよかった」と語った。

また、は「『バハールの涙』のフランス人女性監督、エヴァ・ユッソンがイギリス映画を制作したということで、意外だったのですが、社会的にも奥行がある作品でした。」と続けた。

本作の舞台は、第一次世界大戦後の1924年のイギリス。村上は当時のイギリスについて「イギリス労働党が政権を取った時代。上流貴族が牛耳っていた過渡期ということで、ここに焦点を当てています。」と解説。森は、ポールが抱える絶望感が本作のポイントになっていると語り、上流階級に属しているポールも弁護士を目指していたことから、貴族も戦後困窮している姿が描かれ、時代背景と戦争が残した爪痕が明らかとなった。

また、人気ドラマ「ダウントン・アビー」と時代背景が重なるなど共通点も話題に。当時のイギリスでは、ジェーンとポールのように、階級違いで愛人関係になった人もたくさんいたのではと村上は予想。は「裸のシーンも多いですが、裸と着衣が対比的に描かれている。衣服というのは社会的象徴ですものね。本作では身分の違う二人が裸の時だけ対等になっているという見方も出来る」とコメントし、とくにジェーンが無人の邸で裸でパイを食べ、げっぷをするシーンがお気に入りだと言う。

ここから原作との違いについて話が及び、が「1948年、書店員になったジェーンが、ドナルドと出会うシーンがありますが、原作ではドナルドは白人男性でポールに似ているという設定でした。」と、映画ではドナルドが黒人男性で描かれている点に触れると、村上は「このシーンもとくに違和感なく観ましたが、監督の意思を感じられたシーンです。」と印象を明かした。加えて、イギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフについて語られるのもメイドから小説家になるジェーンにとって深い意味を持つシーンとなっている。

オデッサ・ヤングとジョシュ・オコナ―の瑞々しい演技、そして、脇を固めるアカデミー賞受賞俳優のコリン・ファースオリヴィア・コールマンの重厚感ある演技が見所のひとつ。
キャストの魅力について、は「コリン・ファースが演じるニヴン氏ら、親側の視点もよく描かれている」と語り、村上も「オリヴィア・コールマンの演技も息子を亡くした母親の感情を表していて、物語に奥行きが足されていた。」と豪華俳優陣の演技を絶賛した。

アカデミー賞受賞スタッフの一人であるサンディ・パウエルが手掛ける煌びやかな衣装も魅力の一つだが、村上がとくに感銘を受けたシーンがあると言う。「当時のメイドの制服が堪能できるのは魅力的。映画の衣装は実際のものよりカラフルかもしれないけど、駅で大勢のメイドが色とりどりの衣装を着ているシーンは原作にはなく、ぐっときました」とお気に入りのシーンを明かした。

最後にが「色々掘っていくと時間がなくなりますが、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」と締め、貴重なエピソードが満載で観客も大満足のイベントは幕を閉じた。

帰らない日曜日

それは人生が一変した日曜日だった―
生涯心に刻まれた<秘密の恋>の息をのむ、傑作ラブストーリー

原作は、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロ、ニューヨーカー誌、タイム紙などに絶賛された小説「マザリング・サンデー」。監督は、カンヌ国際映画祭常連のエヴァ・ユッソン。W主演を務めるのは、今大注目の新星女優、オデッサ・ヤングと、大人気ドラマ「ザ・クラウン」で各賞を席巻した人気急上昇中の英国俳優、ジョシュ・オコナー。さらに、『英国王のスピーチ』のコリン・ファースと『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマンという、アカデミー賞受賞俳優の贅沢な共演が実現。イギリス屈指のスタッフが集結し、階級違いの<秘密の恋>を美しく描いた愛の物語が誕生した。

目次