昨年のサンダンス映画祭のオープニング作品として注目を浴び、SXSW映画祭ほか、各国の映画祭で絶賛され、8月30日(金)に待望の公開がされた映画『ブラインドスポッティング』。
本作はバラク・オバマ元アメリカ合衆国大統領が『ROMA/ローマ』『ブラックパンサー』『ブラック・クランズマン』と並び2018年ベストムービーに選出した作品としても話題を集め、ヒスパニック系白人のスポークン・ワード・アーティスト、教育者、舞台脚本家であるラファエル・カザルと、ブロードウェイミュージカル「ハミルトン」で脚光を浴びトニー賞を受賞、黒人ラッパー兼俳優ダヴィード・ディグス、ベイエリアの高校で出会い、共にフリースタイル・ラップをしながら育った2人が脚本・主演を担当した本作は友情の話であり、オークランドを舞台にした人種の違う者や貧富の差がある者同士が混在することによって起こる問題を描いた物語。お互いを見つめた時に、如何に全体像が見えずに色々なものを見落としているかということを問いかける。
この度の公開を記念して、メディアを中心にタレント・ミュージシャン・国際ジャーナリストとして幅広く活動する、モーリー・ロバートソンさん登壇のトークイベントが開催された。
日時:8月30日(金)18:30~ 上映前舞台挨拶
会場:新宿武蔵野館
登壇者:モーリー・ロバートソンさん(ジャーナリスト/DJ)
■『ブラインドスポッティング』作品をご覧になった率直なご感想は?
素晴らしい映画でした。試写で見させていただいてから今もずっと余韻が続いています。ものすごい勢いのある映画なので、みなさんも字幕が出たら急いで読むようにしてくださいね!アフリカ系アメリカ人のスラングがたくさん使われているのですが、私の耳でも字幕なしじゃ何を言っているのかわからない!一生懸命日本語字幕を追いかけながら観ていました。まるでロシア映画を見ているような気分になりました。
■この映画の舞台になっているオークランドのカルチャーに関して、モーリーさんはどうお考えですか?映画を見る上で知っておくべきオークランドの背景などはありますか?
映画の中でオークランドについてのヒントが視覚情報としてたくさん散りばめられているので、自然と町の姿が見えてきます。あえて文化・歴史的な背景を全て知る必要はないですが、オークランドの中にある「格差」については意識して見てもらいたいですね。
カリフォルニアの豊かで白人がたくさんいるような文化圏から、バスでちょっと走るとオークランドに入るのですが、一気に空気感が変わります。バスに乗ってくる人の雰囲気も全く違う。観光客がオークランドに行くとまず「やばい!」と一瞬で思うような物々しさのある場所です。また麻薬犯罪やギャングが蔓延してしまった暗い歴史のある町でもあります。
■小学校5年生の時に「完全に広島っ子になったと認識し、日本語や漢字を使えるようになりたい」という事で、外国人のための学校を辞めて広島の公立小学校に転校したそうですね。
日本に来た当時はインターナショナルスクールに通っていましたが、小学校5年生の頃に普通の日本人の小学校へ移りました。学校では「青い目の生徒」と呼ばれいていましたね。広島という場所柄もあり、差別されることもありましたが、それと同時に当時は“アメリカ文化への憧れ”みたいなものも強く存在していて、差別と憧れが混ざり合ったカオスな環境でした。僕も学校では差別される一方で人気者でもあって、生徒会長にもなったんですよ!自分としては日本人になりきった白人として過ごしていました。
■この映画で描かれている、今のオークランドの姿を見てどう感じましたか?
憧れてしまう部分がたくさんありました。この映画の登場人物だけでなく実際オークランドに住んでいるような人たちにも、ルールや法律の外で生きている姿には活き活きとした生命力を感じます。生まれ変わったらヒップホップになりたい!と思っちゃいました。外から見ると彼らの生活のスタイルがカッコよく見えてしまうんですよね。本人たちは貧しさへの怒りをラップにしているのに!
■映画のタイトル<ブラインドスポッティング=”盲点”>というテーマについてどう思いますか?
全く同じことでも見る人の立場によって違うものになる。例えば、いま日韓問題が大変なことになっていますよね。でも新宿には観光に来ている韓国人がたくさんいる。タピオカジュースを飲んでいる女子高生グループの中にも激しい貧富の差があるかもしれない。いろいろな人たちがせめぎあって”盲点”が生まれてしまう、というのはどの国・場所でも変わらないことだなと思います。東京でも地域によっては外国からの移民だらけのエリアがどんどん生まれてきているので、オークランドは未来の東京の姿なのかもしれません。
■このシーンをぜひ見てもらいたい!というポイントはありますか?
マイルズがつけているグリル!ファッションでつけるマウスピースです。ここ数年でヒップホップのファッションとして当たり前になってきたアイテムです。映画本編の中で、マイルズが仕事を終えて自分に戻る瞬間にグリルをつけます。彼のアイデンティティの象徴になっているアイテムです。
■音楽映画としても楽しめる作品です。この映画の音楽の魅力は?
ただの音楽が良い映画というわけではなく、映画全体のフロウ=流れが素晴らしい作品です。セリフの流れ、物語の流れ、音楽の流れ、様々な要素がいいフロウを作っています。そこがヒップホップという音楽にマッチしている。
僕は80年代にパンクロックが大好きで、パンクの世界にのめり込んでいた裏側でヒップホップが生まれていたんですよね。どうしてあの時聞いていなかったのか!この映画を見て改めて悔しくなりました!パンクに夢中でヒップホップをずっと無視してしまっていたので。同じ時期にすぐにヒップホップに目をつけていたビースティ・ボーイズが成功している姿を見て「やられたー!」と思いましたよ!
■最後に改めてこの映画をこれから見る皆さんにコメントをお願いします。
とにかくエキサイティング!ノリノリで楽しくなりますが、テーマ自体は実は暗くて重い話で、まさに盲点を描いています。いろいろな楽しみ方ができる映画だと思いますので、ぜひお楽しみください!
ストーリー
保護観察期間残り3日間。
オークランドが地元で黒人のコリン(ダヴィード・ディグス)は保護観察期間の残り3日間を無事に乗り切らなければならない。コリンと、幼馴染で問題児の白人マイルズ(ラファエル・カザル)のふたりは引越し業者で働いている。ある日、帰宅中のコリンは突然車の前に現れた黒人男性が白人警官に追われ、背後から撃たれるのを目撃する。発砲現場を目撃したことを切っ掛けに、コリンとマイルズは互いのアイデンティティや、急激に高級化する生まれ育った地元の変化などの現実を突きつけられ、2人の関係が試されることとなる。コリンは残り3日間耐えれば自由の身として新しい人生をやり直せるのだが、問題児マイルズの予期できぬ行動がそのチャンスを脅かす。物語はオークランド育ちの親友2人の間にある、見えない壁を次第に曝け出す。
俺たちには、同じものが見えていると思っていた―
作品タイトル:『ブラインドスポッティング』
出演:ダヴィード・ディグス / ラファエル・カザル / ジャニナ・ガヴァンカー / ジャスミン・ケパ・ジョーンズ / ウトカルシュ・アンブドゥカル
監督:カルロス・ロペス・エストラーダ
脚本:ダヴィード・ディグス / ラファエル・カザル
2018年 / アメリカ / 英語 / 95分 / 日本語字幕:柏野文映 / 原題:BLINDSPOTTING
配給:REGENTS
公式サイト:BLINDSPOTTING.JP
コピーライト:(C)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
8月30日(金)より新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほかロードショー
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