倍賞千恵子が主演を務める映画『PLAN 75』が2022年6月より新宿ピカデリーほか全国ロードショーされることが決定した。
本作は、映画監督・是枝裕和が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇『PLAN75』を新たに構築、キャストを一新した、早川千絵監督の初長編映画。75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障し支援する制度“PLAN75”が施行され、その制度に翻弄される人々の姿を描く衝撃作。年齢で命が線引きされてしまうことの恐ろしさとそのようなシステムを生み出してしまう社会構造や人々の意識に対し、痛烈な批判を込めて、生きるとは何か?を問いかける。
主人公・角谷(かくたに)ミチを演じるのは倍賞千恵子。倍賞は脚本を読み、「最初は“酷い話”だと思ったのですが、物語の終盤でミチがある選択をする姿が描かれており、そこにものすごく心打たれ、惹かれて…それだけで出演を即決しました」と、ミチを演じる覚悟を決めたと振り返る。
共演には、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子はじめ、俳優・演出家として活躍する串田和美らが顔を揃えた。
昨年12月から始まった撮影はこの度、無事クランクアップを迎え、倍賞は「あっという間でした。ミチの同僚役の皆さんと撮影したカラオケを歌うシーンなどは、面白くて楽しかったです」と振り返り、公開に向けて「『PLAN 75』のような社会があってはならないと思うし、決して良いことではありません。でも、やって良かったなと思っています。皆さんにもこの映画を観ながら、自分の命や愛、生活などいろんなことを考えていただきたいです。きっとこれからの人生に役立つでしょうし、考えながら最後まで観てもらえると嬉しいです」と期待を寄せる。
倍賞との初共演を果たした磯村は「目で芝居をすることを意識しました。直近で演技を拝見し、同じ時間を共有させていただけたことは光栄でした」と明かし、河合は「ミチとの電話でのやり取りのシーンを本読みした際、倍賞さんの声を聞いて、自分が思っていた以上に心が動きました。言葉で言い表すのがもったいないような、訳もない感動でした。いま倍賞さんに感じさせていただいたことをそのまま大切にして撮影現場に行けば大丈夫だと、心から思えた貴重な時間になりました」とそれぞれが現場で意義のある経験ができたと語る。
長年温め続けてきた企画で念願の長編映画デビューを果たすこととなった早川は「経済的合理性を優先し、人の痛みへの想像力を欠く昨今の社会に対する憤りに突き動かされて生まれた映画です。倍賞千恵子さん演じるミチという女性の姿を通して、人が生きることを全肯定する。そんな映画にしたい」と思いの丈をぶつけ、「倍賞さんはこの映画に命を吹き込んでくれました。光と影の中で息をのむほど美しい倍賞さんのたたずまい、その存在自体がこの映画の魅力の一つです」と倍賞の印象を明かしてくれた。
倍賞も「早川監督はとてもバイタリティのある方。時折、ふわっと羽ばたくように近寄ってきてシーンや役の説明をしてくださると、ミチの気持ちがスッと入ってきて心が深くなり、役が立ち上がってくるような気がしてとてもありがたかったです」と撮影現場での様子を振り返る。
早川監督は短編『ナイアガラ』が2014年カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に入選、ぴあフィルムフェスティバル(グランプリ)、ソウル国際女性映画祭(グランプリ)、ウラジオストク国際映画祭(国際批評家連盟賞)など数々の受賞歴を持つ。本作は昨年のベネチア映画祭の企画マーケットでも注目を浴び、日本、フランス、フィリピンの3カ国で共同製作され、海外映画祭を含む海外マーケットも視野に入れている。
コメント
角谷ミチ役:倍賞千恵子
最初は「酷い話だな」と思って脚本を読み始めたのですが、物語の終盤でミチがある選択をし、窓から太陽の光を浴びるというシーンが描かれており、そこにものすごく心打たれ、惹かれて…それだけで出演を即決しました。
早川監督はとてもバイタリティのある方。脚本もご自身で書かれているので、強い想いを持っていらっしゃると思います。時折、ふわっと羽ばたくように近寄ってきてシーンや役の説明をしてくださると、ミチの気持ちがスッと入ってきて心が深くなり、役が立ち上がってくるような気がしてとてもありがたかったです。
『PLAN 75』のような社会があってはならないと思うし、決して良いことではありません。私自身、この映画の撮影中はもちろん、家に帰ってからもいろんなことを考えさせられることが多々ありました。でも、やって良かったなと思っています。皆さんにもこの映画を観ながら、自分の命や愛、生活などいろんなことを考えていただきたいです。きっとこれからの人生に役立つでしょうし、考えながら最後まで観てもらえると嬉しいです。
岡部ヒロム役:磯村勇斗
脚本を最初に読んだ時、とても面白く、是非参加したいと思いました。現代の日本でも問題になっている「高齢化社会」に対して、自分自身もニュースを見たり考えていたタイミングだったので、運命を感じました。
撮影現場では早川監督と何度も話し合いながら、ヒロムという役を作り上げていきました。早川監督はそのシーンで描きたい目的や意味を、俳優に寄り添いながら細かく丁寧に教えてくださったので、とても演じやすかったです。
倍賞さんとの共演シーンでは目で芝居をすることを意識しました。直近で演技を拝見し、同じ時間を共有させていただけたことは光栄でした。
映画『PLAN 75』が問いかけていることは、僕ら若い世代を含め、どの世代の方々がご覧になっても、自分や家族、命について、そして人生の選択肢について見つめ直す機会になると思います。恐怖を感じるだけではなく、未来への道標や一筋の希望を感じていただけたら幸いです。
●成宮瑶子役:河合優実
ミチとの電話でのやり取りのシーンを本読みした際、倍賞さんの声を聞いて、自分が思っていた以上に心が動きました。言葉で言い表すのがもったいないような訳もない感動でした。いま倍賞さんに感じさせていただいたことをそのまま大切にして撮影現場に行けば大丈夫だと、心から思えた貴重な時間になりました。
早川監督は、撮影前の段階から緻密にコミュニケーションを取ってくださいました。監督が想定していなかったことを提案してもその度に反応して柔軟に受け入れてくれ、その上で新たな表現に踏み出していくような方なので、とても信頼でき、楽しかったです。
私が演じた瑶子は、自分の常識や感覚をごく一般的なものだと受け止めて生きてきた人物だと思いますが、ミチと出逢ったことで、自分が無自覚に加担していることがどういうことなのかを突き付けられます。今、社会で問題と言われていることは私たちの生活ひとつひとつと結びついているんだという感覚にこの映画を通して触れてもらえたら、とても嬉しいです。正しさって難しいけれど、人が人である心を忘れない社会であって欲しいです。
脚本・監督:早川千絵
私たちは今、“生きる意味”やら“生きる価値”なんてことについて、いちいち説明を求められるような世の中に生きています。自分のことは自分で責任を取るべきという社会の空気に多くの人が追いつめられ、「助けて」と言葉にすることすらためらわれる。「人に迷惑をかけてはいけない」と子供の頃から教えこまれて育った私たちは、人が無条件に助け合うことが人間として当たり前の姿であるということを忘れてしまっているのかもしれません。
この映画は、経済的合理性を優先し、人の痛みへの想像力を欠く昨今の社会に対する憤りに突き動かされて生まれました。倍賞千恵子さん演じるミチという女性の姿を通して、人が生きることを全肯定する。そんな映画にしたいと思っています。
倍賞さんはこの映画に命を吹き込んでくれました。いつまでもその姿を見つめていたい。その声を聴いていたい。撮影の間じゅうずっと、倍賞千恵子さんという俳優、その人間性に魅了されっぱなしでした。光と影の中で息をのむほど美しい倍賞さんのたたずまい、その存在自体がこの映画の魅力の一つです。是非映画館の大きなスクリーンで見ていただきたいです。
ストーリー
国は⾼齢化問題に対処するため、75歳以上の⾼齢者に⾃ら死を選ぶ権利を保障し⽀援する「PLAN75」という制度を施⾏。⾼齢者の間では、⾃分達が早く死ぬことで国に貢献するべきという⾵潮がにわかに広がりつつあった。
夫と死別後、ホテルの客室清掃の仕事をしながら、角谷ミチ(演:倍賞千恵子)は⻑年⼀⼈で暮らしてきた。市役所の「PLAN75」申請窓⼝で働いている岡部ヒロム(演:磯村勇斗)や申請者のサポート業務を担当する成宮瑶子(演:河合優実)は、国が作った制度に対して何の疑問も抱かずに、業務に邁進する日々を送っていた。
そんなある日、ミチの職場で高齢のスタッフが勤務中に倒れたことを理由に、ミチは退職を余儀なくされる。職を失い、住む場所さえも失いそうになったミチは「PLAN75」の申請手続きを行うか考え始め――。
作品タイトル:『PLAN 75』
出演:倍賞千恵子 磯村勇斗
たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美
脚本・監督:早川千絵
企画・制作:ローデッド・フィルムズ
製作幹事・配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
製作:ハピネットファントム・スタジオ/ローデッド・フィルムズ/鈍牛俱楽部/Urban Factory/Fusee
公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/
コピーライト:(C) 2022『PLAN75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee
6月、新宿ピカデリーほか全国ロードショー