ジョセフィン・デッカー監督の長編第4作で、マーティン・スコセッシが製作総指揮を務めた『Shirley シャーリイ』(公開中)の本編映像と、併せてシャーリイを演じたエリザベス・モスからのコメントが到着した。
解禁された映像は、シャーリイとローズの間に奇妙な関係性が生まれる瞬間を切り取ったもの。もともとはローズたち<他人>が自分たちと突然同居することになり、夫婦が自分の生活空間に入り込んでくることに嫌悪感を露わにしていたシャーリイ。だが、シャーリイの才能と努力に素直に敬意を評し、献身的に尽くすローズに対して、やがて心を許していくようになる。幻想的な森の中、生きることに、どこか息苦しさを感じている2人が共鳴していくーシャーリイの小説の中に入り込んだような不思議な空間を捉えたものとなっている。
主人公、シャーリイ・ジャクスン役を演じたのは『透明人間』『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』などで知られる俳優エリザベス・モス。モス自身「シャーリイが男性だったら、もっと小説が評価されたと思う」と語る。「シャーリイは女性だったせいで名声を得るまでの時間が3倍かかってしまったと思います」「当時も非常に成功して有名にはなっていましたが、ちょっと違うんです。史上最も偉大な作家として注目を集めるようになったのは死んだ後でした。スティーヴン・キングのような小説家がシャーリイに影響を受けたと発言したり、似たようなトーンの小説を書くマーガレット・アトウッドが登場したりして、この30~40年でようやく本当に評価されるようになりました」と言う。
そんな、現代以上に女性が生きづらかった時代、<才能を持ってしまった>2人の女性が社会の息苦しさの中で出会い、そして共鳴する。「シャーリイは最初、ローズのことを疑い、突っぱねます。それからローズを利用して執筆中の小説「絞首人(処刑人)」の手伝いをさせます。その後、シャーリイはローズに恋しているような状態になります。そして最後、シャーリイはローズにとって母親のような存在になり、ローズを守ります。ローズが命を捨てようとするのを救おうとします。2人が体験することは映画の中でも大きな要素になっています」と、述懐している。
本作は、スティーヴン・キングも影響も受けたと言われるゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記に、現代的で斬新な解釈を加えて練り上げられた、想像力とダイナミズムに満ちた心理サスペンス。彼女の小説だけでなく、配偶者で文芸評論家でもあったスタンリーとの数百通の手紙をもとに制作されている。また、作家自身のキャラクターを描きながら、まるでジャクスンの小説世界に迷い込んだかのような、幻惑的な映像を作り上げた。
ジョセフィン・デッカー監督は、シャーリイ・ジャクスンについて「ある批評家か伝記作家が<シャーリイは政治的な作家ではない>と指摘していたが、しかしシャーリイは私的なレベルにとどまりつつ政治を意識していたと思っている」と語る。そして「だからこそ彼女の作品は今でも響き続けるのだ。彼女の作品は非常に人間的だから時代を超えて読まれている。シャーリイは非日常的な設定、心理描写、あるいは潜在意識に訴える巧みなリズムを使って人種差別、階級差別、性差別と闘っていたのだ」とその魅力についてコメント。
脚本を手がけたサラ・ガビンズは長年、文学とかけ離れたホラー作家として扱われてきたシャーリイ・ジャクスンについて異議を唱える。「彼女は数多くの短編や長編を残したが、ホラー作品によくある吸血鬼やゾンビや幽霊や神話上の怪物は登場しない。その代わり日常のありふれた風景の中に恐怖を見出すのがシャーリイの小説の特徴でもある。<人間こそ恐ろしい怪物であり、私たち自身の精神が血に飢えた悪魔的な妖怪であり、私たちの社会はのどかなパーティーを楽しみつつ石打ちの刑にも加われる気まぐれな人々の集まりである>」と述べている。
ストーリー
1948年、「ニューヨーカー」誌上に発表した短編「くじ」が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイ(エリザベス・モス)はスランプから抜け出せずにいた。着想の元になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女が突如として消息を絶った未解決の失踪事件。部屋に引きこもってばかりいるシャーリイの状況を変えようと、大学教授である夫のスタンリー(マイケル・スタールバーグ)は、助手のフレッド(ローガン・ラーマン)と妻のローズ(オデッサ・ヤング)を居候として呼び寄せる。初めは気難しいシャーリイの態度に挫けそうになるローズだったが、交流を続けるうちに二人の間には奇妙な絆が芽生えていき……。
『Shirley シャーリイ』
出演:エリザベス・モス(『ハースメル』『透明人間』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』)/マイケル・スタールバーグ(『ボーンズ アンド オール』『君の名前で僕を呼んで』)/ローガン・ラーマン(『ブレット・トレイン』『ウォールフラワー』)/オデッサ・ヤング(『帰らない日曜日』『グッバイ、リチャード!』)
監督:ジョセフィン・デッカー
脚本:サラ・ガビンズ
原作:スーザン・スカーフ・メレル(「Shirley」未邦訳)
撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン
美術:スー・チャン 編集:デヴィッド・バーカー 衣装:アメラ・バクシッチ
音楽:タマール=カリ
音楽監督:ブルース・ギルバート、ローレン・マリー・ミカス
キャスティング:ケリー・バーデン、ポール・シュニー
2019年|アメリカ|英語|107分|アメリカン・ビスタ|原題:Shirley|字幕翻訳:橋本裕充
配給・宣伝:サンリスフィルム
(C) 2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://senlisfilms.jp/shirley
公式X:https://twitter.com/shirleymovie_jp
7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
■ 現実と虚構の境界が曖昧に― エリザベス・モス主演『Shirley シャーリイ』本予告&ポスタービジュアル解禁
■ 『Shirley シャーリイ』公開日が7月5日に決定 幻想と現実が入り乱れるシーン写真も解禁
■ マーティン・スコセッシ製作総指揮、エリザベス・モスが稀代の怪奇作家を怪演『Shirley シャーリイ』今夏公開