【レポート】『コンプリシティ/優しい共犯』藤竜也、ルー・ユーライ、近浦啓監督登壇!本作に込めたメッセ―ジとは

コンプリシティ/優しい共犯

短編映画『SIGNATURE』が第70回ロカルノ国際映画祭ほかで高い評価を受けた近浦啓監督の長編映画デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』が1月17日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーとなる。

技能実習の職場から逃亡、他人になりすまして働きにきた中国人青年チェン・リャンと、彼を受け入れる孤独な蕎麦職人・弘は親子のような関係を築いていくが、不法滞在者を追う警察の手がチェン・リャンに迫る。二人はお互いの幸せを願い、ある決断をする。嘘の上に築いた絆の行方とは―。この決断をあなたは許せるだろうか―?技能実習生の不法滞在という現代社会の問題を鋭く突き、日中の実力派俳優の名演が光る傑作が遂に日本に上陸する。

メガホンをとったのは、本作が長編映画デビューとなる近浦啓監督。短編映画『SIGNATURE』が第70回ロカルノ国際映画祭ほかで高い評価を受け、米アカデミー賞公認映画祭であるエンカウンター短編&アニメーション映画祭でグランプリを受賞した。本作は北米最大の映画祭・トロント国際映画祭でワールド・プレミア上映され、続いて釜山、ベルリンと世界の名だたる映画祭へ入選し正式出品、そして厳しい目を持つ映画ファンが集まる東京フィルメックスで観客賞を受賞する世界の映画祭で話題を集めている。

主人公の青年チェン・リャンを演じるのは第55回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞受賞の『孔雀 ―我が家の風景―』でデビューした中国人俳優・ルー・ユーライ。そしてチャン・リャンの、時に厳しい上司であり時に優しい父のような存在である厳格な蕎麦屋の主人・弘を、日本を代表する名優・藤竜也

このたび、主演のルー・ユーライ、藤竜也、近浦啓監督が日本外国特派員協会の記者会見に登壇した。本作で、監督とキャストが揃って登壇するイベントは今回が初であり、多くの記者たちを前に本作に込めたメッセ―ジなどを語った。

■日時:2020年1月15日(水)20:45~21:30
■場所:公益社団法人 日本外国特派員協会
■登壇:ルー・ユーライ、藤竜也、近浦啓監督(敬省略)

上映後、大きな拍手が沸き上がる中、登壇した近浦監督は「劇場配給が決まってもないのに、日本でも海外でも上映できるような作品にします、という僕を信じて集まってくれたスタッフとクルーに感謝します。そしてその約束が果たせました」と日本での公開を噛み締め、「トロントやベルリンの映画祭で選んでくれたことも大きくて、深く感謝しております」と挨拶。それを聞いて「(公開まで)ずいぶん長かったですね。おめでとうございます。脚本を読んだ時に力があったから、こういうことになると信じていた。そういう脚本だった」とは絶賛。

主人公の青年チェン・リャン演じた主演のルー・ユーライも公開に先駆け、日本に来日。「僕自身も監督をしているので分かるが、大変な撮影だったと思う。しかし監督は信念をもって一歩ずつ完成させていた」とその手腕に触れ、「(本作の撮影を通して)藤竜也さんと共演できたことは大切な思い出です」と憧れの藤を前に微笑んだ。

「日本にいる移民のコミュニティを描きそのディテールの細かさに驚いた。自身の経験をどのように生かしたのか」との記者から質問に、近浦監督は「2014年にベトナム人の技能実習生がヤギを殺して食べたというニュースに衝撃を受け、そこから取材に1年半かけた」と明かした。

蕎麦職人の弘を演じたには、蕎麦作りについての質問が飛び、「撮影前に本物の蕎麦職人に弟子入りし70キロ以上分の蕎麦粉を打ちました。職人になってしまえば、それでいいんです。田舎の蕎麦職人になって、ユーライさんが演じる悲しい外国から来た人間に対して、こんな遠くにきて働いてくれてありがとうっていう感謝の気持ちになりました」と徹底した役作りを明かすと、近浦監督も「本物の蕎麦職人たちも藤さんの蕎麦打ちの音が本物だったと認めていました」と本格的な役作りを絶賛。ルーも「蕎麦作りを通して藤さんと繋がりを感じました。藤さんが蕎麦を打つ姿はオーラがあって、本当の父の様に感じました」と述べた。

ルー演じるチェン・リャンが中国で暮らしていた時のシーンは、中国で5日間にわたって撮影が行われた。ロケ地を見つけるのに苦労したようで、「共にプロデューサーを務めた中国の映像作家フー・ウェイの協力が大きかった」と話し、現在、中国での公開も視野にいれていると明かした。

映画を鑑賞した記者からは「家族の絆を強く感じた」という感想が飛び、「この映画は移民について社会問題についての映画ではなく、一人の青年が異国の地に来て何人かの大事な人々と会う、そういった物語です。あくまで社会問題は設定であって、2010年代の日本に生きている中国人の青年とそれを迎え入れる蕎麦職人、彼らが家族のような関係になっていく、それは僕にとって大切な描く対象でした」と近浦監督ルーも「見知らぬ二人が出会い関係を築くそういった様を描いている。やはり人生はどういった人と出会い、その出会いがどのようなものをもたらすのかつくづくわからないものだなと感慨深い気持ちです」と続けた。

最後に、公開を間近に控え「ずいぶん長かった。裁判所に出る被告のような気分です」とが笑いを誘い、終始あたたかい雰囲気に包まれた記者会見は幕を閉じた。

映画『コンプリシティ/優しい共犯』は1月17日 (金)より新宿武蔵野館にてロードショー。

作品タイトル:『コンプリシティ/優しい共犯』
出演:ルー・ユーライ 藤竜也
赤坂沙世 松本紀保 バオ・リンユ シェ・リ ヨン・ジョン 塚原大助 浜谷康幸 石田佳央 堺小春 / 占部房子
監督・脚本・編集:近浦啓
主題歌:テレサ・テン「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」(ユニバーサル ミュージック/USMジャパン)
製作:クレイテプス Mystigri Pictures
制作プロダクション:クレイテプス
2018/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/116分
配給:クロックワークス

公式サイト:http://complicity.movie
コピーライト:(C)2018 CREATPS / Mystigri Pictures

2020年1月17日 (金)より新宿武蔵野館にてロードショー

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