『ニトラム/NITRAM』本編抜粋映像&監督コメント到着!96年オーストラリアで起こった無差別銃乱射事件を初めて映画化

ニトラム/NITRAM

第74回カンヌ国際映画祭主演男優賞、第11回オーストラリア・アカデミー賞最多8部門を受賞した、ジャスティン・カーゼル監督、ケイレブ・ランドリージョーンズ主演最新作『ニトラム/NITRAM』(3月25日(金)公開)より、本編一部抜粋映像が解禁された。

本作は、1996年にオーストラリア、タスマニア島の観光地ポート・アーサーで起こった無差別銃乱射事件「ポート・アーサー事件」初の映画化作品。何より「普通」の人生を求めていた20代半ばの青年が、いかにして同国史上最多の被害者を出した銃乱射事件の犯人となったのか。彼が、なぜ銃を求め、いかに入手し、犯行に至ったのか。事件当日に至るまでの犯人の<日常>と<生活>を描き出し、その不可解な半生を破格の臨場感と緊張感で描き出す。

今回解禁された本編抜粋映像は、サーフィンに憧れる青年と母親がやりとりをするシーン。「カネが足りない」サーフボードを買いたい青年は、母にねだる。しかし稼いでもいないし、いつもと同じくらいのお小遣いはあげていると諭される。母は、前にもスキューバダイビングの装具を買ったが、泳ぎもしないのに今度はサーフボードをねだるなんてと思い「もうお金を無駄にはしない」と言い放つ。ありふれた親子の景色だ。それでもどうしてもサーフボードが欲しい青年は、サーフィンで楽しそうに波に乗る同年代の青年を、海岸からただ眺めるしかないのだった――。

本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したケイレブ・ランドリー・ジョーンズと、母を演じるジュディ・デイヴィスによる演技合戦が、観る者の心を捉えるシーン。青年の心のさざ波を引き立たせる表現としての波の音の演出も秀逸。質の高い本編に、さらに期待が高まる内容だ。

ニトラム/NITRAM

本作の監督は、「現代オーストラリア最高の映画作家」と称されるジャスティン・カーゼル。この後にはベネディクト・カンバーバッチ、ローラ・ダーンらが出演するSFスリラー『Morning』、マーゴット・ロビー主演『Ruin』の公開も予定されるなど大きな注目を集めている。

監督は本作の制作意図について、「犯人からの視点を取ることによって、いとも簡単にこのような事件が起こってしまうこと、社会的に孤立していること、簡単に銃にアクセスできてしまうことの危険性を描きたかったのです。この映画に出てくる人たちは、皆、誰かと一緒になりたい、誰かと繋がりたいと思って絶望的になっている」と語りながら、こうも語る。

サーファーは、オーストラリア社会における、男の象徴であり、理想です。荒々しい社会の中で生きてゆくためには、男性はタフで決して妥協せず、肉体的であらねばならない。そんなオールドスクールな男性像が未だ理想とされている。そういう人に男の子は憧れる。一方で、その男らしさは脆弱でもある。最も男らしい種族とされるサーファーにもしあなたがなれなかったら、どう生きてゆくのか?その答えがまだオーストラリア社会にはありません。そんな男性像の正当性も問いかけたかった。」今回の本編抜粋映像はそんな問題提起を象徴したシーンだ。

主人公「ニトラム(NITRAM)」を演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、『ノーカントリー』でデビュー以降、『アンチヴァイラル』『ゲットアウト』『スリー・ビルボード』『デット・ドント・ダイ』など現代の名匠たちの作品に相次いで出演。今後も、リュック・ベッソン監督の新作『Dogman』への主演決定。本作では「ニトラム」を鬼気迫る演技で怪演、各国メディアを席巻し、カンヌ国際映画祭、オーストラリア・アカデミー賞、シッチェス・カタロニア映画祭などで主演男優賞を受賞。

母親役にデヴィッド・クローネンバーグ監督作『裸のランチ』で知られる、オーストラリアで最も尊敬される俳優のひとり、ジュディ・デイヴィス。父親役に、本作ではエグゼクティブプロデューサーとしても名を連ねるアンソニー・ラパリア。また世界各国の映画、演劇において多数の賞を獲得しているエッシー・デイヴィスがヘレンを演じる。オーストラリアを代表する名優たちが脇を固める、主人公の周囲の人々による怪演のアンサンブルも見逃せない。

事件から25年しか経過しておらず、オーストラリア国内では話題に取り上げることすらタブーという雰囲気が色濃い中、当初映画化に当たっては否定的な声も大きかったにも関わらず、犯人の青年の人物像を、多角的・多層的・多極的に描き切った倫理的な姿勢、その比類なき映像美学と圧倒的なリアリティが、高く評価され、第11回オーストラリア・アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞ほか主要8部門で最多受賞を果たした。

目次