介護、躁うつ病など、返還後の香港社会の問題を色濃く反映した映画『誰がための日々』が2019年2月2日(土)より全国順次公開となる。この度、本作のポスタービジュアルと予告編が解禁された。
ポスターは主人公トン役のショーン・ユーが、2段ベッドの上で泣き続ける姿を、父親ホイ役のエリック・ツァンがどうしていいかわからず、でも見捨てられずという様子で見守る姿が捉えられている。
この写真に写っているのは、香港特有の劏房(トンフォン)という部屋の様子だ。劏房(トンフォン)とは比較的古いビルに多く見られ、ワンフロアをいくつかの部屋に仕切って貸し出している。彼らの部屋は、共同のトイレとシャワーで、通りに面した窓があり、隣の住人とは、壁を通しても話が出来る。広さは、歩いて2歩(本作のエリックのセリフの中にある表現)。この部屋を中心に物語は展開するが、俯瞰で撮影したこのスチールは、空間がなく、登場人物たちの心情を表すような写真で、映画の物語を象徴するようなポスターに仕上がっている。
予告編は香港版を基調に製作。父子の関係が、母親役のエレイン・ジンの登場で更に明確にされ、父子の現状、そして未来が暗示されるような仕上がりだ。
新人発掘を目的とした政府の企画に民間団体が賛同し、設立された基金「首都劇情電影計画」の第1本目である本作は、ウォン・ジョン監督に香港金像奨、台湾金馬奨で最優秀新人監督賞をもたらし、大阪アジアン映画祭ではグランプリをもたらした。撮影日数16日、製作費200万香港ドル(日本円で約3000万円)で撮影され、香港での興行収入は220万USドル(日本円で2億5千万円)という大ヒットを記録している。
内容的にも興行的にも素晴らしい結果を残す、新人をベテランが惜しみなくバックアップして製作される作品が、この基金から少しずつ生まれてきている。
つまり本作は、新香港ニューシネマが起こりつつあるのではないか、と言われている、昨今多く見られる香港で作られる香港のための映画の中の代表作であり、このムーブメントは本作から始まっているのだ。
ストーリー
病室で父ホイ(エリック・ツァン)が息子とン(ショーン・ユー)の病状について話を聞いている。
薬を飲んでいれば安定しているので、退院し社会復帰の時期だという説明だった。1年前トンは婚約者ジェニー(シャーメイン・フォン)と家を買い、将来を夢見ていた。しかし母(エレイン・ジン)がひどい火傷を負い、介護が必要となってから、会社を辞め一人で母の介護をしていた。
父は大陸と香港をトラックで往復していて家には寄り付かない。弟はアメリカに留学したまま、現地で就職・結婚し戻ってこない。母は思うようにならない苛立ちをトンにぶつけ、優秀だった弟ばかりを気に掛けている。ある日、介護の極限状態の中、トンはある事故を起こし、最愛の母を亡くす。裁判では無罪、しかし躁鬱病の診断で、措置入院となった。迎えに来た父を、トンは全く家を顧みなかったと恨み、父もまた病気の息子をどうしていいかわからず悩む…。
作品タイトル:『誰がための日々』
出演:ショーン・ユー、エリック・ツァン、エレイン・ジン、シャーメイン・フォン
監督:ウォン・ジョン
脚本:フローレンス・チャン
配給:スノーフレイク
公式サイト:www.tagatameno-hibi.com
コピーライト:(c)Mad World Limited
2019年2月2日(土)新宿K’s cinema 他順次公開