映画『ぼくのお日さま』(9月13日(金)より全国公開)のジャパンプレミアが8月19日(月)、テアトル新宿にて開催され、越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、奥山大史監督がそろって舞台挨拶に登壇した。
本作で映画初主演を果たした越山が、緊張した面持ちで、映画を観終えたばかりの観客に「どうでしたか?」と尋ねると、会場は割れんばかりの拍手に包まれ、越山は「ありがとうございます!」とホッとした表情を浮かべる。
本作が演技初挑戦となった中西も、同じく緊張した様子を見せつつ「みんなで頑張って大切に作った映画をご覧いただけて、本当に嬉しいです。ぜひ周りの人にも公開してからお勧めしてください」と呼びかけ、温かい拍手がわき起こる。池松は、そんな初々しい2人の様子を温かく見守り「素晴らしいです。120点でしたね」と微笑む。
ちなみに映画撮影当時、越山は13歳で中西は11歳。現在はそれぞれ15歳と13歳になっており、身長も越山は「10センチ以上伸びました」と語り、中西も「私も5センチくらい伸びました。撮影の時は、越山くんよりちょっと高かったんですけど、すっかり抜かされました」と明かす。
池松は、撮影時をふり返りつつ、いまの2人について「あんまり変わんなくて嬉しいですね。ガツガツしてないんですよ。ノターッとしていて(笑)、普通はオーディションを勝ち上がってきた子ってハツラツとしていて、我が強いんですけど(笑)、なんか本当にのんびりしてて、そのへんが好きです」と語り、撮影時は2人と顔を合わせていなかったという若葉も「映画で見た素敵な佇まいがいまもあるので、これからどんどん活躍していくんだろうなという印象です」と2人を称える。
奥山監督は、オーディションを経て選んだ越山について「いまも身長こそ大きくなって、目線が撮影の時と全然違うのでびっくりしてしまうけど、独特のテキトーな感じ(笑)、少し抜けている感じが変わってなくてホッとしています」と語る。一方、中西の起用に関しては、フィギュアスケートができる女優ということで事務所経由でオーディションを行うも、なかなか適した女優に出会えず、スケートリンクに張り紙を掲示して募集した結果、中西から応募があったという経緯があり「普通ではできない出会いをできたので幸せだったなと思います」と幸運な出会いをふり返る。
子どもの頃から子役としてこの世界に身を置いてきた、池松と若葉。越山や中西の年齢の頃はどんなことを考えていたのか?を尋ねると、池松は「今回、いろいろ考えて自分が2人の年代の頃<どういうふうに現場にいたかな?どういうことが楽しくて、どういうことが嫌だったかな?>と向き合ったけど、まあ参考にならない…(苦笑)。(自身は)子役子役してない子役で、子ども扱いされるのを極度に嫌っていました。だから、自分がそうだった分、各々のパーソナルなものと向き合えば大丈夫かなと思いながら、撮影してました」と述懐。改めて2人について「宝石のような輝きをこの映画に残してくれて、本当に2人とも才能があって控えめで…。このまま真っすぐ大人になってほしいし、僕のような俳優にはならないでほしい(笑)」と冗談めかして語り、会場は笑いに包まれた。
一方、大衆演劇で活躍してきた若葉は「(自身が2人と同じ年頃の頃は)いかに稽古をさぼるかっ、てことばかり考えてましたね」と告白。当時は俳優になろうと思っていなかったそうで「どうやったら役者にならずに済むか考えてた気がします」とも。今回、映画の中の2人を見て「才能をすごく感じましたし、(中西さんは)初演技ということで、そういうものに出会えるということがあんまりないので、光栄です」と喜びを口にした。
また、池松は越山の意外な素顔に関しても言及。「本当にマイペースで、(撮影が行われた)北海道でも岩手でも、朝が苦手で、雪の中を裸足で降りてくるんです。靴を忘れて。(同じことを)カンヌでもやってました。すごい才能を持った方だなと思います」と話すと、越山は「朝寝坊をしているんで、脳みそが回っていなくて…」と苦笑交じりに語った。そんな様子を見て、若葉は「寝坊の話をしてるのにカッコいい(笑)!」と語るなど、すっかり先輩俳優陣の心をつかんだ様子だった。
奥山監督自身は、7年ほどフィギュアスケートを習っており、いつかスケートを題材にした映画を撮りたいと考えていたそう。池松、そして本作の主題歌にもなっているハンバート ハンバートの楽曲「ぼくのお日さま」と出会ったことで、映画として動き出したと明かす。「これまで日本映画でしっかりとスケートを扱っているのは、倉本聰さんの初監督作『時計 Adieu l’Hiver』くらい。(フィギュアシーンの)吹き替えが効かないし、氷の上に立つだけで難しいので。経験したことのある2人と真剣に練習を重ねてくださる池松さんが出演してくださることで、実現できたのかなと思います」と感謝を口にした。
池松は、本作でスケートに初挑戦。「俳優をやってると、いろんなことに挑戦する機会があるけど、比べ物にならないくらい、一番難しかったです。氷の上に立ったこともなかったので。半年間練習しましたが、最初の3か月は立っていられなくて、ずっと先生に手を引っ張ってもらい、未来のオリンピアンたちに笑われながら、3秒に1回くらいこけていました(苦笑)」と苦労をふり返る。
そんな池松の上達ぶりについて、アイスダンスの大会出場経験もある中西は「(もともと)スケートをやっていた俳優さんかと思いました。経験がなかったと聞いてびっくり。こういうスケートのコーチいるなって思いました」と語り、この言葉に池松は「何回か、高いお寿司を食べさせてますから(笑)」とニンマリ。越山も「一回、練習でお会いしたんですが、その時から撮影の時までにメッチャ上手くなってて、すごいなと思いました。大人になってからやるのは難しいんですけど」と驚きを口にしていた。
奥山監督は自らカメラマンも務めており、スケートを滑りながら3人の姿をカメラに収めており、池松は「自分で滑りながら、カメラを担いで撮れるカメラマンは、世界中探してもいないと思います。絶対に良いものが撮れるとわかっていたので、足を引っ張っちゃダメだと泣きながら練習しました」と語った。
この日は、映画にちなんで「あなたにとってのお日さまは?」というお題で登壇陣がフリップに描いた答えを発表。越山は「仲間」と書かれたフリップを手に「一緒に活動してる仲間、一緒にレッスンしてる仲間、お友達…そういうひとたちがいないと僕は成り立たないです」と仲間への思いを熱く語る。中西は「友達」と書いたフリップを掲げ「私は親や家族に言えないことを友達に頼って全部言っちゃってます。友達がいなかったら悲しくなります。家族もそうですが、友達も支えてくれています」と語る。
そして、池松と若葉の答えは共に「お客様」。池松は「大人として120点の答えを出しにいったんですけど、まさかかぶるとは…」と驚いていたが、若葉は最初「池松さんが何て書くのかと考えて、感性が研ぎ澄まされて、こういうことに」と語っていたが、その後「こういうのが得意ではないんで(苦笑)、『どうしよう…?』と思ったら、池松さんが完璧な言葉を書いていたんでカンニングしました」と告白し、会場は笑いに包まれていた。
そして、奥山監督の答えは「撮影の日々」。監督は「『ぼくのお日さま』という曲に出会い、このままタイトルに使っていいかと悩んでいた頃、(主人公の)タクヤにとってのお日さまは“思い出”だろうと思いました。自分にとって、いま一番大切な思い出は撮影した日々です」と明かした。
舞台挨拶の最後に越山は「この映画がみなさんの心にいつまでも温かく残り続けてくれたらいいなと思います」と語り、奥山監督は「みなさんが周りの人に『良い映画観たよ』と伝えていただけることで、劇場に足を運ぶ方が増えて、少しでもこの映画が長く劇場で見られるようになれば…。冬に見てもらえるといい映画だなと思うので、冬まで劇場にかかっていたら僕たちにとってすごく幸せなことだなと思っています。お力添えをお願いします」と呼びかけ、会場は再び温かい拍手に包まれた。
本作は、田舎街のスケートリンクを舞台に、吃音のあるホッケーが苦手な少年、選手の夢を諦めたスケートのコーチ、コーチに憧れるスケート少女の3つの心がひとつになっていく・・・雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない小さな恋たちの物語が描かれる。映画『ぼくのお日さま』は9月6日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開。9月13日(金)全国公開。
ストーリー
吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤ(越山敬達)は、「月の光」に合わせフィギュアスケートを練習する少女・さくら(中西希亜良)の姿に、心を奪われてしまう。ある日、さくらのコーチ荒川(池松壮亮)は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習をつきあうことに。しばらくして荒川の提案から、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることになり……。
『ぼくのお日さま』
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩ほか
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
主題歌:ハンバート ハンバート
本編:90分
配給:東京テアトル
(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS
公式サイト:bokunoohisama.com
公式X:@bokuno_ohisama
公式Instagram:@bokuno_ohisama
9/6(金)~9/8(日)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて3日間限定先行公開
9/13(金)より全国公開
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