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【レポート】『冬時間のパリ』オリヴィエ・アサイヤス監督、樋口泰人氏、坂本安美氏が映画と出版業界への熱い想いを語る

冬時間のパリ

ジュリエット・ビノシュギョーム・カネヴァンサン・マケーニュなどフランスを代表するスターが出演する、名匠オリヴィエ・アサイヤス監督最新作『冬時間のパリ』が12月20日(金)Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショーとなる。

この度、本作のオリヴィエ・アサイヤス監督樋口泰人氏(映画批評家/boid主宰)、坂本安美氏(アンスティチュ・フランセ日本の映画プログラム主任)登壇のスペシャルトーク付き試写会が実施された。

目次

イベント概要

【日程】12月2日(月)
【場所】アンスティチュ・フランセ東京
【登壇者】オリヴィエ・アサイヤス監督、樋口泰人、坂本安美

本作はエリック・ロメールの『木と市長と文化会館』に着想を得た、オリヴィエ・アサイヤス監督の新境地ともいえる作品。魅力的な冬のパリを背景に、二組の夫婦の愛の行方と紙からデジタルへと移り行く出版業界の今を巧みに共鳴させつつ、洗練された会話とユーモアで活写していく。

冬時間のパリ

坂本氏は導入として、「ある一人のアーティストの旅の記録でもあり、その旅というのは新たな作品と共に更新されていくものだといつもおっしゃっているオリヴィエ・アサイヤス監督の旅に常に付き添い、その度に刺激を与えあってきた樋口泰人さん。本日、この二人をお迎えでき、皆さんと共にお話を聞けるのは幸福なことだと思います」と挨拶。

樋口氏は、「『冬時間のパリ』は、新しい映画を観たという感じです。登場人物はみんな中年なんだけれど、例えば日本の若い才能のある監督たちが撮った群像劇に見えてしまって、その新しさ、どうしてそう見えるのか考えたいと思った。アサイヤス監督は30年以上のキャリアをお持ちですが、彼にとっては初めてのコメディ映画だと言ってもいいのではないでしょうか」と感想を述べ、続けて「あなたの長いキャリアの中での『冬時間のパリ』という作品はどういった意味を持つのでしょうか」とアサイヤス監督に投げかける。

アサイヤス監督は「コメディ映画にするという意図は最初から明確にあったわけではなかった。脚本を書き続けてようやく出来上がったときに、この作品はコメディとして位置づけられるのではないかと考えたのです。今回シナリオはシーンごとに書き進めていったのですが、自分自身がこの作品のプロセスを少しずつ発見していったという感じです。これまではシーンで有用性みたいなことを考えながら書いていたのですが、今回は非常に喜びに溢れ、楽しみながら各シーンを書き進めていきました」と明かした。

「10年周期で関係性がある作品を作っている印象がありますが」との樋口氏の指摘には「私は映画監督として、今自分が生きている世界のことを語りたいという欲求があるんです。映像で語ることによって、それがその世代を描いた作品になるという、そういう気持ちで映画を撮っています。ですから次の10年後には、世界が撮るに値するぐらい変わっていて欲しいとは思います。自分自身でも説明がつかないのですが、時を経るごとに歳を重ねるごとに、どんどん作品の中のトーンというものが軽やかに光の方へ。そして愉快なものへと導かれているような気がします」と答えた。

樋口氏が演出の部分について「役者陣がセリフに血や肉を与えるために、何かヒントや指示したことはあったんですか」との質問には「まったくその逆です。感情面がとても重要なシーンであればあるほど、私からアドバイスやヒントを出すことは一切ありません。なぜなら、彼らが演じる際に表れてくるものは彼らの自発的な感情であってほしいのです。決して、こうして欲しいというような無理強いをする演出方法は好みません」と熱く語った。
坂本氏も「『冬時間のパリ』は感情が先にあって、それを言葉にしているというよりも、言葉が感情を引き出しているというように言葉の力を感じますよね」と付け加えた。

冬時間のパリ

レオナール(ヴァンサン・マケーニュ)

 

冬時間のパリ

セレナ(ジュリエット・ビノシュ)

 

冬時間のパリ

ヴァレリー(ノラ・ハムザウィ)

 

冬時間のパリ

ローレ(クリスタ・テレ)

本作のクライマックスにおいて、海辺でバイクに乗る夫婦のシーンの音楽がとても印象的だったと語る樋口氏は「あのシーンの音楽を聞いたときに、一気に世界が変わる感じがしました。そしてアサイヤス監督の過去作『夏時間の庭』の最後で流れるインクレディブル・ストリング・バンドのギターの響きと重なって、ふたつの映画があのシーンで、一緒に迫ってくる感じがしたんです」と氏ならではの意見に、アサイヤス監督も「そうですね、この作品も『夏時間の庭』も自然の中で、緑の豊かな所でドラマが展開するシーンがありますからね」と笑顔で同意した。

出版業界のデジタル化も本作のテーマのひとつで、自身も本やCDを発売している樋口氏はそのテーマについて日々話し合っているようで「自分の書籍なども含め、スマホで読まれるということをどう思っていますか」と監督に問いかけると「実は、今でもちゃんと、紙の本を読み続けている人々は多いのです。電子書籍は思ったよりも普及していないように思えます。本は消えていくのか?私はそうは思いません。楽観的な考えかもしれませんが、書籍としての本は残り続けるだろうし、映画もちゃんと映画館で観られていくのです。そういったフィジカルな存在は、このデジタル革命の中でも消えずに、バーチャルなものと共存して残っていくのだろうと私は確信しています。私自身、まだベルイマンやブレッソンのブルーレイディスクを棚に並べて、その隙間を埋めていく喜びを持っています。たとえ、デジタル化すれば、その半分以下のスペースで済むのだとしてもね」と出版業界と映画についての強い想いを客席に述べ、30分近く時間を延長するほど盛り上がったトークイベントは幕を閉じた。

人生は一冊の本に似ている

ストーリー
敏腕編集者のアラン(ギョーム・カネ)は電子書籍ブームが押し寄せる中、なんとか時代に順応しようと努力していた。そんな中、作家で友人のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)から、不倫をテーマにした新作の相談を受ける。内心、彼の作風を古臭いと感じているアランだが、女優の妻・セレナ(ジュリエット・ビノシュ)の意見は正反対だった。そもそも最近、二人の仲は上手くいっていない。アランは年下のアシスタントと不倫中で、セレナの方もレオナールと秘密の関係を結んでいる。
時の流れと共に、変わりゆくもの、変わらないもの――それは何?

作品タイトル:『冬時間のパリ』
出演:ジュリエット・ビノシュ、ギョーム・カネ、ヴァンサン・マケーニュ、クリスタ・テレ、パスカル・グレゴリー
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス『夏時間の庭』『アクトレス 女たちの舞台』
撮影監督:ヨリック・ル・ソー『ミラノ、愛に生きる』
製作:シルビー・バルト『COLDWAR あの歌、2つの心』、シャルル・ジリベール『パーソナル・ショッパー』
2018年/フランス/フランス語/107分
原題:Doubles Vies
英題:Non-Fiction
日本語字幕:岩辺いずみ
協力:東京国際映画祭
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:トランスフォーマー

公式サイト;http://www.transformer.co.jp/m/Fuyujikan_Paris/
公式Twitter:@fuyujikan_paris
公式Facebook:@fuyujikan.paris
コピーライト:(c)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

12/20(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

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