福士蒼汰と松本まりかのW主演映画『湖の女たち』が劇場公開されることが決定した。
琵琶湖近くの介護施設で百歳の老人が不可解な死を遂げた。老人を延命させていた人工呼吸器の誤作動による事故か、それとも何者かによる殺人か。謎を追う刑事たちと介護士の女、そして過去の事件を探る記者の行方は、深淵なる湖に沈んだ恐るべき記憶にのみ込まれていく―。
原作は吉田修一による“現代の黙示録”とも言うべき同名小説。監督・脚本に『日日是好日』、『星の子』、『MOTHER マザー』の大森立嗣。第35回モスクワ国際映画祭で日本映画48年ぶりとなる審査員特別賞の快挙を始め、数々の国内賞を受賞した『さよなら渓谷』のタッグが満を持してここに実現。
撮影は2022年10月から2023年2月にかけて琵琶湖周辺を中心にオールロケによって実施され、4月に完成した。「この世のケガレと生の輝きが渦巻くようなものすごい小説」、「大きな挑戦でしたが映画にしたいと熱望し、なんとか完成までこぎつけました」と語る大森監督。完成した映画について吉田修一氏は「映画を見ていたつもりが、気がつけばずっとその映画に見られていたような感覚」、「ほんの少しの勇気によって世界が変わることを、あの涙が出るほど美しい湖の風景を通して観客にそっと教えてくれる」と称賛のコメントを寄せる。
主演は、事件を追う刑事・濱中圭介役に福士蒼汰、事件が起きた施設の介護士・豊田佳代役に松本まりか。初共演となる本作で挑むのは、事件が袋小路に入り込むにつれ、インモラルな関係性に溺れて行く刑事と容疑者という難役。
吉田修一氏は二人に対し「何かを問いかけるような凄みが強く伝わってくる」「二人の姿に根源的なことまで考えさせられた」と語る。撮影を振り返り、福士蒼汰は「今まで経験したことのない役柄だったので、僕にとって非常に大きな挑戦であり、役者人生におけるターニングポイントと呼べる作品となったと自負しています」、松本まりかは「あの強烈な映画体験は、生涯この身体から離れることはないでしょう」と、その挑戦的な役どころに全身全霊で向かい合ったことへ、熱のこもったコメントを寄せた。
福士蒼汰、松本まりか、大森立嗣監督、原作の吉田修一から寄せられたコメント全文は以下の通り。
コメント全文(敬称略)
福士蒼汰
圭介は今まで経験したことのない役柄だったので、僕にとって非常に大きな挑戦であり、役者人生におけるターニングポイントと呼べる作品となったと自負しています。
原作や台本を読み込み、撮影に向けて準備を整えて臨みましたが、役者がすべきことは”その場の空気に身を置く”こと、思考を取っ払って感じるがままを表現することだと、改めて気付かされた現場でした。
大森監督が僕を原点に引き戻して下さったのだと感じています。
“わかりやすさ”や”意味”を求められることが多い昨今ですが、この作品では、人間の奥底で疼く何かを感じていただきたいです。言葉だけでは説明がつかない人間という生き物を、湖の絶景と共に受け止めていただけたらと思います。
松本まりか
大森立嗣という人はただひたすらに私を見つめ続けました。
何も語らず肯定し続けました。
私は認められ解き放たれ自由であることに戸惑いました。芝居は俳優はこうあるべきとか、誰かが決めてくれた常識を鵜呑みして従い縛られ生きることに安心感を覚えていること…なんならその不自由さを求めてすらいることに気がつきました。自分は何者なのか、何がしたいのか、何がしたくてここまできたのか、自分の中に何があるのか、何もない、持たない、結局何者でもないことを突き付けられ、焦り、限界を知り、静かに壊れてゆきました。
そこに至って私はようやく、自分を守る、偽るガードが崩れ、その隙から本当に美しいもの、その本質に一瞬、出会うことが出来たのです。
それは私であり佳代であり、自分と役を隔てるものはなかったように思います。
ラストシーン。
彩りを帯びてゆく空と湖、逆光の大森組が三位一体になった夜明け。
あんなにも美しい景色を見たのは初めてでした。
どうしようもなく此処で生きたいと思ってしまった。
「誰かを信じ切る」という監督の揺るぎない覚悟と共に、
あの強烈な映画体験は、生涯この身体から離れることはないでしょう。
監督・脚本:大森立嗣
吉田修一さんの『湖の女たち』と言う小説を読みました。この世のケガレと生の輝きが渦巻くようなものすごい小説でした。沸々とした気持ちを抑えられず、大きな挑戦でしたが映画にしたいと熱望し、なんとか完成までこぎつけました。福士蒼汰と松本まりかが主演です。二人は本当に素晴らしい演技をしています。今は心に響く映画になったのではないかと思っていますが、どのように伝わるか緊張の中にいます。どうか皆さまに届きますように。
原作・吉田修一
海は眺めるものだが、湖はこちらを見つめてくる。
本作を観終わって尚、ざわざわと落ち着かぬ心にそんな言葉が浮かんでくる。
映画を見ていたつもりが、気がつけばずっとその映画に見られていたような感覚だった。
劇中、不毛でアブノーマルな性愛に溺れていく男女を演じる福士蒼汰さんと松本まりかさんからも、その何かを問いかけるような凄みが強く伝わってくる。
二人が重ね合わせるのは体ではなく、互いの弱さである。互いが日常生活で抱えている服従心である。
では人はどのようなときに服従を選択するか。
自由を奪われたときである。
では自由とは何か。
それは恐怖心がないということだ。
とすれば、服従心というのは、恐怖心への対抗策であり、自由を希求する心であるとも言える。
暗い湖に落ちていくような二人の姿に、そんな根源的なことまで考えさせられた。
本作で描かれるのはグロテスクな事件であり、目を背けたくなるような人間の弱さである。しかしその人間の弱さこそが、物語を生み、歴史となっていくことを大森立嗣監督は伝えてくる。
そしてそれでも尚、ほんの少しの勇気によって世界が変わることを、あの涙が出るほど美しい湖の風景を通して観客にそっと教えてくれる。
『湖の女たち』
出演:福士蒼汰、松本まりか
原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊)
監督・脚本:大森立嗣
製作幹事:東京テアトル、ヨアケ
制作プロダクション:ヨアケ
配給:東京テアトル、ヨアケ
(C)2024 映画「湖の女たち」製作委員会
公式サイト:thewomeninthelakes.jp
公式Twitter:@thewomeninthelakes
2024年初夏 全国公開