『ぼくらのよあけ』黒川智之監督と『雨を告げる漂流団地』石田祐康監督の“団地”特別対談インタビューが到着!

ぼくらのよあけ

今井哲也の傑作SFジュブナイル漫画を劇場アニメ化した『ぼくらのよあけ』が10月21日(金)全国公開となる。

この度、『ぼくらのよあけ』の黒川智之監督が、同じく“団地”をテーマにしたオリジナルアニメ映画『雨を告げる漂流団地』の石田祐康監督と特別対談を実施。互いの作品を鑑賞した感想や対照的かつ印象的だった設定はもちろん、物語のテーマである”団地”が担っていた文化や生活について、“団地”への熱い想いが詰まった対談インタビューが到着した。

――このたび『ぼくらのよあけ』『雨を告げる漂流団地』と、団地をテーマにしたアニメ映画が近い時期に公開されることになったわけですが、お互いの作品はどうご覧になりましたか?

黒川:『ぼくらのよあけ』は、原作もアニメも、阿佐ヶ谷住宅という実在した団地がモデルなんですが、同じ団地をテーマにしても、アプローチが違うとここまで描き方が違うのかというのは新鮮ですね。われわれの方はどちらかというとSFというか、宇宙人やAIといった側(がわ)の話でしたが、『雨を告げる漂流団地』の方はどちらかというと、妖怪というか、妖精というか、そういう付喪神(つくもがみ)的な、日本古来のファンタジーというか。団地ひとつでこんなに方向性の違うエンターテインメントができるんだなというのは、拝見させていただいてすごく新鮮で、面白かったです。

石田:その視点はすごくよくわかります。僕もほぼ同じ視点で『ぼくらのよあけ』を観させていただいたので。『雨を告げる漂流団地』はある程度、恐らく日本人には馴染みのある感覚だろうというところで作ったものですが。前に作っていた『ペンギンハイウェイ』という作品があったんですけど、あれはもう完全にSFの方向で作っていたものですね。僕もどちらの取り組み方も好きなので、『ぼくらのよあけ』にもすごくシンパシーを感じましたし、非常に楽しませていただきました。

――石田監督は『雨を告げる漂流団地』公開に寄せたコメントで、失われつつあるが、かけがえのない大切な場所である団地への思いについて語っておられましたが。

石田:そうですね。ある意味、対照的なところがあるのかもしれないですね。。未来を指向するというよりは、過去を見るような視点は確かにあったかもしれない。だから作中の設定自体は紛れもなく現在で、それこそ2000年代以降、団地ができてから半世紀以上たって、有名だったいくつかの団地が取り壊され始めて以降の話ですね。ひばりが丘団地を題材にしたのも、すでに取り壊されてるからというところも理由にあって。10年程前に取り壊しというか建て替えがあって。

この作品で団地を描こうとする時には、どちらかというと過去のことをどういう風に受け取って、それこそ子どもたちがどう感じていたのか、というところが自然とメインにはなっていきましたね。強いていえば、取り壊された団地のすぐそばに新しい高層棟が何個も建っていて、またここで新しい団地、新しい街が生まれているんだよというようなことは、自分が提示できる未来という意味で背景として描いています。

ただこちらの作品が違うのは、舞台が2049年なことですよね。それだけ時間がたってもまだ団地が現役というか、もしかしたらこれから順次取り壊されていくのかもみたいなところは確かにあったものの、そこを何か未来のツールだったり、子供たちが、未来を志向する形で一つのモチーフとして使っている光景はすごいなと。『雨を告げる漂流団地』とはそういう部分での違い、共通性とも言えるかもしれないけど、志向の仕方が違うなというのが見ていて面白かったですね。

あるひとつの棟を舞台に、方舟のような感覚で作品に取り込むという点。そこは『ぼくらのよあけ』でも感じましたね。やはりそういう視点になるんだなと。

黒川:まさに今、石田監督がおっしゃられていましたけど、まさしくどっちも団地が船ですよね。団地というものは今でこそノスタルジーのアイコンみたいになってますけど、当時としては水洗トイレが付いていますとか、団地の中に周回バスがありますとか最先端の設備だったわけです。いわば完全に独立した、そこだけの空間で生活ができますよという、コンパクトなスマートシティの発想だったと思うんです。そこにいろんな人の思いや生活、歴史などが乗っかってくるところがあるなと。

そしてそれが一軒家と違って、縦に連なっているのも面白いなと。下のフロアで子供がキャッキャ遊んでいるかと思えば、上のフロアでは夫婦げんかしてるみたいな。それが団地の棟の中でごった煮状態になっている。そこは日本人にはすごく馴染みやすい住居デザインだったんじゃないかと思いますし、だから日本人に受け入れられているのかなと思います。

石田:僕自身は小さい頃は一軒家に住んでいて。団地には住んだことがなかったんで、縦の文化というのにあこがれはありました。『ぼくらのよあけ』でも、階段を上り下りしてとか、主人公が階段をワーッとジャンプしてというのも、もし自分が子供時代に住んでいたらやるよなぁと。上っていった先に屋上に繋がる蓋があって。そこを上がっていくところのカットなんかも主観視点で描かれていて、やっぱこれだなと。縦の最後のゴール地点へ入る瞬間をちゃんと描く。そこが大事で、ちゃんとワクワクする感じで作ってくれてるなあと思いましたね。

黒川:縦の構造物というところでいくと、『ぼくらのよあけ』で意識したのは、地表に立ってるときと、屋上に立っているときの、10歳の子供にとっての世界観の違いというか。地上に立ってるときは当然、日常の視点になっていくんですけど。屋上っていうのは非日常的な空間ですよね。それこそ『雨を告げる漂流団地』でも屋上がすごく象徴的に使われてましたけど。あそこって秘密基地じゃないですか。やっぱり子供は入っちゃいけないところに入りたがる。そこは意識しました。

――屋上が子どもたちの秘密基地という感覚は分かります。

黒川:ところで石田監督は今まで劇場のアニメ作品を手がけてきたわけですが、1クール12本といったテレビシリーズに対して興味はあるんですか?もうちょっと長いスパンで物語を語ってみたいとか。

石田:確かにありますね。何かしらの作品を次に作る機会があるならば、いろんな選択肢がある中で、長いスパンの物語を作る可能性はあり得るのかな、と。自分自身もいろんなアニメを見てきましたし、12話で完結するようなシリーズ物も好きでした。だからそれの良さっていうのはすごく分かりますし、そこでこそ得られる視点っていうのもきっとあると思うので。

黒川:それこそ『雨を告げる漂流団地』みたいな話はテレビシリーズでできると思うんです。あれだけ魅力的なキャラクターがいるわけですから、それぞれひとりひとりのエピソードを丁寧にやればテレビシリーズになりそうだなと。石田監督の視野の広さは、もちろん劇場作品でギュッと凝縮された中でも感じられるんですが、もう少しゆったりとした、ドラマを語る作品も、いちファンとして観たいですよね。

もちろんテレビシリーズにはテレビシリーズの苦労が、マラソンのような、長距離走みたいなものがあると思うんですけど。ただ『雨を告げる漂流団地』に限らず、やっぱりファンは絶対、もうちょっと長い石田ワールドに浸っていたいという気持ちがあるんじゃないかなと思うんですよね。

石田:それはなんか、もったいないお言葉でございます(笑)。ちょっと考えてみます。

――では最後に、これから映画をご覧いただく方に向けてメッセージをお願いします。

石田:こちらの場合は現時点でもう世に出ていて、自分の中でもやっぱり振り返っているタイミングになってます。公開されてひと月近く経っているので。それで振り返ると、こうすれば良かったのかな、逆にここはこれで良かったのかな、とそれぞれの視点があって。『雨を告げる漂流団地』はかなり正直に作った映画です。辛いことも含めて感じていたことの描き方が正直そのままなので、そこから来る反省点はやっぱりあるんですよね…。

でも、一度こうやって正直に今自分ができる限りのこと、思う限りのことをあんまり控えずに形にしたというのは、少なくとも今後の一つの指標にはなるような予感はありますし、おぼつかないところも含めてこの正直さをそのうち好きに思えるようになる気もします。団地という舞台のパワーをお借りしつつ作った作品ですが、子供たちの姿を通してそういった正直な部分もこの映画で見てもらったらいいんじゃないかなと思います。団地というところですごくご縁のある『ぼくらのよあけ』という映画、団地という船に乗るファンタジーとSFというそれぞれのところで跳躍するこの2作品。ぜひ皆さんに一緒に観ていただけたら、同じ団地の友だちとしてうれしいです。

黒川:ありがとうございます。『ぼくらのよあけ』は公開がこれからなので。むしろこちら側としては『雨を告げる漂流団地』の波に便乗してるような形になっているんですけど

石田:それは全然いいんです(笑)。

黒川:でも本当に不思議なご縁というか、不思議な流れですよね、最初に言ったように、団地を軸にしながらも、一方で日本古来の感じの妖怪的なファンタジー、一方でSFというところで、全くジャンルの違うアニメーションになったというのも面白いと思うので。むしろ見比べていただいきたいかなと。やはり団地といえば家族、団地といえば子供というところがありますから。

石田:そこもそうですね (笑) 共通してますね。

黒川:『雨を告げる漂流団地』を見ていただいた方にはもちろん『ぼくらのよあけ』を観ていただきたいですし、あっちがどうだ、こっちがどうだというような感想も全然ウエルカムかなと思います。


イントロダクション
監督は「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズなどの黒川智之。そして、脚本を佐藤大、アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザインをpomodorosa、アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督を吉田隆彦が担当。
そして、宇宙が大好きな主人公・悠真を杉咲花、人工知能搭載家庭用ロボットのナナコを悠木碧が演じ、悠真と同じ小学校に通う子供たちには、藤原夏海(岸真悟役)、岡本信彦(田所銀之介役)、水瀬いのり(河合花香役)、戸松遥(岸わこ役)、宇宙からきた未知の存在“二月の黎明号”に朴璐美、さらには、悠真の母親・沢渡はるかに花澤香菜、父親・沢渡遼に細谷佳正、花香の父で有名な小説家・河合義達に津田健次郎と、超豪華声優陣が集結した。

ストーリー
「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」
西暦2049年、夏。阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近するという“SHⅢ・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在は、2022年に地球に降下した際、大気圏突入時のトラブルで故障、悠真たちが住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。その夏、子どもたちの極秘ミッションが始まった―

作品タイトル:『ぼくらのよあけ』
声の出演:杉咲 花(沢渡悠真役)、悠木 碧(ナナコ役)、藤原夏海(岸真悟役)、岡本信彦(田所銀之介役)、水瀬いのり(河合花香役)、戸松 遥(岸わこ役)、花澤香菜(沢渡はるか役)、細谷佳正(沢渡遼役)、津田健次郎(河合義達役)、横澤夏子(岸 みふゆ役)、朴 璐美(二月の黎明号役)
原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤 大
主題歌:三浦大知「いつしか」
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
虹の根デザイン:みっちぇ
音楽:横山 克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ

公式サイト:bokuranoyoake.com
公式Twitter:@bokura_no_yoake
コピーライト:(C)今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

10月21日(金)全国公開

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