シベリア、雪深い遊牧民のキャンプ。ブルキナファソ、熱帯の僻地の村。バングラデシュ、モンスーンで水没した農村地帯。未来に明かりを灯そうとする3人の先生と、学びに目覚めた子どもたちを描くドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、ちいさな教室』(7月21日(金)公開)より、エミリー・テロン監督のオフィシャルインタビューが到着した。
1億2,100万人。これは就学費用がない、近くに学校がない、学校に先生がいないなど、さまざまな理由から小学校で学べない子どもたちの数だ。日本でも大ヒットした『世界の果ての通学路』(12)の製作チームが、今度は世界の果ての先生に注目した。
識字率アップが国家の使命であるブルキナファソの新人教師であり、2人の子どもの母でもあるサンドリーヌ。バングラデシュ北部のボートスクールで、子どもや女性の権利を守るために粘り強く戦う若きフェミニストのタスリマ。広大なシベリアに暮らす現役の遊牧民でありエヴェンキ族の伝統の消滅を危惧するスヴェトラーナ。
彼女たちが直面する困難も個性も三者三様。子どもたちに広い世界を知ってほしいという情熱だけを胸に、家族と離ればなれになっても、両親から反対されても、「子どもたちには明るい未来がある」と、信じる道を進み続ける。
エミリー・テロン監督インタビュー
Q:映画の始まりについてお聞かせください。
前作『MON MAITRE D’ECOLE』の後、私は再び「伝達」というテーマに取り組みたいと考えていました。よりアクセスしにくく、より複雑な場所で職業を実践することで、子どもたちにより多くのものを与えられることが出来るに違いない。私はこのことについて掘り下げてみたいと思いました。「天職」という概念を探求したかったのです。そんな時に、同じテーマに取り組んでいたプロデューサーのバーセルミー・フォージェア(『世界の果ての通学路』)に出会ったのです。
Q:本作の舞台は、ブルキナファソ、バングラデシュ、シベリア。なぜこの3つの場所を選んだのでしょうか?選んだ先生がたまたまその国にいたのですか?それとも地政学的な配慮でしょうか?
ドキュメンタリーの場合、常にアングルの問題があります。本作を作るにあたり、腕に覚えのあるようなベテランの先生を中心に据えたくはなかったのです。先生のデビューの瞬間や、変化を見逃したくなかったからです。そういう意味で、まだ完成されていない人を見つけたかったのです。その上で場所を選びました。アフリカや寒い国、全く違う環境にしたいと思っていました。
Q:このプロジェクトはどのように進めたのですか?
3か月間、ジャーナリストと一緒にたくさん調査しました。地域がどこであれ、教師たちは同じ困難に直面しています。資源の不足、教育とはしばしば相反する慣習、戦争、気候変動などです。人口が急増しているブルキナファソの場合、識字率を上げるために教師が緊急に派遣される。バングラデシュでは貧困や伝統的な因習から学習を諦める子どもを減らすために教師が奮闘する。シベリアではエヴェンキ族が二重の文化を前提として学習することで、自分たちのルーツの消滅を防ぐ。この3つの例に大変惹かれました。
Q:例えばサンドリーヌにとっては初めての任務です。彼女がどのように行動するのか、確信はあったのでしょうか?
いいえ、それは分かりませんでした。ですが、彼女が荷物をまとめ小さな娘と別れたとき、そして彼女が村に到着して校舎を見たとき、最初の授業、落ち込んだとき、勝利の瞬間…素晴らしいことに私たちはその瞬間に彼女と一緒に立ち会ったのです。国によって状況や困難は異なります。しかし私は、この職業の素晴らしさは変わらないと深く確信しています。
Q:ナレーションにカリン・ヴィアールを起用したのはなぜですか?
私がこの映画に強く望んでいた女優です。彼女の声、少しかすれ気味で、ハスキーで、柔らかい。声の抑揚、時々起こる小さな脱線、どれもとても美しく感動的です。彼女たちの物語は、いかにもパリジェンヌといったような白っぽい分かりやすすぎる声にはしたくなかったのです。彼女のエージェントに連絡するとすぐに反応してくれて嬉しかったです。
Q:音楽についてお聞かせください。
国ごとに音楽を変えようとは思いませんでした。伝統的すぎたり、エスニックすぎるのも違うと思いました。逆にこの映画に統一感を持たせるようなサウンドトラックが欲しかったのです。弦楽器や打楽器といった純粋な楽器で構成され、かつ有機的で現代的な音楽です。作曲したレミ・ブーバル(『PLAN 75』)はヴァイオリンをはじめとする弦楽器の音を、現代風にアレンジしてくれました。
作品タイトル:『世界のはしっこ、ちいさな教室』
出演:サンドリーヌ・ゾンゴ、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ、タスリマ・アクテル
ナレーション:カリン・ヴィアール『エール!』
監督:エミリー・テロン
製作:バーセルミー・フォージェア『世界の果ての通学路』
2021年/フランス映画/仏語・露語・ベンガル語/82分/原題:Etre prof/英題:Teach me If you can/字幕翻訳:星加久実
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:hashikko-movie.com
コピーライト:(C)Winds – France 2 Cinéma – Daisy G. Nichols Productions LLC – Chapka – Vendôme Production
7/21(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
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