
舞台挨拶に立った佐古監督は、「先行公開となった沖縄でも朝早くから多くの観客の皆様に劇場に足を運んでいただき、とても感慨深いものがありましたが、今日のこの東京公開を皮切りに全国へ公開が拡がって行くと言う何とも言えない感動が有ります。そして、沖縄の観客の方々の多くは、大田知事/翁長知事と同じ時代を生き、事象がまだ続いている場所にいる当事者の方々であり、“気持ちを代弁してくれてありがとう”と言う胸に迫る感想をいただきました。この東京公開を皮切りに、今度は本土の方々からどんな感想を頂けるのか楽しみですし、(沖縄の)桜坂劇場の方からは、“東京の観客の反応をレポートとしてまとめて報告を!”と言われております(笑)」と、東京での初日を迎えた感想や手ごたえを語った。
また、本作を撮ろうと思った理由について「沖縄現代史と言えば、辺野古を巡るこの30年の国と沖縄の関係であると思っていますし、その起点に居た大田さんと翁長さんは本作を撮る上で外せない、そして、政治的立場は正反対で、“相克”の関係にあったこの二人が、なぜ、あれほど重なって行ったのか?/翁長さんの言動があれ程否定していた大田さんになぜ近付いて行ったのか?、そこに非常に興味を持ち、二人の関係性を描けば、そこに沖縄の歴史が見えるのではと思いました」と明かした。

さらに、本作のタイトルに込めた思いについて、佐古監督は「沖縄の象徴と言えば、“太陽(ティダ)”、この言葉を先ず是非タイトルに入れたかった。さらに、ティダはかつて琉球王国で首長/リーダーを表す言葉であったこと、そして(初代沖縄県知事の)屋良朝苗さんの日記に度々登場する“運命”と言う言葉、“リーダーの運命は、沖縄の運命”と思い、更には、大田さん/翁長さんを始め沖縄の歴代の知事達が“沖縄の運命”にどう立ち向かってきたかを描きたかった、そう言った想いで付けたタイトルです」とコメント。
そして、佐古監督にとって沖縄とは?という問いに対し、「“沖縄に行けば、日本が見える/沖縄にはこの国の矛盾が詰まっている”、筑紫哲也さんのこの言葉が今も、背中を押してくれている気がします。カメジロー(瀬長亀次郎)さんの時代から続く、“民衆への信頼感を持ったリーダー/そのリーダーに応える民衆”、これこそが沖縄県知事であり、他の県には無い風景を見ることが出来る。なぜ沖縄だけがそうあるのか、そして沖縄と国の関係、それを伝えたいと言う想いが、沖縄を撮り続けている理由です」と語った。

最後に、佐古監督は観客に向け、「1つのニュースを報道する事にも、膨大な労力を使いますが、言ってみればニュースは“点”。時間が経つと忘れさられてしまう事も有ります。それに対して、今回の様な映画は、点と点が“線”となり、事象の繋がり/流れをじっくりと把握することが出来ます。“線”で伝えられることの重要さ、それを伝えられればと言う点に拘りました。本日は、本当にありがとうございました」と自身の思いと感謝を伝えた。
『太陽(ティダ)の運命』は、すでに沖縄にて先行公開中。そして東京に続き、全国で順次公開される。

ストーリー
政治的立場は正反対であり互いに反目しながらも国と激しく対峙した二人の沖縄県知事がいた。1972年の本土復帰後、第4代知事の大田昌秀(おおた・まさひで 任期1990~98年)と第7代知事の翁長雄志(おなが・たけし 任期2014~18年)である。ともに県民から幅広い支持を得、保革にとらわれず県政を運営した。大田は、軍用地強制使用の代理署名拒否(1995)、一方の翁長は、辺野古埋め立て承認の取り消し(2015)によって国と法廷で争い、民主主義や地方自治のあり方、この国の矛盾を浮き彫りにした。大田と翁長、二人の「ティダ」(太陽の意。はるか昔の沖縄で首長=リーダーを表した言葉)は、知事として何を目指し、何と闘い、何に挫折し、そして何を成したのか。二人が相克の果てにたどり着いたものとは何か。そこから見えるこの国の現在地とは―。
公式サイト:https://tida-unmei.com
3月22日(土)より沖縄 桜坂劇場 先行公開中、
4月19日(土)より東京 ユーロスペースほか全国順次公開