イスラエルとイラン出身監督が協働『TATAMI』 作品に込めた思いを伝える監督ステートメントが到着

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第36回(2023年)東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞の2冠を獲得した『TATAMI』のガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール両監督によるステートメントが到着した。

本作は、映画史上で初めて、イスラエルとイランをルーツに持つ2人が共同で演出した社会派ドラマ。スポーツ界への政治介入や中東の複雑な情勢、イラン社会における女性への抑圧を背景に、アスリートたちの不屈の戦いを臨場感溢れる映像で描く。

ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、怪我を装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか、ふたりは人生最大の決断を迫られる。2019年、日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化された。

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共同監督を務めたのは、『SKIN 短編』(18)で第91回アカデミー賞短編実写映画賞を受賞し、A24配給の長編版も発表したイスラエル出身のガイ・ナッティヴと、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(22/アリ・アッバシ監督)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミール。

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共同監督/共同脚本/プロデューサー
ガイ・ナッティヴ
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共同監督/キャスティング・ディレクター/マルヤム・ガンバリ役
ザーラ・アミール

本作はすべて秘匿状態で撮影が行われ、映画に参加したイラン出身者は全員亡命。イランでは上映不可のままだ。

現在はイランから亡命し、フランスを拠点としているザーラ・アミールは、2022年にBBCの「100人の女性」に選出された影響力あるオピニオンリーダー。本作では監督を兼ねながら、俳優として監督のマルヤム・ガンバリを演じ、第36回東京国際映画祭コンペティション部門の最優秀女優賞に輝いた。

本作の画面サイズは、最も画角が狭いスタンタードで、全編モノクロームで撮影された。圧迫感さえ感じる迫真の柔道シーンと、息をもつかせない緊迫のドラマが全編を貫く。

なお、今回到着した両監督からのステートメント全文は以下の通り。

私たちは、芸術こそが雑音を切り裂く正義の声であると信じている。
ここ数十年、人々が実際に感じていることとは無関係に、イラン政府は国際的なイベントでイラン人とイスラエル人が対面しないようにあらゆる手段を講じてきた。それでも、私たちは道を見つけた。イスラエルのテルアビブや、イランのテヘランから2時間の距離にあるジョージアのトビリシで、自由を求めて命をかける勇敢なイラン人アスリートたちの物語を伝えるために、私たちは力を合わせた。イスラエルとイランのアーティストたちは、お互いに兄弟姉妹関係を見出し、芸術、美学、映画を共有する中で、多くの共通点があり、実はとても近い存在であったことに気づいていった。

私たちは、芸術こそが雑音を切り裂く正義の声であると信じている。この映画で語ると決めたのは、システムや政府間の対立によって夢を諦めざるを得なかったり、時には祖国や愛する人の元を去らなければならなかったりした多くのアスリートやアーティストたちの物語だ。最終的には、人々の思いやりや協力が勝利するのだということを世界に示す映画を作ることができたと信じている。

この芸術的で映画的な合作が、盲目的な憎しみや相互破壊の狂乱を超えて、未来を共に築こうとする、アーティストやアスリート、そしてすべての人々への尊敬の印を込めた贈り物となりますように。

ガイ・ナッティヴ&ザーラ・アミール

『TATAMI』
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン、ナディーン・マーシャル
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール
脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ
原題:TATAMI 字幕:間渕康子
2023年/アメリカ、ジョージア/英語、ペルシア語/103分/モノクロ/1.78:1/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
(c) 2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

公式サイト:https://mimosafilms.com/tatami/

2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

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