1999年「イーちゃんの白い杖-100年目の盲学校」(第8回FNSドキュメンタリー大賞特別賞)、2010年「いおりといぶき-私たちが生まれた意味」(第19回FNSドキュメンタリー大賞優秀賞/世界子どもの権利賞グランプリ)でテレビ放送されたドキュメンタリー番組が、映画『イーちゃんの白い杖』として東京・ポレポレ東中野にて6月に上映が決定、いよいよ全国進出となる。
2018年11月10日。テレビ静岡(フジテレビ系列)は、開局50周年を記念して、本作を静岡県内3映画館で同時公開した。当初、上映は2週間の予定であったが、連日観客が絶えず、1館は6日、1館は2週間続映となった。映画館の副支配人は言う。「上映後、自然と拍手が沸き起こる映画は、年に1本あるかないかです」と。その後も、映画館のない街のホールや保育士・教師を目指す学生を対象にした講義、中高一貫校、病院…「自主上映会を開きたい」との申し込みが後を絶たない。観客からは「元気・勇気をもらいました」「本当の幸せって何か、生きる意味・大切さを教えてもらいました」「障がい者の映画と言うより姉弟の絆、家族の絆を感じる映画です」との声が寄せられている。
映画化のきっかけは2016年に起きた神奈川県相模原市の殺傷事件。重度障がい者が大勢傷つけられ、犯人は「生きている意味がないから」とさえ語った。
本当にそうなのでしょうか―この世に、生きている意味がない人などいるのでしょうか―この映画は問いかける。(音声ガイド・字幕ガイド付きUDCast対応)
<小長谷家の人々>
小長谷唯織(こながや・いおり)
1990年8月5日生まれ
あんま・マッサージ・指圧師 歌・ものまね好き!
小長谷息吹(こながや・いぶき)
1992年5月10日生まれ
障がい者支援施設に平日通所 音楽・相撲・ニュース好き!
小長谷和美(こながや・かずみ)
1963年8月24日生まれ
看護師・糖尿病療養指導士 フットケア指導士、勉強熱心
小長谷卓也(こながや・たくや)
1961年4月2日生まれ
介護士・サッカー・ゴルフ好き 穏やかな一家の大黒柱
小長谷藤乃(こながや・ふじの)
1937年4月29日生まれ
卓也の母 和裁が得意 70代後半まで福祉施設で働く
小長谷修一(こながや・しゅういち)
1937年9月27日生まれ
卓也の父・息吹の食事・散歩 学校の送り迎えを長年担当
語り・春風亭 昇太さんコメント
この映画は、障がいというより家族・兄弟とは何かを改めて考えさせられました。特に姉弟のシーンはダメです。自宅で映画映像を見た時からダメで、そのうち慣れるかと思いましたが慣れませんでした。ナレーションを収録している間も、そのシーンが来ると見ないようにしていました。抱えるものは人それぞれ違いますが、障がいがあろうがなかろうが、根底は変わりません。いま、核家族化で離れて暮らしている方も多いと思いますが、家族のありがたさ、つながりをこの映画で感じてもらえたらうれしいです。唯織と息吹、2人には、あまり頑張らないで、これからを楽しく生きていってほしいと心から思います。とても素敵なドキュメンタリー映画に仕上がっていますので是非、劇場に足を運んで下さい。私の声も意外と素敵です!
春風亭 昇太
1959年 静岡市清水区(旧清水市)生まれ。
1982年 春風亭柳昇に入門、前座名・昇八。
1986年 二ツ目昇進、春風亭昇太となる。
1992年 席亭推薦による抜擢で真打昇進。
2000年度第55回文化庁芸術祭(演芸部門)大賞受賞
2016年 「笑点」6代目司会者となる。
新作、古典問わず高い評価を得ている実力派真打。役者としても活躍し、ミュージシャンとのライブも意欲的に行なうなど、ジャンルを越えて積極的に活動している。映画ナレーションは初。
音楽・川口 カズヒロさんコメント
目の不自由な姉弟のドキュメンタリー映画に歌を書く。プレッシャーもありましたが、イーちゃんと橋本監督が歌をとても気に入ってくれて、作って良かったと心から思っています。漠然と前向きな詞や応援歌は、私が健常者である以上、同情や上から目線に聞こえかねないと思い、主人公の強さや自分の弱さと向き合いながら作りました。
主題歌「I―あい―」は主人公「いおり」「いぶき」「生きる」「意味」の頭文字、「私」「目(eye)」「愛」…この映画の最大のテーマを一文字で表せる言葉にしました。歌詞に出てくる数字の「1」に似ているのも理由です。そして、タイトルの「 」にも「守られている」「1人ではない」という意味を込めました。映画の意味が心に届く―私の音楽がその道標になれたら本望です!
川口 カズヒロ
1981年 富士市生まれ。
1999年 スーパーサンダースのドラマーとして活動開始。
2007年 ボーカル転身、東京でロックバンドDATSUN320を結成。
2008年 1stアルバム『ハロー、1/100の君よ』で全国デビュー。
2011年 福島県南相馬市に支援物資を寄付。避難所でライブ実施。
その後、3年半バンド活動を休止するも、2016年9月再開。CMソングライターとしても活躍中。
監督・橋本 真理子さんコメント
-唯織と息吹 この出会いが、私を変えました-
障がい者にカメラを向けることがタブーとされていた20年前。盲学校100周年のニュース取材中、目の前を駆け抜けたのがイーちゃんです。「この子は感性が違う」と直感し、同時に弟が重度の障がい児だと知ります。
本当は1回目の番組で終わるはずでした。でも、唯織と息吹はこの先どう生きるのか、生きやすい社会になるのか心配でした。障がい児・医療的ケアが必要な子たちの教育、障がい者雇用、旧優生保護法。正直この20年で新たな課題も浮き彫りとなり、何が解決したのか、答えに苦しむのが現状です。
更には、2016年、神奈川県相模原市で重度障がい者を狙った殺人事件が発生、許せませんでした。
人は年をとれば目も悪くなり、歩くのも億劫になる…誰もが、障がい者になると私は思います。唯織も息吹も少し早かっただけ。2人が生きやすい社会は、私たち自身が生きやすい社会になるはずです。
障がい者が隠れて生きる社会はやめにしたい。障がいがあろうがなかろうが、誰にも生まれてきた意味がある―この思いを伝えたくて映画にしました。
橋本 真理子
1970年 静岡県御殿場市生まれ。
1993年 テレビ静岡入社。沼津支社報道、静岡市政、静岡県政記者を経て、
2007年 ニュースデスク、ニュース編集長を担当。
2018年7月 シニアプロデューサー。
この間、ドキュメンタリー番組を数多く手掛ける。
制作番組 主な受賞歴
1999年「イーちゃんの白い杖-100年目の盲学校-」第8回FNSドキュメンタリー大賞 特別賞
2000年「笑顔が戻るまで-定時制高校からのメッセージ―」前島賞
2001年「こちら用務員室-教育現場の忘れ物-」第10回FNSドキュメンタリー大賞 グランプリ
2003年「アンニョンハセヨ-朝鮮学校は今-」前島賞 奨励賞
2007年「章姫-父が残したイチゴ-」第23回農業ジャーナリスト賞 特別賞
2010年「いおりといぶき-私たちが生まれた意味-」世界子どもの権利賞2011グランプリ
第19回FNSドキュメンタリー大賞 優秀賞
厚生労働省「児童福祉文化財」
2012年「いのちの乳房-再建に挑んだ女神たち-」 第54回科学技術映像祭 文部科学大臣賞
第50回ギャラクシー賞 奨励賞
イントロダクション
生まれつき目が見えないイーちゃん。本名小長谷唯織(こながやいおり)さんは20年前、県立静岡盲学校で白い杖の使い方や点字など、視覚障がい者として生きる基本を学んでいた。
触って、なめて、においを嗅いで。目が見えない世界は想像を超える発見があった。だが成長するにつれ「なぜ自分だけ違うのか」不思議に思うようになる。
そして、大勢友達がいた地元の保育園とは違い、同級生がいないさみしさを実感する。障がいを持った者同士、分かり合えると信じ、中学生になったイーちゃんは、東京の盲学校へ進学した。
しかし、ここで経験したのは、いじめ。大好きなピアノで気持ちを整理しようとするが、心が追いつかなかった。「現実から逃げないでほしい」と厳しく接する母。
ピアニスト、歌手、作家…夢も破れ、何もかも嫌になった。障がいがあろうがなかろうが悩みは同じだ。「学校にいても家にいてもつらい」「死にたい」とも考えた。でもそばにはいつも2歳下の弟・息吹(いぶき)がいた。重度の障がいで、食べることも歩くこともトイレにもいけない弟。
入退院を繰り返し、手術を何度経験しても前に進む弟。イーちゃんは、自分の甘さに気づき、自殺を踏み止まる。
「私の弟だから強いんだ!」障がい者が生き、働く。壁はいくつも乗り越えなければならない。しかし、乗り越えようとする強さがあれば、必ず幸せはやってくる。
作品タイトル:『イーちゃんの白い杖』
語り:春風亭昇太
音楽:川口カズヒロ(DATSUN320)
監督:橋本真理子
撮影:杉本真弓
編集:大澤裕也
効果:山川英夫
デザイン:森部道子
プロデューサー:永井 学
配給協力:浜松市民映画館
配給・制作:テレビ静岡
公式HP:http://www.sut―tv.com/ichan/
2019年6月 東京・ポレポレ東中野で上映決定