韓国の新鋭キム・セイン監督の長編デビュー作『同じ下着を着るふたりの女』が5月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開されることが決定した。
中年シングルマザーの母親と20代の娘の、暴力と依存の悪循環に陥った親子関係を描いた物語。相手を完全に愛しきることも憎むこともできない「母と娘」の関係を、キム・セイン監督が同じ女性の視点から真摯に描き出す本作。
ここ日本でも近年、過干渉や暴言・暴力などで子どもを思い通りに支配しようとする“毒になる親”=「毒親」や、子供が親を選べない状況を指す「親ガチャ」といったキーワードが注目を集める一方で、2022年には、“良い母親”になりきれない女性たちの葛藤を明らかにした書籍『母親になって後悔してる(オルナ・ドーナト著、新潮社)』がヒットするなど、いま、改めて親子関係に起因する様々な困難や苦悩を捉え直す動きが、社会的なイシューとなっている。
本作は、母の愛を求める娘側の視点だけでなく、世間が求める良母になりきれない母側の葛藤にもレンズを向け、単なる家庭内暴力や共依存といったテーマに収まらない、ふたりの複雑な感情を丁寧に捉える。そこにシリアス一辺倒でない悲哀や、観客の感情を受け止める大胆な余白も描き込むことで、近年の韓国フェミニズムやシスターフッド映画の“次”をいく、新たなリアリズムを獲得。韓国での公開時には、幅広い世代の女性たちから切実な共感を集める作品となった。
第26回釜山国際映画祭ではコンペ部門のニュー・カレンツ賞をはじめ、本作が長編デビューとなり娘役で主演したイム・ジホの女優賞など、計5部門での受賞を達成。以降もベルリン映画祭や東京フィルメックスにも出品を重ね、世界の映画界から注目を集める作品となっている。
【監督・脚本】キム・セイン
1992年6月23日、韓国・インチョン生まれ。聖潔大学校演劇映画学部及び韓国映画アカデミー(KAFA)で学ぶ。短編『Hamster』(2016)のチョンジュ国際映画祭出品を皮切りに、短編『Container』(2018)ではソウル独立映画祭(SIFF)で審査員賞を受賞するなど注目を集める。
韓国映画アカデミーの卒業制作として製作された『同じ下着を着るふたりの女』(2021)で長編デビュー。2021年釜山国際映画祭に出品し、ニュー・カレンツ賞やNETPAC賞など5つの部門で受賞。その後同作はベルリン国際映画祭のパノラマ部門にも選出された。
ストーリー
30歳を目前に控えたイジョンと母のスギョンは、ふたりで団地に同居している。若くしてシングルマザーとなったスギョンは幼い頃から娘に辛く当たり、そんな母に対してイジョンも長年積み重なった恨みを隠しきれずにいた。ある日、買い物に訪れたスーパーの駐車場で二人はいつものようにケンカになり、車から飛び出したイジョンを母スギョンが轢き飛ばしてしまう。スギョンは「車が突然発進した」と警察に説明するが、イジョンは故意の事故だと疑わず、母を相手に裁判を起こす。そんななかイジョンは、会社に新しく入社した同僚スヒの気遣いに触れ、彼女に癒しを求めるようになる。一方スギョンも、恋人ジョンヨルとの再婚の話が進んでいた。ようやくふたりはそれぞれの人生を歩むかに思えたが――。
作品タイトル:『同じ下着を着るふたりの女』
出演:イム・ジホ、ヤン・マルボク、チョン・ボラム、ヤン・フンジュ
監督・脚本:キム・セイン
2021年/韓国/韓国語/カラー/139分/1.85:1/5.1ch /DCP
原題:같은 속옷을 입는 두 여자
英題:The Apartment with Two Women
日本語字幕:根本理恵
配給:Foggy
公式サイト:https://movie.foggycinema.com/onajishitagi/
5/13(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開