映画『エゴイスト』(2月10日(金)公開)の日本外国特派員協会記者会見に、宮沢氷魚、松永大司監督が登壇した。この日は海外メディアによる試写鑑賞後、質疑応答形式の会見となり、宮沢がネイティブレベルの英語力を駆使して海外に向けた会見に臨んだ。
映画『エゴイスト』日本外国特派員協会記者会見 概要
日程:2月6日(月)
時間: 20:05~20:50 キャスト・監督 Q&A・フォトセッション
登壇者(敬称略):宮沢氷魚、松永大司監督
会場:公益財団法人日本外国特派員協会
宮沢は英語を話すのは久しぶりだと話したが、「お招きいただき光栄に思います。また、素晴らしい監督とご一緒することができて感謝しています。ここにくるのは前々からの夢だったので嬉しいのですが、英語を話すのは久しぶりなのでお聞き苦しい点があったらご容赦ください。」と冒頭から流暢な英語で自己紹介とともに挨拶した。
松永監督はこのテーマを手掛けようと思った動機について聞かれると、2つの理由があるといい、「1つ目は2011年のデビュー作『ピュ~ぴる』で、様々な海外映画祭に招待され、その中でLGBTQ+を取り囲む環境が圧倒的に日本と違いました。それから10年以上経って、以前よりは理解され、言葉が浸透していってる気がしますが、先日の岸田首相の『同性婚を認めると社会が変わる』という発言や、首相秘書官の同性愛者への差別的な発言は、誤解や大きな差別を生むと思っています。この映画はLGBTQ+に対しての定義や理解を深く求めるものではありませんが、この映画を見た方が考えるきっかけになったら良いなと思ったことです。LGBTQ +用語を正確にメディアの方に伝えてもらうのも僕らの役割だと思うので、プレス資料の後ろに用語集をつけました。2つ目は、阿川佐和子さん演じる妙子が愛について伝えている言葉があり、それを読んで映画にしようと思いました。」と丁寧に答えた。
続いて龍太役を引き受けた理由について聞かれた宮沢は、「今回のオファーを受けるそのさらに2年前に1回目のオファーがあったときは実現できませんでした。そこから再度お話をいただいたときに決め手となったのは15年来の友人との体験でした。彼はゲイで、知り合ってからずっと、心地よく過ごせる自分の居場所を探しているように感じました。この映画を作ることを通して、友人のためになるのではないか、そしてLGBTQ+コミュニティのためにもなるのではないかと考えました。」と自身の体験から出演を決めたことを明かした。
会場から質問を募ると、早速『エゴイスト』と言うタイトルの理由が聞かれた。高山真の小説「エゴイスト」が原作となった本作だが、松永監督は「一般的に『エゴイスト』と言う言葉はポジティブな意味では使われない。この映画で描かれている「エゴイスト」については、主人公の行動が悪いことなのか、良いことなのか、愛のあり方とはどういうことなのか、を問いたいなと思ってそのままつけました。観る前と観た後とで、「エゴイスト」の意味が変わると良いなと思います。」とタイトルに込められた思いを明かしてくれた。
演出について聞かれた宮沢は、「松永監督の演出がユニークで、撮影に入る前にリハーサルを重ねていきました。脚本ベースではなく、監督からはシーンの展開の説明のみだったので、即興で芝居をする感じでした。脚本に書かれている言葉がそのままセリフになるのではなく、お互いに開かれた気持ちで自由にやらせていただいたので、いきいきとした芝居になったかなと思います。慣れない撮り方でしたが、自分の感情が湧き出て刺激的な体験となりました。」と、これまでにない演出と現場であったことを告白。見事な英語を披露した。
続いてクレジットの中に出てくるIntimacy choreographerという役割について、Intimacyシーンを撮るにあたってどのように感じたかという質問に宮沢は、「過去にIntimacy choreographerが現場に付くというのがこれまでの現場ではありませんでした。これからはIntimacy choreographerがいないという現場が想像できません。こういうサポートがあるというのは日本映画において大きな一歩であると思います。」とIntimacy choreographerの存在が安心できる上にIntimacy シーンの同意については必要であると回答した。
また本作でのIntimacy choreographerとLGBTQ+ inclusive directorという担当者について質問があがると、松永監督は「この作品は誰1人欠けても完成させることはできませんでした」と語り、「LGBTQ+ inclusive directorとして入ってくれたミヤタ廉さんの存在はとても大きかったです。」とその存在について明かした。居酒屋のシーンなどで出演する浩輔の友人は、皆ゲイ当事者であるため、彼らを探す相談をしたり、Intimacy choreographerのSeigoも誘ってもらったと明かした。宣伝において正確な言葉を伝えるために、監修をしてくれている松岡宗嗣について紹介し、ミヤタ廉と松岡宗嗣が今日も記者会見を見守っていることに感謝をすると会場は拍手に包まれた。
海外記者からミヤタ廉とSeigoは現場ではどういったことをしたたのか具体的に質問されると、松永監督は「細かく所作やセックスのシーンなど細かい部分を一緒にモニター越しで観てもらい、役者が何か演技でわからないことがあったときは、常に2人(ミヤタ廉、Seigo)に質問してもらうようにしていました」とふたりの役割について説明した。
記者から、更迭された首相秘書官のLGBTQ +に関する不適切な発言に対してどう思われるのか、そして日本社会のLGBTQ +に対する理解不寛容、法制化の遅れに対してどう思うのか質問されると、宮沢は、政治的な発言はあまり表立って述べてこなかったと語るも、「発言が出たことによって、たくさんの人が声を上げて、その失言に意見をする姿をたくさん見ることができました。日本の今までの歴史を考えても、間違いなく前進はしていると思いますが、他国に比べると遅れを取っているところもあると思います。そんな中、世論がたくさんの声を上げたことは日本の未来に希望が見えました。とても悲しい出来事ですが、それによって前向きな皆の意思の強さが見えましたし、そこに、もっと注目が集まってもいいんじゃないかなと思っています」と自身の気持ちを述べた。
最後に司会者より、どうしてもしたい質問があるとのことで、「2015年に鈴木さんが外国特派員協会記者会見に登壇され、なぜハリウッドに出ないのかという質問に対して鈴木さんはまだ日本で学ぶことがたくさんあると答えたが、宮沢さんはいかがでしょうか。」と問われた宮沢は、「海外で活躍することは大きな夢の一つではあり、ハリウッドやアメリカだけでなく国外のどこかで活躍するために試行錯誤しています」と語った。
そして今年ロンドンに行く機会があり、海外の役者に圧倒され、「自分も近い将来願わくば海外で撮影された作品を携えて、日本外国特派員協会記者会見に参加するために最善を尽くして頑張ります。」と海外進出への意欲を示した。
ストーリー
14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし2人でドライブに出かける約束をしていたある日、何故か龍太は姿を現さなかった。
作品タイトル:『エゴイスト』
出演:鈴木亮平 宮沢氷魚
中村優子 和田庵 ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明
阿川佐和子
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊)
音楽:世武裕子
企画・プロデューサー:明石直弓
プロデューサー:横山蘭平 紀嘉久
ラインプロデューサー:和氣俊之 撮影:池田直矢 照明:舘野秀樹
サウンドデザイン:石坂紘行 録音:弥栄裕樹 小牧将人 美術・装飾:佐藤希 編集:早野亮
LGBTQ+inclusive director:ミヤタ廉
スタイリスト:篠塚奈美 ヘアメイクデザイン:宮田靖士
ヘアメイク:山田みずき 久慈拓路 助監督:松下洋平 制作担当:阿部史嗣
制作プロダクション:ROBOT
製作:「エゴイスト」製作委員会(東京テアトル/日活/ライツキューブ/ROBOT)
R-15
製作幹事・配給:東京テアトル
公式サイト:www.egoist-movie.com
公式Twitter:@egoist_movie
コピーライト:(C) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
2月10日(金) 全国公開
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