【レポート】第75回カンヌ国際映画祭で『PLAN 75』公式上映!磯村勇斗、ステファニー・アリアン、早川千絵監督が登壇

PLAN 75
(C)Kazuko WAKAYAMA

倍賞千恵子主演映画『PLAN 75』(6月17日(金)に新宿ピカデリーほか全国公開)が第75回カンヌ国際映画祭で現地時間5月20日(金)14時に公式上映され、出演する磯村勇斗とステファニー・アリアン、そして早川千絵監督がフォトコールとレッドカーペット、記者会見に登壇した。

本作は、映画監督・是枝裕和が初めて総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇『PLAN75』を新たに構築し、キャストを一新した早川監督のオリジナル脚本による作品。早川監督は自身初の長編映画で第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門への正式出品という快挙を成し遂げた。

目次

『PLAN 75』 第75回カンヌ国際映画祭 参加スケジュール 詳細

日程:5月20日(金) ※現地時間
11:20~11:30 フォトコール @パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ内3階テラス
13:30~ レッドカーペット歩行 @ドビュッシー劇場
14:00~16:00 公式上映 @ドビュッシー劇場
16:30~17:15 記者会見 @ジャパン・パビリオ
21:15~ レッドカーペット歩行 @パレ・デ・フェスティバル
登壇者(敬称略):磯村勇斗、ステファニー・アリアン、早川千絵監督

色鮮やかなシャツと爽やかな白いパンツ姿の磯村勇斗がフォトコールに登場すると、海外メディアからの大きな声援とともに、世界各国から集まった100台以上のカメラのフラッシュが一斉にたかれ、「イソムラーー!!」のコールが巻き起こった。磯村は今回が自身初の海外映画祭への参加。特にカンヌ国際映画祭には思い入れがあり、参加を熱望、2泊4日の弾丸スケジュールで現地入りを果たした。

PLAN 75
(C)Kazuko WAKAYAMA

その後に行われた公式上映では、満場の客席から拍手喝采の嵐が巻き起こった。これが初めての海外映画祭への参加となった磯村は、観客たちの大歓迎ぶりに思わず万感の様子で、感無量のカンヌデビューとなった。
さらに公式上映終了後、場内は5分以上にわたるスタンディングオベーションを受けた後、感激した観客がそばに駆け寄り、「素晴らしい映画だった」と監督をハグする姿も見られた。

上映後には日本メディア向けの記者会見が開催され、多くの記者たちが集まった。早川監督は「今回上映していただいたドビュッシー劇場は音の環境が良いと聞いていたのですが、初めて大きなスクリーンで素晴らしい音響の中で上映していただき、それに立ち会うことが出来てとても感無量です」と感慨深げに振り返った。

PLAN 75
(C)Kazuko WAKAYAMA

また、磯村も「世界の人たちと一緒に映画を観ることが初めてだったのですごく光栄でした。観客の反応を見ながら、映画を観ていたので少し緊張もしましたが、非常に良い経験をさせてもらえたと思います」と感謝の言葉を述べた。フィリピン人の女優、ステファニー・アリアンも「多くの方々が心を込めて作った作品でカンヌ国際映画祭に参加できたことに大変感謝しています」と思いの丈を伝えた。

今回は残念ながら参加できなかった倍賞への思いを尋ねられた早川監督は「すぐにでも電話をして声を聞きたいですね。上映中も、撮影時の倍賞さんのことを思い出しながら観ていました。ミチを演じていただき、ありがとうございますという思いでいっぱいです」と語り、「倍賞さんからは、“(カンヌは)若い人たちに任せたから頑張ってきて!”と仰っていただいたんです」と笑顔をのぞかせた。

磯村は「倍賞さんとの共演シーンは少なかったのですが、目が魅力的でした。役を超えて、倍賞さんが今まで生きてこられた全てがミチという役に投影されているように感じるほど、とても自然体で、醸し出す空気が人生を物語っていました」と倍賞への尊敬の念を語った。共演シーンはなかったが、同じ撮影現場に立ち会えたステファニーは「一緒にお昼ご飯を食べたり、写真を撮っていただきました」と思い出を教えてくれた。

海外からの注目が高く、評価を受けている理由について尋ねられた早川監督は「人間の生と死、どう生きるか死ぬかや尊厳については普遍的な問題だと思います。特にコロナ禍になってからは世界中でより多くの人が、どうやって生きるのか、人間の尊厳を保っていくのかと考えるようになったのではないでしょうか」と分析。

若い世代として、高齢化社会への危機感を持っているのかと質問を受けた磯村は「作品のオファーをいただく前から、現代の社会問題のひとつとして高齢化問題については考えていました。若い人たちだけに責任が押し付けられてしまわないか、一生懸命働いても負担が減らないのではないかと常々、解決策がないかと思っていました」と明かし、その感情を役に込めたという。

本作が長編映画デビューとなる早川監督の印象について、磯村は「演出が丁寧で俳優に寄り添ってくれる方。俳優のアクティングスペースに入って、監督自身が実際に動作を見せてくれ、時にはディスカッションを交わしながらの撮影でした。安心して信頼できる現場だったと思います」と振り返り、ステファニーも「監督が何を求めているのかをはっきりと言ってくれ、私の意見もしっかりと聞いてくださったので、とてもやりやすかったです。また、私の母国であるフィリピンの文化に対して、リスペクトを持って描いてくれたことにも感謝しています」と語る。

最後に、カンヌ国際映画祭に参加したいと長年思い描いていた夢が叶った磯村は「カンヌに来て、映画を愛している人たちが世界にはこんなにも沢山いるんだなと改めて感じることが出来ました。そういう方々を見て、もっと自分も頑張れると思えましたし、これからも映画に対して愛を持って取り組んでいきたいと思いました」と今後の俳優人生への決意をにじませ、会見を締めくくった。

記者会見後、メイン会場となるパレ・デ・フェスティバルに登場した磯村たち。限られた滞在期間内で、思う存分、カンヌ国際映画祭を満喫した。

現地からは「表面上は穏やかに見えるが、不必要と見なされた人々を見捨てる社会に対してしっかりとメッセージを伝え、観る者の心をざわつかせる」「倍賞千恵子の演技は、間違いなく観る人の琴線に触れるだろう」「繊細な脚本と、それを見事に体現したすばらしい演技で、日本映画として今年のカンヌ映画祭に立派な足跡を残した」「今年のカメラ・ドールの最有力候補の一つ!」等々、絶賛の声が相次いでおり、受賞への期待も高まっている。

なお、日本人監督の作品が「ある視点」部門に出品されるのは、2017年の黒沢清監督『散歩する侵略者』以来5年ぶり。日本人女性監督としては、15年『あん』の河瀬直美監督以来2人目となる。「ある視点」部門の受賞発表は今月27日(金)。

PLAN 75
(C)Kazuko WAKAYAMA

イントロダクション
超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自らの生死を選択できる制度<プラン75>が施行され、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描いた衝撃作の主人公・角谷ミチを演じるのは、9年ぶりの単独主演作となる倍賞千恵子。<プラン75>に携わる側には磯村勇斗河合優実を配し、他にたかお鷹ステファニー・アリアン大方斐紗子串田和美らが顔を揃えた。

2025年には日本の国民の5人に1人が75歳以上になると言われる今、ここに映し出される状況は絵空事と言い切れるほど遠くはない。不寛容や人の痛みへの想像力を欠いた世の中への危機感とともに、命の尊さを静かに、そして強く訴える。

ストーリー
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。
夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、<プラン75>に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは―。

目次