『ぼくのお日さま』トークイベントにピースの又吉直樹、ハンバート ハンバートの佐藤良成、奥山大史監督が登壇

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映画『ぼくのお日さま』の試写会が、ISETAN SHINJUKU ART WEEK特別企画として8月27日(火)に東京・テアトル新宿にて開催され、上映後のトークに奥山大史監督、本作のタイトルの由来となった主題歌「ぼくのお日さま」を提供し、音楽も担当したハンバート ハンバートの佐藤良成、ピースの又吉直樹が登壇した。

又吉が、14~5年前からのハンバート ハンバートのファンだったということから実現した今回のイベント。又吉は「もともと、この『ぼくのお日さま』という曲もすごく好きでした。僕は子どもの頃から人前で話すのが苦手で、頭の中に言いたいイメージがあっても、言語化するのが苦手で、考えているうちに会話が流れていって『しゃべれなかった…』ということが多かったんです。そういう感覚をあの曲を聴いた時に思い出して、そのタイトルが付いた映画ということで“言葉”という部分に注目して見ていたら、言葉だけでは表現できない感情が、映像で表現されているのを感じました」とコメント。

さらに、「少年が、アイススケートをやっている少女に夢中になるけど<少女に夢中になっているのか?アイススケートに夢中になっているのか?>どちらでもあって、どちらでもない――言語化できない、なんとなく名付けてはいけない感情だなと思ったし、少女のコーチへの感情も簡単に名前をつけてしまうと、それ以外のものがなくなってしまう感情なんですよね。そういう複雑だけど、すごくよくわかる、言葉にできない感情が物語と映像で表現されていました」と本作を称賛。「映画を観終わって、監督が『ぼくのお日さま』という曲を選んだ理由がわかった気がしました」と、イベント冒頭から熱い感想を語った。

7年間、自身もフィギュアスケートをやっており、その実体験を基にスケートを題材とした映画を構想していたという奥山監督。だが当初、脚本づくりは難航したという。作業を進めていく中、「ただの思い出再現ムービーにしかならないぞ…」と思っていた時に聴こえてきた曲が、2014年に発表されたハンバート ハンバートの8thアルバム「むかしぼくはみじめだった」に収録されている「ぼくのお日さま」だった。

同楽曲について、奥山監督は「その時の鬱屈した気持ちに寄り添ってくれた気がしました。最初は『これを映画にしよう』というつもりはなかったんですが、リピートして聴いているうちに、どんどん、その時に書いていたプロットが、曲に寄っていき、気づいたら『これをエンドロールに流さないといけない』という使命感に駆られるようになりました(笑)。ある程度、書けたところでハンバート ハンバートの佐藤さんと(佐野)遊穂さん宛てに、これまでの経緯と『この曲を主題歌と映画のタイトルとして使わせていただきたい』とお手紙を書きました。1か月くらいして『(主題歌もタイトルも)どちらも快諾します』とお返事をいただけた時は、すごく嬉しかったです」と振り返った。

その時のやりとりについて、佐藤は「手紙も嬉しかったんですけど、一緒に送ってくださった『僕はイエス様が嫌い』を見たら、本当にすごく良くて、『この監督とは絶対に一緒に何かやりたいな』と思いまして『もちろん、喜んで』という感じでした」と述懐。

又吉は「奥山監督が、そこでちゃんと手紙を書くというのがすごいなと思います。イメージとか感覚だけを拝借しようって人もいるかもしれないけど、本人にちゃんと一度ぶつけてみようという誠実さ。作品に対する覚悟が決まっているなと思います」と称えた。その言葉に、佐藤も「すごく嬉しかったです。言ってみれば、アイディアなんて、いちいち言わないで勝手に拝借するのがほとんどです。なのに正攻法で真正面から言ってくれたのが嬉しかったです」とうなずいた。

ちなみに、佐藤は主題歌だけでなく劇中の音楽も手掛けているが、実はこれは佐藤本人からの提案だそうで「こっちから押しかけて『よかったら音楽も作りますけど』と言いました」と明かした。

奥山監督は「湖のシーンで、ゾンビーズの『Going Out of My Head』が流れるんですけど、脚本では別の曲になっていたんです。『ぼくのお日さま』の歌詞で『ロックがぼくを…』ってありますけど、『この“ロック”って何なんでしょう?』という話し合いから、佐藤さんがいろんな曲を提案してくださって、僕が考えていたよりももっと良いのがあったので『こっちでいきたいです』と言って『Going Out of My Head』に変えました」と、楽曲の提供のみならず、様々な部分で佐藤の提案が活かされていると明かし、感謝を口にした。

又吉は、映画の中の好きなシーンとして、劇中のアイスホッケーのシーンで、主人公のタクヤ(越山敬達)がゴールキーパーをやるも、上手くできない場面に触れ「僕は子どもの頃、サッカーをやってたんですけど、3年生で始めて、スパイクも持っていなかったりして、なかなかできなくて…。みんなが順番にキーパーをやるんですけど、(タクヤがキーパーをやるシーンを)見ていて苦しくなりました…(苦笑)。あの不安定な気持ち、どうしようもない心細いところに、自分が夢中になれるものを見つけるという流れがすごくよくわかりました。それは『ぼくのお日さま』という曲の中の“ロック”みたいなもの、僕にとっては音楽や本、お笑いだったんだと思います」と、自らと重ね合わせながら語った。

こうして観客の前で奥山監督と語り合うのが初めての機会となった佐藤は、改めて完成した映画の感想を問われると「うまく言えないよ…(苦笑)」と照れくさそうに笑みを浮かべつつ、「本当に良い映画だと思います。一番好きなシーン、毎回『いいな』と思うのは、あるシーンで、ガラス越しにタクヤを映すところ――あの会場のガラスに水玉模様があるんですよね。そこがすごく好きです!水玉模様のところでボケっとタクヤが映っているところで毎回ギューっとなります」と語り、又吉も「良いですよね。僕はその後の、放課後のシーンも好きです」と、好きなシーンや感想を語り合ううちに、トークイベントは終了。

最後に又吉は、観客に向けて「素晴らしい映画なので、ぜひ友達に伝えていきたいと思いますので、ぜひ一緒に伝えていきましょう」と呼びかけ、佐藤も「一回だけでなく、何回見ても良いので、ぜひ布教してください!」と語った。

そして奥山監督は、「佐藤さんとこうやって、ちゃんとみなさんの前でお話ができて嬉しかったですし、又吉さんから伺えた感想もとても嬉しかったです。素敵な時間をありがとうございました」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。

『ぼくのお日さま』は9月6日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開、9月13日(金)全国公開。また、ハンバート ハンバートの佐藤が手掛けた「ぼくのお日さま」オリジナル・サウンドトラックは、9月11日(水)発売となる。

ストーリー
吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤ(越山敬達)は、「月の光」に合わせフィギュアスケートを練習する少女・さくら(中西希亜良)の姿に、心を奪われてしまう。ある日、さくらのコーチ荒川(池松壮亮)は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習をつきあうことに。しばらくして荒川の提案から、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることになり……。

『ぼくのお日さま』
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩ほか
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
主題歌:ハンバート ハンバート
本編:90分
配給:東京テアトル
(C)2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

公式サイト:bokunoohisama.com
公式X:@bokuno_ohisama
公式Instagram:@bokuno_ohisama

9月6日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開
9月13日(金)全国公開

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