パリ郊外、“排除”と“怒り”の衝突を描くラジ・リ監督最新作『バティモン5 望まれざる者』予告解禁

バティモン5

フランスの新進気鋭監督ラジ・リの最新作『バティモン5 望まれざる者』が5月24日(金)公開となることが決定し、予告と本ポスタービジュアルが解禁された。

パリ郊外(=バンリュー※1)に存在する、都市再開発を目前に控えた居住棟エリアの一画=通称「バティモン5」。治安の悪いエリア一掃を目論む行政と反発する住人たちが、ある事件をきっかけに、ついに衝突する―。

解禁された予告は、今年の夏季五輪開催地でもあり、世界が憧れてやまない憧れの都市・パリのリアルな<怒り>を捉えたもの。
多くの移民たちが暮らす犯罪多発地区の一画“バティモン5“。臨時市長に就任したピエールは、再開発を言い訳にこの“乱れた“地区を強制的に一掃しようとする。「声を上げなきゃ」「批判ばかりで何もしないのね?」―行政の横暴なやり方に対して住民同士でも葛藤や諦めムードがせめぎ合うが、そんな切実な声はお構いなしに<法の執行>の名の下、あらゆる手段で全てを思い通りに動かそうとする行政。やがて、住む場所を失った住民たちは、このあまりにも横暴な立ち退き要求に対し、徹底抗戦することを決意。「全てを失う苦しみを知れ!」住民たちの怒りと行政が衝突することになる。「フランスは好きですか?」このシンプルな問いかけが、権力、革新、暴力があらゆる不都合な真実を炙り出していく。

ポスターは、バンリュー地区の古いアパートが爆破解体される瞬間を切り取ったもの。市長ら行政関係者と多くの住人、野次馬が見守る中爆炎を上げながら一瞬で崩れ落ちていくその様子は、人と権力の身勝手さの縮図を象徴するような印象的なカットとなっている。

監督のラジ・リは役者として、また、1994年にアーティスト集団クルトラジュメのメンバーとしてキャリアをスタートし、1997年、初の短編映画『Montfermeil Les Bosquets(原題)』を監督、2004年にはドキュメンタリー『28 Millimeters(原題)』の脚本を、クリシー、モンフェルメイユ、パリの街の壁に巨大な写真を貼ったことで有名になった写真家JR(ジェイアール)と共同で手がけるなど、今、注目を集める新進気鋭のアートティストの1人でもある。2022年にはパリ郊外のスラム地区での暴動を映し出したNetflix映画『アテナ』の製作・脚本を手がけ話題を呼んだ。

バティモン5
ラジ・リ監督
(C)Laurent Le Crabe・SRAB FILMS

前作『レ・ミゼラブル』では、自身が生まれ育ったパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、そのエリアを取り締まる犯罪防止班(BAC)と少年たちの対立を、手に汗握る圧倒的な臨場感で描き出し、第72回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、第45回セザール賞4冠最多受賞(観客賞、最優秀作品賞、有望男優賞、編集賞)、第92回アカデミー賞(R)国際長編映画賞ノミネート、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネートなど各国の映画賞を総なめにした。

レ・ミゼラブル
(C)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

それから4年。ラジ・リ監督のもとに『レ・ミゼラブル』製作スタッフが再集結し、再びバンリューが抱える問題を持ち前の臨場感に新しい視点を交えて生み出したのが本作だ。前作と地繋がりのテーマを採用しつつも、そのドラマはより人間臭さを帯びながらさらに社会性をまとい、観るものを圧倒する力強さで進化した作品となっている。

なお、本作は「横浜フランス映画祭2024」(3月20日~24日)で上映されることが決定し、ラジ・リ監督の来日も予定されている。また、3月15日(金)からムビチケオンライン、特別鑑賞券(共に1,600円税込)も発売予定だ。

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※1: バンリュー とは

フランス語で郊外を意味する banlieue(バンリュー)は「排除された者たちの地帯」との語源をもつ。19世紀より労働者の街として発展し、戦後は住宅難を解消する目的で大量の団地が建設された。団地人気が低下する1960年代末より旧植民地出身の移民労働者とその家族が転入し、貧困や差別などの問題が集積する場となった。

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