ヘンリー・ゴールディングが主演を務めるホン・カウ監督作品『MONSOON/モンスーン』(2022年1月14日(金)公開)に、各界の著名⼈から絶賛コメントが到着した。
30年ぶりにサイゴン(現ホーチミン)へ帰郷した主人公・キットがアイデンティティを探す旅路を圧倒的な映像美で綴った本作。変わり果てた街に馴染めず、どこか旅行者のような主人公・キットを演じたヘンリー・ゴールディングは、イギリス人の父とマレーシア人の母を持つことから、キットの持つ複雑なアイデンティティに強い共感を抱いたという。脚本も手掛けたホン・カウ監督もまた、キット同様にカンボジアから逃れてベトナムに渡ったのち、8歳まで同国で過ごし、”ボート難民”として渡英していた過去を持つ。
キットのアイデンティティをめぐる旅は、現代ベトナムを映し出した魅力的な風景を通してより深められる。サイゴンには、大量のバイクが道路を行き交い、巨大なビルが立ち並ぶ一方、ハノイは、古い町並みを残す。前者では新世代が活躍し、後者では旧世代が昔ながらの暮らしを営んでいるが、年齢的には新世代に属するキットが心安らぐのは後者だ。そこには彼にとって、懐かしい景色がまだ息づいている。故郷にいながらも孤独を感じているキットが、過去の面影を巡る旅の中で見つけた<自分>とは―。
なお、到着したコメントは以下の通り。
コメント一覧(※敬称略・順不同)
激変した故郷をさまよいながら、傷を見つめ、混沌と戯れる。
活気に溢れる現在のベトナムが照らし出すのは、移民となった人々のその後の軌跡だ。
―今日マチ子(漫画家)
爆発もなければカーチェイスもない。超能力を誰も持たないし一人も死なない。
ワンパターンの映画に飽きているなら、ルーツやアイデンティティをゆっくり模索する青年の自分探しの旅にゆらりとお付き合いください。
―パトリック・ハーラン(タレント)
一国の歴史と戦争の記憶。多くを語らない映画の余白の美しさが、聞かれてこなかった人々の声をやさしく掬い出す。
―ブレイディみかこ(ライター)
故郷を追われた過去への戸惑い、少数者としての息苦しさ、自分を偽ってしまう癖、相手を搾取する傲慢さ――
人間は常に多面性を抱き生きている。
それでも、いや、だからこそ、「自分はどこからやってきたのか」というルーツに立ち戻ろうとするのかもしれない。
―安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
印象的な長回しや引き画に映る街並みから、数年前に訪れたベトナムで感じた剥き出しの生命力を思い出す。
言葉ではないところで語られる戦争の影響、記憶の中の母国への郷愁。
溢れる所在ない寂しさがじんわりと心に染みた。
―宇垣美里(フリーアナウンサー)
人は、それぞれ異なる過去を背負って生きている。背負いながら、今現在を歩くしかない。
私たちがそれぞれに持つ、たくましさを知った。
―武田砂鉄(ライター)
最後の最後に静かな驚きがあった。不意に訪れたどんでん返し。
この場所で生きてきた、この場所で生きていく、そういうことの意味を、ひっくり返すような。
―望月優大(ライター)
時間の流れは一定です。1秒、1分、1時間、1日、1年。
ただ人それぞれの生きていく中で全く違う時間の流れを体感していく。
主人公の中で明らかに止まっていた時間の流れをルーツを辿りながら進めていく描写が細やかに描かれていて
時計の針の音が動いていくのが聞こえてくるような。
サイゴンの街の交通のメインになっているバイク。このバイク動き、音が現実世界での早い時間の流れを表している。
主人公の中で変わっていく流れと、その中でも変わらない不変的なものが交錯していくストーリーが
見ていて自分自身にももう一度時間というのを考えさせてくれました。
―副島淳(俳優/タレント)
日本で生まれ育ち、何不自由なく生活できていると、キットが渇望するアイデンティティの確立とは無縁になる。
“私は何者なのか?”歩を緩め、考える機会をこの映画からもらった。
―部坂尚吾(スタイリスト)
そこに居るのに、まるで居ないようで。
確かにここに在るはずなのに、なかったことになっている気がする。
そういったことを何度も何度も感じ、一体、私たちは自己の存在や時間をどう証明したらいいのか。
その問いに向き合い続けながら、それでも人生は続いていくのだと、噛みしめる映画。
―枝優花(映画監督/写真家)
ベトナムに移り住む前の私にこの映画を見せたい。
こんなにも時を巻き戻したいと思ったことはないほどに
強烈だけど、とても優しい1時間半でした。
暮らす人だけが知る誇張ないリアルなベトナムを全身で感じてください。
―東洋子(ベトナム在住 編集者)
登場人物たちは多くを語らない。彼らの内面は想像するしかない。
それだけに、ベトナムのこと、その激動の近現代史を、
次回ベトナムに旅立つまでにきちんと勉強しなくてはと思わされた。
―福井由美子(『ひとりっぷ』シリーズ著者&編集者・ひとりっP)
透明感のある美しい映像と、静かだけれども臨場感に満ちた音に引き込まれる。
主人公の旅を追いながら、気づけば自分もベトナムの街を歩いている気分になっていた。
―川渕ゆり(ライター/フォトグラファー)
主人公と同じような過去を持つ監督が、自らの人生を振り返るかのように故郷で感じた複雑な気持ちや、
今伝えたいベトナムの風景を詰め込んだ作品。
特に蓮の花が画面いっぱいに広がるシーンがとても鮮やかで美しく、写真として一枚の作品を撮影したいと思うほど印象的でした。
サイゴンとハノイの街並みの対比や混沌とした空気感が魅力的に映し出されていて、旅をしている気分に。
旅欲が高まる今だからこそ見たい作品!
―田島知華[たじはる](トラベルフォトライター)
人種や国籍が人のアイデンティティを決めるわけではない。
複雑なバックグラウンドを持つひとりの青年のルーツを巡る旅は、帰属意識の呪縛から開放し、
「多様性」とは何かを静かに、力強く訴えかける。
境界線を超え、より自由に自分らしい人生への第一歩を踏み出すその姿には、大いに共感し、希望を感じる。
―立田敦子(映画ジャーナリスト)
ホテルのバルコニーで、列車の中で、道路の真ん中で。
主人公はいつも一人ぼんやりと外の世界を見つめている。
どこにも居場所を持たない彼が、やがて風景のなかに溶け込むまで。
その瞬間をじっと待ち続けるカメラの不思議な動きに、心を掴まれた。
―月永理絵(編集者/映画ライター)
自分がいるべき場所と、本当に居心地のいい場所は違うもの。
アイデンティティに悩み、新しい一歩を踏み出すことを躊躇する人こそ、この作品を観て、背負っているものをそっと降ろして。
―よしひろまさみち(映画ライター)
アイデンティティの探索は「終わらない旅」そのものだ。
ホン・カウ監督は地政学、セクシュアリティ、世代をめぐる考察を30年の歴史背景に込め、
変わりゆく都市空間の中で個の揺らぎを繊細に描き出した。
―森直人(映画評論家)
祖国を離れた男の、揺らぐアイデンティティは、彼を画面の中心に据えながらも、
広角で引き画を多用するカメラがとらえるホーチミンの街並みとの対比により、視覚的に描写される。
安易な言葉よりも、画面が静かに語り出す。
―中井圭(映画解説者)
アイデンティティの拠り所は生まれた土地にあるのか、それとも育った土地にあるのか。
異郷かつ郷里でもある地を巡礼することで、この命題に横たわる<時間>という不可逆的な概念が、
国の歴史と個人の歴史と共に解体されている。
―松崎健夫(映画評論家)
ストーリー
キット(ヘンリー・ゴールディング)は、両親の遺灰を埋葬すべく、30年ぶりに祖国であるサイゴン(現ホーチミン)に足を踏み入れる。キットは6歳のとき、家族とともにベトナム戦争後の混乱を逃れてイギリスへ渡った、”ボート難民”だ。以来、これが初めての帰郷だった。もはやベトナム語すらままならない彼は、英語が話せる従兄弟のリー(デイビット・トラン)の助けを借りながら、どこか大事な場所を探し始めるが、思うようには進まない。サイゴンは今やすっかり経済成長を遂げ、かつての姿は見る影もなかったからだ。そんな中、ネットで知り合ったアフリカ系アメリカ人のルイス(パーカー・ソーヤーズ)と一夜をともにするキット。ルイスの父親はベトナム戦争に従軍したという過去を持ち、そのことを隠してこの国で暮らしていた。その後、両親の故郷ハノイへ向かったキットは、サイゴンで知り合った学生リンの実家が営む伝統的な蓮茶の工房見学をする。それはキットの知る”古き良きベトナム”の姿にようやく触れられた時間でもあったが、リンにとっては時代遅れなものらしい。サイゴンに戻ったキットは、リーから自分たちの家族の亡命にまつわる”ある真実”を聞かされることになる―。
作品名タイトル:『MONSOON/モンスーン』
出演:ヘンリー・ゴールディング、パーカー・ソーヤーズ、デイビット・トラン、モリー・ハリス
監督・脚本:ホン・カウ『追憶と、踊りながら』
2020/イギリス、香港/85分/5.1ch/カラー/原題『MONSOON』
配給:イオンエンターテイメント
公式サイト:monsoon-movie.com
Twitter:@MONSOON_MOVIE
コピーライト:(c)MONSOON FILM 2018 LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
1/14(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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