筒井真理子主演、共演に光石研、磯村勇斗、柄本明、キムラ緑子、木野花、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙を迎え、映画作家・荻上直子監督がメガホンをとった映画『波紋』が2023年初夏に全国公開となることが決定し、特報映像が解禁された。
主人公・須藤依子を演じる筒井真理子は2016年、映画『淵に立つ』で第38回ヨコハマ映画祭 主演女優賞、第31回高崎映画祭 最優秀主演女優賞、第71回毎日映画コンクール 女優優主演賞と主演女優賞三冠を達成。2019年には、映画『よこがお』で第70回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど、気品ある女性の役から悪女役までその存在と幅広い演技力で国内外問わず注目されている女優であり、現在放送中のドラマ「エルピス」(CX)でも強烈な印象を残している。
失踪した須藤依子の夫、修を演じるのは光石研。『あぜ道のダンディ』(11)で最優秀男優賞、『お盆の弟』『恋人たち』(15)で助演男優賞受賞。映画『アウトレイジ ビヨンド』(12)やNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」(10)などの冷徹なヤクザ役からよき父親役まで、多様なキャラクターを演じてきた。
そんな2人の息子役・拓哉を演じる磯村勇斗は『ヤクザと家族 The Family』(21)、『劇場版 きのう何食べた?』(21)で第45回日本アカデミー新人俳優賞を受賞。『前科者』(22)、『ビリーバーズ』(22)、『さかなのこ』(22)などさまざまな役に完璧になりきる演技力の高さから活躍の場を広げている。
また依子を取り巻く人々には、“緑命会”という新興宗教の代表を努める橋本昌子役にキムラ緑子、信者である小笠原ひとみ役の江口のりこと伊藤節子役の平岩紙が絶妙に笑いを呼ぶキャラクターを体現している。
さらに、依子のパート先のスーパーで迷惑な客・門倉太郎役を柄本明、依子と同じスーパーのパート先の清掃員・水木役を木野花、依子の隣人・渡辺美佐江役を安藤玉恵など、日本を代表する俳優陣が揃った。
そして、長編映画デビュー作『バーバー吉野』(04)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞した荻上直子監督は、『かもめ食堂』(06)の大ヒットにより、日本映画の新しいジャンルを築き、『めがね』(07)は、ベルリン国際映画祭でザルツゲーバー賞を受賞した。2011年には、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞、2017年に『彼らが本気で編むときは、』で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞を受賞し、2022年には『川っぺりムコリッタ』が公開された。
そんな荻上監督は、ずっと温めてきたオリジナル作品『波紋』に対し「私の中にある意地悪で邪悪な部分を全部投入したような映画になりました。」とコメントしている。
今回解禁されたスチール写真は、美しく高貴な紫色のタイトルに反し、キャストの面々はモノトーンで映し出される。まるで依子を中心にこれから起こるさまざまな絶望が波紋のように広がる様子を表現している。
また特報映像では、依子(筒井真理子)が憎悪を剥き出しにした表情で夫・修(光石研)に対する恨みを表すシーンから始まる。そして夫・修の「俺、さっさと死ぬわ。」という一言から一変し、声を上げて甲高く笑うシーンが印象的で、ラストの“絶望を、笑え”という言葉が衝撃を与える。
荻上監督が人生最高の脚本と自負する本作に日本を代表する俳優陣。依子を取り巻く人々の感情が今後どのような波で互いに交差し、依子の心を揺れ動かすのか目が離せなくなりそうだ。
なお今回、筒井、光石、磯村、そして荻上監督から寄せられたコメントは以下の通り。
コメント(敬称略)
■ 筒井真理子
最近は〝壊れてゆく女性〟の役が続いていたので、荻上監督の作風から想像するとご一緒させて頂ける機会はないかと思っていました。ですのでとても嬉しかったです。脚本を読んだ時、監督が醸し出す穏やかな空気の中に潜む日常の些細な棘、ビターな社会風刺が溶け合っていて目を見張りました。演出も人間の細部を見抜く力が的確で、身をゆだねることができ安心でした。
いまは先の見えない不穏なものに覆われているような時代ですが、是非この映画を観て絶望に絡めとられず前を進む気持ちになっていただけたらと思います。
■ 光石研
久しぶりに荻上組へ参加させて頂き、凄く嬉しかったです。
監督は以前と変わらず、穏やかに粘り強く、俳優に寄り添い演出をしてくださり、安心して身を委ねる事が出来ました。
脚本に関してはただ一言、「女性は怖し」。
60年間、女性は聖母マリアだと信じて生きてきましたが、音を立てて崩れて落ちました。
■ 磯村勇斗
はじめに脚本を読んだ時、ひしひしと波紋のように迫り来る心理的恐怖を感じました。
特に、筒井真理子さん演じる母、須藤依子を中心に、家族や取り巻く人物達のやり取りは、怖いのだが、思わず笑ってしまうところが多く、荻上監督の描く世界は面白いなと、一気に引き込まれました。
そして今作では、手話が必要な役でした。新たな言語に触れる機会を頂き、現場でも一つ一つ丁寧に確認しながら作り上げていきました。
早くこの作品が皆様のところに届くのが楽しみです。
■ 荻上直子監督
その日は、雨が降っていた。駅に向かう途中にある、とある新興宗教施設の前を通りかかったとき、ふと目にした光景。施設の前の傘立てには、数千本の傘が詰まっていた。傘の数と同じだけの人々が、この新興宗教を拠り所にしている。何かを信じていないと生きていくのが不安な人々がこんなにもいるという現実に、私は立ちすくんだ。施設から出てきた小綺麗な格好の女性たちが気になった。この時の光景が、物語を創作するきっかけになる。
日本におけるジェンダーギャップ指数(146ヵ国中116位)が示しているように、我が国では男性中心の社会がいまだに続いている。多くの家庭では依然として夫は外に働きに出て、妻は家庭を守るという家父長制の伝統を引き継いでいる。主人公は義父の介護をしているが、彼女にとっては心から出たものではなく、世間体を気にしての義務であったと思う。日本では今なお女は良き妻、良き母でいればいい、という同調圧力は根強く顕在し、女たちを縛っている。果たして、女たちはこのまま黙っていればいいのだろうか?
突然訪れた夫の失踪。主人公は自分で問題を解決するのではなく、現実逃避の道を選ぶ。新興宗教へ救いを求め、のめり込む彼女の姿は、日本女性の生きづらさを象徴する。くしくも、本映画の製作中に起きた安部倍元首相暗殺事件によりクローズアップされた「統一教会」の問題だが、教会にはまり大金を貢いでしまった犯人の母と主人公の姿は悲しく重なる。
荒れ果てた心を鎮めるために、枯山水の庭園を整える毎日を送っていた彼女だが、ついにはそんな自分を嘲笑し、大切な庭を崩していく。自分が思い描く人生からかけ離れていく中、さまざまな体験を通して周りの人々と関わり、そして夫の死によって、抑圧してきた自分自身から解放される。
リセットされた彼女の人生は、自由へと目覚めていく。
私は、この国で女であるということが、息苦しくてたまらない。それでも、そんな現状をなんとかしようともがき、映画を作る。たくさんのブラックユーモアを込めて。
イントロダクション
「絶望を、笑え」
須藤依子(筒井真理子)は、今朝も1ミリ違わず砂に波紋を描いている。庭に作った枯山水の手入れは、依子の毎朝の習慣であった。“緑命会”という水を信仰する新興宗教に傾倒し、日々の祈りと勉強会に勤しみながら、依子はひとり穏やかに暮らしていた。ある日、長いこと失踪したままだった夫、修(光石研)が突然帰ってくるまでは―。
震災、老々介護、新興宗教、障害者差別―
世の中に起こっている得体の知れない闇は須藤家に縮図となって現れ、
全てを押し殺した依子の感情が発露される時、
映画は絶望からエンターテインメントへと昇華する。
作品タイトル:『波紋』
出演:筒井真理子
光石研
磯村勇斗 / 安藤玉恵 江口のりこ 平岩紙
津田絵理奈 花王おさむ
柄本明 / 木野花 キムラ緑子
監督・脚本:荻上直子
エグゼクティブプロデューサー:富田朋子 堤天心 小山洋平 高津英泰 久田晴喜 寺井禎浩
プロデューサー:杉田浩光 渡辺誠 企画・プロデューサー:米満一正
撮影:山本英夫 照明:小野晃 録音:清水雄一郎 美術:安宅紀史 衣装:宮本まさ江 衣裳(現場):村田野恵
ヘアメイク:須田理恵 音楽:井出博子 編集:普嶋信一 記録:天池芳美 VFX:大萩真司 佐伯真哉
音響効果:中村佳央 助監督:関谷崇 演技事務:竹村悠 制作担当:柴野淳 ラインプロデューサー:金森保
宣伝:FINOR
映画「波紋」フィルムパートナーズ(テレビマンユニオン U-NEXT 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 讀賣テレビ放送 イオンエンターテイメント ジャストプロ)
製作幹事・制作プロダクション:テレビマンユニオン 制作協力:キリシマ1945
配給:ショウゲート
公式サイト:hamon-movie.com
コピーライト:(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
2023年初夏、全国公開