相米慎二監督の作品で、北米でもヒットを記録している『お引越し』と、香港国際映画祭ワールドプレミアで上映された『夏の庭 The Friends』の4Kリマスター版が、12月27日(金)より全国順次公開される。この凱旋公開を記念して、両作の特別ポスタービジュアルが解禁された。
1993年、第46回カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門に選出された『お引越し』は、両親の別居から家族の危機に揺れる小学6年生の少女の心を躍動感たっぷりに描いた作品。そして『夏の庭 The Friends』(94年公開)は、世界十数カ国で翻訳出版されている湯本香樹実の小説を三國連太郎の存在感と少年たちの瑞々しい演技で映画化。ある老人と少年たちの交流から「死」と「生」を考えさせられていく、ひと夏の成長譚だ。
今回解禁された『お引越し』のビジュアルでは、家族三人がその不安定な関係を表すかのような三角形の食卓を囲む。目も合わさずに黙々と食事をする父・ケンイチ(中井貴一)と母・ナズナ(桜田淳子)。その間にはさまれたレンコ(田畑智子)は「大人は、勝手」とでもいうような表情で立ち上がり、必死になにかを訴えているようだ。自宅にいながら、どこか異世界にいるかのように広がる背景も彼らの心境のちぐはぐさを思わせる。
一方、『夏の庭 The Friends』のビジュアルは、3人の少年が夏の間通い続けるおじいさん(三國連太郎)の家とその庭が舞台。少年たちとおじいさん、そして少年たちの担任の先生(戸田菜穂)が集い、ほのぼのとした雰囲気を感じさせるが「この夏が、ずっと続くと思ってた。」というコピーから、この穏やかなひとときが、彼らにとってかけがえのないものになることがうかがえる。
『セーラー服と機関銃』『台風クラブ』など数々の作品を手掛けてきた相米監督。中でも、米ニューヨークタイムズにて「日本映画最高傑作のひとつ」と評された『お引越し』は昨年、第80回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(Venice Classics)で最優秀復元映画賞を受賞。その後フランスで劇場公開されると、当初の数館から50館以上に公開拡大の快挙を成し遂げた。
さらに今年8月に劇場公開された北米でも好スタートを切ると、各地から声がかかり30以上の劇場や施設へ公開が拡大され、「田畑智子の圧倒的な存在感(Metrograph)」「相米監督は青春映画において、ほかに類をみないほど、痛々しくも感動的な瞬間をつくりだす(ScreenSlate)」といったレビューも続々と届いている。
なお今回、北米配給Cinema Guildからは、以下のコメントも到着している。
配給会社CinemaGuild コメント
相米慎二の『お引越し』のアメリカ・カナダでの公開は大成功しています。相米監督の映画のもつ引力は、観客のだれしもを惹きつけ、同時に多くの人に、彼が近年で最も独創的で重要な映画作家の一人であり、独自の方法論と映画制作の哲学を築き上げた人物であり、それこそが彼の生き方だったと感じさせます。私たちは、彼の映画をより多くの人々に届けるお手伝いができたことを、これ以上ない誇りに思います。
※Cinema Guild
50年以上の歴史を持ち、ニューヨークを拠点とするインディペンデント映画、ドキュメンタリー映画の配給会社。これまでにアッバス・キアロスタミ、アニエス・ヴァルダ、ホン・サンスなど著名な作家たちの作品を配給。
『お引越し 4Kリマスター版』作品情報
ストーリー
両親が別居。はじめは家が2つできたと喜んだレンコも、次第に自身を取り巻く変化の大きさに気づかされていく――
京都に住む、明るく元気な小学6年生、レンコ。父ケンイチが家を出て、母ナズナとの二人暮らしが始まった。ナズナは新生活のための規則を作るが、変わっていこうとするナズナの気持ちがわからない。レンコは、離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したり、果てにはかつて家族で訪れた琵琶湖への小旅行を勝手に手配する…。
出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶
監督:相米慎二
脚本:奥寺佐渡子、小此木聡
原作:ひこ・田中
撮影:栗田豊通
1993年/124分/日本
(C)1993/2023讀賣テレビ放送株式会社/ひこ・田中「お引越し」
『夏の庭 The Friends 4Kリマスター版』作品情報
ストーリー
「死」への興味から、奇妙な老人と関わりを持った小6トリオのひと夏の成長記。
木山、河辺、山下の小6トリオは、祖母の葬式に出席した山下の話を聞き、「死」に興味を持ちはじめる。近所に住む一人暮らしのおじいさんがもうすぐ死にそうだ、と聞きつけた3人は、家を張り込むことに。はじめは少年たちを追い返そうとしたおじいさんも、次第に彼らを受け入れ始める。そんなとき、ひとりぼっちのおじいさんのために、3人はある計画を思いつく…。
出演:三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、戸田菜穂、笑福亭鶴瓶
監督:相米慎二
脚本:田中陽造
原作:湯本香樹実
撮影:篠田昇
1994年/113分/日本
(C)1994/2024讀賣テレビ放送株式会社 (C)1992湯本香樹実/新潮社
配給:ビターズ・エンド
公式X:@somaifilm_4k
12月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開