カズオ・イシグロ原作の小説「遠い山なみの光」(ハヤカワ文庫)を石川慶監督、広瀬すず主演、二階堂ふみ共演で映画化した『遠い山なみの光』の公開日が9月5日に決定。併せて、新たなキャストとして吉田羊、松下洸平、三浦友和らの出演が発表され、特報と場面写真が解禁となった。

2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など、映画化作品でも高い評価を受ける作家カズオ・イシグロが、1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した長編小説デビュー作品「遠い山なみの光」。自身の出生地・長崎を舞台として繰り広げられる本作は、戦後間もない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー。
また本作は、日本・イギリス・ポーランド合作の3か国共同製作となっており、ポストプロダクションをポーランドで行うなど、ポーランド国立映画大学で映画を学んだ石川監督にとってまさに原点回帰ともなる作品だ。
日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、執筆のため、異父姉の死以来足が遠のいていた実家を訪れる。母の悦子は、長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間を共にする中で、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、佐知子という女性と、その幼い娘の夢だった。
吉田羊が演じるのは、長崎を離れイギリスで暮らす1980年代の悦子役。広瀬演じる1950年代の長崎で暮らす悦子の約30年後を演じる。松下は、悦子の夫で傷痍軍人の二郎役。三浦は、二郎の父でかつては悦子が勤務していた学校の校長であり、悦子が大きな信頼を寄せる緒方役を演じる。さらに日本パートで柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜(子役)の出演も発表された。
また、本作がフランス時間5月13日~24日開催予定の第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選出され、正式出品が決定した。石川慶監督作品がカンヌ国際映画祭に選出されるのは初めてとなる。
カズオ・イシグロ氏も、1994年にクリント・イーストウッドやカトリーヌ・ドヌーヴらと共にコンペティション部門の審査員を務めているが、出品者側として参加するのは初。広瀬は2015年に参加した是枝裕和監督作『海街diary』以来2度目、二階堂、吉田は初参加となる。
この度解禁された特報予告では、「私がついた嘘」という言葉と共に、1950年代長崎の悦子、二階堂演じる謎多き女性・佐知子、そしてイギリスで暮らす1980年代の悦子らの顔が映し出される。そして場面は1980年代イギリスに移り、オーディションで選ばれたカミラ・アイコ演じる悦子の娘・ニキの「なぜイギリスに?」という問いかけに対し、悦子は「パパと出会ったからよ」とあしらうが、娘は「嘘」と鋭く切り返す。一体、だれが何の嘘をついているのか―?
意味深なシーンの断片とともに現れる「彼女たちの、あの夏の記憶」という言葉が、時代と場所を超え交錯する“記憶”の秘密を紐解いていく物語を予感させるミステリアスな特報となっている。
また併せて解禁された場面写真は、1980年代の悦子が英国調のティーカップを持ち遠くを見つめる姿や、1950年代の悦子が昭和の雰囲気の暖簾の前で佇む姿、佐知子のモダンなファッションが映える姿が捉えられており、ミステリアスでどこか不穏な空気が漂う女性たちの様子に期待が高まる写真となっている。


コメント
吉田羊
私演じる悦子は、主にイギリスでの撮影となりました。全編ブリティッシュアクセントの英語台詞は母国語でないもどかしさもありましたが、その不自由さと、言語に向き合った時間がそのまま知らず悦子の血肉になっていたと実感できたことは得難い経験でした。撮影現場では、石川監督と一体となり、複雑に交差する強さと弱さの中に浮かび上がる悦子の本心を手繰り寄せるような日々。それは途方もないようで、優しい作業でした。また今回、カンヌ国際映画祭への正式出品が決まったという報せを聞きとても嬉しく、この先、日本が誇る石川監督の作品が世界中の映画館でかけられる姿を想像しては今から昂揚しています。
素晴らしい日英両チームとご一緒させていただきましたこと、心より感謝申し上げます。皆様にお届けできる日を心待ちにしております。
石川慶監督
ロンドン時代の悦子のキャスティングは、イギリスでの公開も見据えて海外チームとともに進め全会一致で吉田羊さんに決定しました。イギリス訛りの英語の習得のため誰よりも早く現地入りされて、完璧に“30年前に渡英した悦子”としてクランクイン。本読みでのイギリス人スタッフの驚きと敬意に満ちた表情が、その圧倒的な説得力を物語っていました。
松下さんは真摯に芝居に向き合い、次々と新たな表情を見せてくださいました。素晴らしい演技、ぜひご期待ください。
三浦さんには僕の強い希望でオファーしました。役への姿勢、現場での佇まい、そして映画への深い洞察と愛情。そのすべてに学ぶことばかりでした。
カンヌ映画祭出品についてのコメント
石川慶監督
一報を聞いて、まずは心からホッとしました。正直な気持ちです。
この歓びは、これから映画祭に向けて少しずつ実感が湧いてくるのだと思います。
キャスト、スタッフ、関係者の皆さま、長崎の方々、そしてカズオ・イシグロさんに、心から感謝いたします。
本当にたくさんの人の思いが込められた作品です。
その思いが、カンヌを通して世界中に届きますように。
広瀬すず
素直にとっても、嬉しく光栄に思います。ゾクゾク不穏な空気が漂っていて、その作品の空気にちゃんとのまれながら日々お芝居を楽しませてもらった現場でした。まだ私も完成を観れていませんが、監督たちと、この喜び、幸福感を共有できること、何より嬉しいです。
二階堂ふみ
この作品が日本に留まらず世界の方々に観て頂けること、とても嬉しく思います。
あの時代と今を繋ぐ、素晴らしい作品です。情熱を注いだ石川監督、全てのスタッフの方々へ、おめでとうございます!
『遠い山なみの光』
出演:広瀬すず 二階堂ふみ 吉田羊 カミラ・アイコ 柴田理恵 渡辺大知 鈴木碧桜 松下洸平 三浦友和
原作:「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ/小野寺健訳(ハヤカワ文庫)
監督・脚本・編集:石川慶『ある男』
製作幹事:U-NEXT
制作プロダクション:分福/ザフール
共同制作:Number 9 Films、Lava Films
助成:JLOX+ ⽂化庁 PFI
配給:ギャガ
(C)2025 A Pale View of HIlls Film Partners
公式サイト:https://gaga.ne.jp/yamanami/
公式X:@apaleview2025
9月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
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