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これは“映画”ではなく、“現実”―『遠いところ』息子を失ってしまう17歳の母アオイの悲痛な叫びを描く本編映像解禁

遠いところ

映画『遠いところ』(全国劇場にて上映中)より、本編映像が解禁された。

沖縄のコザを舞台に、幼い息子を抱える17歳のアオイが社会の過酷な現実に直面する姿を描き、Variety誌が“貧困にあえぐ日本の性差別を、痛烈に告発する。溝口健二的な現代悲劇。”と称賛した本作は、貧困、格差社会、非正規雇用、若年出産、家庭内暴力など、世界が抱える社会的な問題を突きつける問題作。

6月に沖縄で先行公開され、わずか3館の上映でミニシアターランキング3位にランクイン、7月7日(金)に全国公開を迎えると、再びミニシアターランキング3位に返り咲き、ヒットを記録している。

主人公アオイを演じるのは、昨年『すずめの戸締まり』への出演で話題を呼び、本作が映画初主演となる花瀬琴音。東京出身の彼女が、撮影の1ヶ月前から現地で生活し、“沖縄で生まれ育った若者”アオイを体現する。

アオイの友人、海音には映画初出演となる石田夢実、夫のマサヤには『衝動』(21)の佐久間祥朗が起用され、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地入り、沖縄・コザで実際に体感した生活感溢れるリアルな演技を披露している。

監督は、長編デビュー作『アイムクレイジー』(19)で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮。『遠いところ』は長編3作目のオリジナル作品で、4年に渡り沖縄で取材を重ね脚本を執筆、全編沖縄での撮影を敢行。日本公開に先立ち、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品、約8分間のスタンディング・オベーションを受けた。

さらに、第23回東京フィルメックス[コンペティション部門 観客賞受賞]、第44回カイロ国際映画祭[インターナショナル・パノラマ部門]、第53回インド国際映画祭(ゴア)[シネマ・オブ・ザ・ワールド部門]、ヨハネスブルグ映画祭など、海外映画祭で高く評価されている。

今回解禁されたのは、アオイが幼い息子、健吾(長谷川月起)と引き離されてしまうシーンの本編映像

働きもせず酒に溺れるに夫マサヤ(佐久間祥朗)と健吾との生活を支えるために年齢を偽ってキャバクラで働いていたアオイ。だが、突然のガサ入れで警察沙汰となり働けなくなり、いざという時のために貯めていた“へそくり”も夫に持ち出されてしまう。拍車をかけるかのようにマサヤが起こした暴力事件で多額の示談金が必要となってしまい、仕方なく義母の由紀恵(松岡依都美)に健吾を預けたアオイは、心身を削りながら生活費を稼いでいた。

遠いところ
遠いところ

映像は、疲れ果てたアオイが仕事から帰宅した場面から始まる。道には合羽を着た男が立ち、見知らぬ人々が家の中の様子をうかがっている。ただならぬ気配に慌てて玄関に駆け寄ったアオイが「なにや?」と問う。奥からひとりの女性が健吾を抱いて現れると、「新垣さん、健吾君、一旦預かりましょうね」告げる。「なんでよ?」と戸惑うアオイの横を、児童相談所の職員たちは息子を連れて行く。その姿を玄関に現れた義母の由紀恵が言葉なく見つめている。

雨が降り始め傘を差した職員たちを追ったアオイは、「ちょっと待ってよ。いいよ。大丈夫。ねえ待って」と健吾に手を伸ばす。更に「待って、健吾」と追いすがるが「大丈夫だから」と2人がかりで止められてしまう。その視線の先には健吾が大好きなぬいぐるみが見える。「健吾、待ってよ。ねぇ、待ってよ」、心の支えである息子と離れ離れになってしまうアオイの悲痛な叫びが心を揺さぶる内容となっている。

ただ「普通に生きたい」と願いながらも、社会の苛酷な現実に追いつめられ、最愛の息子まで失ってしまうアオイは、どんな未来を選ぶのか。沖縄から日本、そして世界へと放たれる強烈なメッセージを、ぜひ劇場で受けとめたい。

『遠いところ』は、全国劇場で公開中。

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