【レポート】『犬王』湯浅政明監督「これまでの経験の蓄積に、デビュー当時の気持ちをミックスしたような作品」

犬王

アニメーション映画『犬王』が5月28日(土)公開となることを記念して、湯浅政明監督&松本大洋特集上映が行われ、『夜は短し歩けよ乙女』『MIND GAME マインド・ゲーム』上映回の前後に湯浅政明監督が登壇した。

本作は、監督:湯浅政明×脚本:野木亜紀子×キャラクター原案:松本大洋×音楽:大友良英といった常に新作が期待されるクリエイターが集結し、室町の知られざるポップスター【犬王】から生まれた物語を、変幻自在のイマジネーションで描く“狂騒のミュージカル・アニメーション”。
第78回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門をはじめ、世界各国の国際映画祭にて早くも絶賛を集めている。

原作は、「平家物語 犬王の巻」(古川日出男著/河出文庫刊)。カリスマ性と歌唱力、そして野心を抱く主人公・犬王を人気バンド「女王蜂」のボーカル担当・アヴちゃんが演じ、その相棒となる琵琶法師・友魚(ともな)を実力派俳優・森山未來が演じる。

目次

イベント概要

日程:5月19日(木)
20:05~20:35『夜は短し歩けよ乙女』トークショー
21:05~21:35『MIND GAME マインド・ゲーム』トークショー
登壇者(敬称略):湯浅政明監督/MC 吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)
場所:新宿バルト9 シアター8

■ 京都からストーリーが生まれる理由
『犬王』同様に『夜は短し歩けよ乙女』の舞台は京都。京都という土地の魅力について、湯浅監督は「実際に行くと楽しいし、住みたくなるような場所。京都には変わった人がいそうで変わった出来事も起こりそう。昔ながらの形が残っているところも歴史的背景を感じられていい。夜も薄暗いところが多くて、暗闇に魑魅魍魎がいそうな気がする。『鴨川ホルモー』など京都を舞台にした不思議なストーリーが数多く生まれる理由もわかる気がする」と実感を込めて分析した。

『犬王』制作のためのロケハンでは「平家が敗れた壇之浦から宮島、福山を回りながら京都に行ったりして、室町時代からある焼餅屋さんを作品に入れたりもした。主人公二人が味わったのではないかという雰囲気を追体験する形を意識しました」と臨場感を強調していた。

アニメーター出身の湯浅監督は、監督としてアニメーターに指示を出す際は「キーとなるポイントは指示を与えるけれど、全体的には自分のイメージを押し付けるのではなく、大まかな枠組みを与えるようにしている」という。

その理由については「一人だけできっちりと考えたものは面白くないというか、クリエイターたちによるプラスアルファが欲しい。自分よりも良いものが描ける人がいるのならばそうして欲しいと思うし、自分がアニメーター時代にやっていて楽しかったのは自由度のある余裕を持った作り方だったから」と解説した。

犬王

■ 自分が素直に描きたいと思ったものを詰め込む
『MIND GAME マインド・ゲーム』については「僕にとってのほぼ長編監督デビュー作。STUDIO 4℃のスタッフもこれから伸びようという若い人がいて、後々『鉄コン筋クリート』でも頑張ってくれました。初めて尽くしの作品でしたが、デジタルを取り入れたことで写真を加工することができたりして、アナログフィルム時代よりも自由度が高かった」と振り返った。

公開当時は斬新なタッチに「賛否両論だった」というも「その後を考えるきっかけになったというか、こういう映画だと世間はこういう風に受け取るのかと学びました」と、自身にとってのエポックメイキングな作品になったよう。

新作『犬王』には『MIND GAME マインド・ゲーム』のエッセンスがあるようで、「『MIND GAME マインド・ゲーム』のように自分が素直に描きたいと思ったものを入れたのが『犬王』。これまでの経験の蓄積に加えて、アニメを素直に作っていた監督デビュー当時の気持ちをミックスしたような作品」と紹介した。

先んじて試写で『犬王』を見たというMCの吉田尚記アナも、「ほんっ……とうにおもしろい作品!」と、興奮を隠せない様子だった。

■『犬王』は「ライブを見るように楽しんで」
改めて『犬王』について湯浅監督は「とにかくたくさんの人に見てほしいと思って作った作品であり、大人の事情を考えずに(笑)一生懸命できるだけのことをした作品です。時代劇ではあるけれど、ストーリーはわかりやすくて楽しい。二人の若者が上り詰めていく物語なので、その二人の活躍を見てほしい。僕自身も生きたいように生きる彼らの姿に勇気をもらいました」と、渾身作であるとアピール。

アヴちゃんと森山未來のパフォーマンス力にも太鼓判を押した。「お二人のパフォーマンスやステージングがキャラクターに乗り移ればいいと思った。『犬王』はライブを見るような感覚で楽しんでほしいし、リズムとノリがいい作品なので座って見るのはきつい作品かもしれない。オールスタンディングでライブを見るように、劇場でも盛り上がってくれたら嬉しいです」と期待を込めた。

犬王

ストーリー
室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪(ひょうたん)の面で隠された。ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。
「ここから始まるんだ。俺たちは」
壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?
歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。

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