数々の名作ドラマを執筆し、日本のホームドラマの礎を築いた脚本家・向田邦子によるドラマシリーズ「阿修羅のごとく」(1979~80年)がリメイクされ、2025年1月9日(木)よりNetflixで独占配信されることが決定した。物語の中心となる四姉妹を演じるのは宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。
エッセイも多数発表し、小説では直木賞を受賞するなどキャリアの最盛期にあった1981年、飛行機事故によって突然、その生涯の幕を閉じた向田邦子。だが彼女の影響は後世に広く及び、没後40年を経てもなお、その人気はいまだ陰りを見せない。
そんな数ある向田作品の中でも、最高傑作として名高いドラマシリーズ「阿修羅のごとく」を、かつて仕事をともにしたTBSドラマの黄金期を支え、ホームドラマの名作を数多く手がけてきた八木康夫(「パパはニュースキャスター」「団地のふたり」)が企画プロデュース。そして、かねてから敬愛する脚本家の一人として向田の名前を挙げていた是枝裕和(『万引き家族』『海街diary』)が監督・脚色・編集を務める。
ときに争い、口汚く罵り、泣きわめき、かと思えば、抱き合って高らかに笑う。女は阿修羅だ―。
向田が描いた「阿修羅のごとく」は、年老いた父の愛人問題をきっかけに大きく揺らぎ、四姉妹それぞれが抱える葛藤や秘密が次々とあらわになる。恋愛観も違えば、生き方も違う4人の姉妹が、対立し、感情をぶつけ合いながら、心底では互いを気にかけ、やがて手を取り合う、その泣き笑いが細やかに描かれる人間ドラマだ。
本編で描かれるのは、原作と同じく1979年が舞台。宮沢が夫を亡くし、活け花の師匠として生計を立てる長女・綱子を、尾野が会社員の夫や子どもたちと一見平穏に暮らす専業主婦の次女・巻子を、蒼井が図書館で司書を務める、恋愛に不器用な三女・滝子を、広瀬が喫茶店のウエイトレスで、ボクサーの卵と同棲する四女・咲子を演じる。
「みんな、ひとつやふたつ、うしろめたいとこ、持ってるんじゃないの」鋭い人間洞察から生まれたセリフの数々が浮き彫りにするのは、人間の愚かさ、そして愛おしさ。人間の本質を突く普遍的なテーマを備えた物語が是枝により脚色され、オリジナルを尊重しつつも、女性の自立に焦点を当てた、現代にふさわしい新たな「阿修羅のごとく」が誕生する。
今回解禁されたティーザーアートは、四姉妹の一見平穏な表情の裏に隠された“秘密”が垣間見えてくるような、なんとも言えないヒリついた空気感が漂ってくるビジュアル。あわせて解禁となったオープニング映像には、昭和レトロなデザインとスタイリッシュな音楽にのせて、憂いや穏やかな表情から感情を剥き出しにする静と動の四姉妹が映し出される。彼女たちの心の奥底に秘められた葛藤や本音が露わになる時、物語はどう展開していくのだろうか。
昭和が舞台でありながらポップな世界観を生み出している本作には、撮影に瀧本幹也(『そして父になる』『海街diary』)、衣装デザインに伊藤佐智子(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、フードスタイリストに飯島奈美(『海街diary』「舞妓さんちのまかないさん」)、音楽にfox capture plan(ドラマ「カルテット」「コンフィデンスマンJP」)ら、錚々たるスタッフが勢揃いした。
なお今回、監督・脚色・編集の是枝裕和と、企画・プロデュースの八木康夫から寄せられたコメントは以下の通り。
コメント
監督・脚色・編集/是枝裕和
向田邦子さんの『阿修羅のごとく』は、女性たちの人物描写が素晴らしいです。僕がテレビドラマに夢中になった1970年代、脚本家といえば向田さんと倉本聰さん、山田太一さんの3人が頂点でした。市川森一さんを加えれば、それがトップの4人。幸いなことに倉本さんや山田さんとはお会いすることができて、創作についていろいろお話をしましたが、残念ながら向田さんとはできなかった。だから今回『阿修羅のごとく』をリメイクすることは、向田邦子とは何だったのかと、より深く理解するためのアプローチだったのかもしれません。自分なりの決着の付け方とでも言うんでしょうか。
会話で交わされる表面上の毒と、その背後に隠された愛、その両方があるから向田邦子のドラマは豊かなんです。それは人を描くうえで大事なところだし、言葉になっているセリフを伝えるだけでは芝居じゃない。今回、四姉妹を演じた4人はみんなそれができる人たちだったので、撮っていて面白かったです。含みの部分をちょっとしたことで出せるんですね。4人も演じていて楽しそうでした。みんなタイプはバラバラだけど、全体としてバランスはすごくよかったですね。この4人だったから、向田邦子の脚本を立体化することができたんだと思います。
企画・プロデュース/八木康夫
僕が向田邦子さんと、ご一緒させていただいたのは1978年の連続ドラマ『家族熱』の時です。当時入社5、6年目の新人ADの僕からすれば、向田さんは雲の上の存在でした。全14回の最後の原稿を取りに伺った時、「僕が一人前になったら、お仕事をお願いできますか?」とお話ししたんです。すると、向田さんは「いいわよ」って。おそらく毎回原稿を取りに来た労をねぎらい、そう言ってくれたんだと思います。
向田邦子さんの没後40年を前に、ずっと心残りだった向田さんとのやりとりを思い出し、改めてシナリオ集や出版されているものを全て拝読し、向田作品は『阿修羅のごとく』に尽きると思い映像化に向けて動き出しました。なによりも大事だと思ったのはキャスティングです。イメージキャストの段階で、四姉妹役にはこの4人しかいないと思い、みなさんに連絡したところ二つ返事で了承をいただきました。それから、是枝監督に快諾いただいて制作にいたります。
時代設定はオリジナルと同様で当時のままですが、是枝さんのお力で今の時代のドラマになったと思います。ドラマにもっとも必要な三要素は、キャラクター、セリフ、ストーリーです。その3つの魅力がすべて詰まった作品ができました。“ディス・イズ・ドラマ”、これこそがドラマだと言って差し支えない作品ができたかなと思います。
ストーリー
ある冬の日。竹沢家の四姉妹が久しぶりに集まった。活け花を教える長女・綱子(宮沢りえ)、専業主婦の次女・巻子(尾野真千子)、図書館で司書として働く三女・滝子(蒼井優)、そしてウエイトレスの四女・咲子(広瀬すず)。滝子の話では、母・ふじと暮らす老齢の父・恒太郎には愛人と子どもがいるという。信じられないとは思いつつ、母の耳には入れないことを誓い合う4人。しかしこの騒ぎをきっかけに、女性たちの日常に潜む、さまざまな葛藤や秘密が明るみに出る。
Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」
出演:宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず
原作・脚本:向田邦子
監督・脚色・編集:是枝裕和
企画・プロデュース:八木康夫
プロデューサー:福間美由紀 北原栄治 田口聖 / 音楽:fox capture plan / 撮影:瀧本幹也 / 照明:藤井稔恭 / 録音:冨田和彦 / 美術:三ッ松けいこ 布部雅人 / 装飾:龍田哲児 羽場しおり / 衣裳デザイン:伊藤佐智子 / ヘアメイク:酒井夢月 / 音響効果:岡瀬晶彦 長谷川剛 / 助監督:松尾崇 / スクリプター:押田智子 / 制作担当:後藤一郎 / ラインプロデューサー:菊地正亮 / 制作プロダクション:分福
製作:Netflix
Netflix作品ページ:https://netflix.com/阿修羅のごとく
2025年1月9日(木)よりNetflixにて世界独占配信(全7話(一挙配信))