2024年ベルリン国際映画祭にてプレミア上映され、最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞をW受賞したパレスチナ人とイスラエル人の若手監督によるドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(2月21日(金)公開)の日本版予告編が解禁された。
先日発表された第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートを果たした本作。舞台となるのは、イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区、マサーフェル・ヤッタ。
この現状をカメラに収め世界に発信することで占領を終結させ、故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バーセル・アドラーと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録。あまりに不条理な占領行為を、そこで暮らす当事者だからこそ捉えることのできた至近距離からの緊迫感みなぎる映像であぶりだしていく。同時に、バーセルとユヴァルが、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ね理解し合うことで生まれる奇跡的な友情と、ただ故郷の自由を願い強大な力に立ち向かい続ける人々の姿も映し出す。
監督は、バーセルとユヴァルを含むパレスチナとイスラエルの若き映像作家兼活動家の4人が共同で務めた。
そんな本作の日本版予告編は、マサーフェル・ヤッタにあるバーセルの暮らす村をイスラエル軍の無数の軍用車両が急襲し、彼がビデオで撮影していたために兵士に襲いかかられる緊迫の場面で幕を開ける。
彼はイスラエル軍の不当な行いに心を痛めてこの村にやってきたジャーナリスト・ユヴァルからのサポートの申し出を快く受け入れるが、バーセルとともに占領に抗ってきたハムダーンがユヴァルに「イスラエル人だろ?侵略者の仲間など信頼できない」と面と向かって厳しい言葉を投げかける様子も捉えられている。ふたりが素材提供や自ら番組にも出演することでマサーフェル・ヤッタの現状はたびたび報道されるが、状況が改善する気配はない。
映像には、軍などにより家が破壊されることに抗議する人、村の自由をもとめて行進する人々、「時間がかかっても諦めない」というバーセルの強い覚悟が伝わる言葉、ユヴァルがカメラを手に兵士に「祖国の暴挙を見過ごせない」と詰め寄る様子などのほかに、代々この場所で生きてきたマサーフェル・ヤッタの人々のささやかな日常が伝わる光景も切り取られている。
そして、映像の最後には同じ想いで行動を共にするバーセルとユヴァルが、笑顔で互いの顔を見る様子が映し出されているが、そこに記された「一滴のしずくから、世界は変わる」というメッセージは、バーセルが本作の中で村人たちに諦めないことの大事さを呼びかけた際の言葉がベースとなっている。
この予告編のナレーションを担当したのは、俳優の池松壮亮。これまで作品本編にナレーションとして参加した経験はある池松だが、映画の予告編単体でナレーションを務めるのは本作が初となる。
今回のナレーションに際して、池松は「並外れた作品だと思いました。このような形でこの作品に賛同できることをとても光栄に思っています。異なるバックグラウンドを持つ4名の監督が親密に手を取り合い、同じ空の下の現実を伝えようと、ジャーナリズムへの献身と努力で世界に情報を伝えてくれました。決して他人事ではいられず、無関心ではいられませんでした。今作に出会えたことに感謝しています。今この映画を、是非観ていただきたいです」と語っている。
ストーリー
ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで生まれ育ったパレスチナ人の青年バーセルは、イスラエル軍の占領が進み、村人たちの家々が壊されていく故郷の様子を幼い頃からカメラに記録し、世界に発信していた。そんな彼のもとにイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが訪れる。非人道的で暴力的な自国政府の行いに心を痛めていた彼は、バーセルの活動に協力しようと、危険を冒してこの村にやってきたのだった。同じ想いで行動を共にし、少しずつ互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、同じ年齢である2人の間には思いがけず友情が芽生えていく。しかしその間にも、軍の破壊行為は過激さを増し、彼らがカメラに収める映像にも、徐々に痛ましい犠牲者の姿が増えていくのだった―。
『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』
監督:バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール
2024年/ノルウェー、パレスチナ/アラビア語、ヘブライ語、英語/5.1ch/95分/G/原題:NO OTHER LAND/日本語字幕:額賀深雪/字幕監修:高橋和夫
配給:トランスフォーマー
(C)2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/nootherland/
公式X:@nootherland_jp
2025年2月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋 ほか全国ロードショー