【レポート】『ケイコ 目を澄ませて』世界の映画祭を経てついに日本初披露!三宅唱監督が語る主演・岸井ゆきのの魅力とは

ケイコ 目を澄ませて

第72回ベルリン国際映画祭をはじめ、各国の映画祭に出品が決定し注目を集める映画『ケイコ 目を澄ませて』(12月16日全国公開)のジャパンプレミアが第35回東京国際映画祭で行われ、三宅唱監督が上映後のQ&Aに登壇した。

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映画『ケイコ 目を澄ませて』東京国際映画祭公式上映・Q&Aイベント 概要

日時:10月30日(日) 20:50~21:20
登壇者:三宅唱監督
会場:角川シネマ有楽町

本作は、聴覚障害と向き合いながら、実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんの生き方に着想を得てつくられた新たな物語。

三宅監督は本作誕生の経緯について「簡単に言えば、小笠原恵子さんのカッコ良さに惹かれました。彼女をモデルに映画として新しいものを作りたかった」と明かし、「ボクシングは撮影の3か月前から岸井さんも僕も練習を始めて、撮影期間は約20日間というタイトな中で行いました。僕としてはもっと撮っていたかったけれど、岸井さんは『それくらいが丁度いい!それ以上は無理!』と(笑)。それだけ身体的負荷が高い中で岸井さんは誠心誠意この映画に向き合ってくれました」と主演女優・岸井ゆきのに感謝を述べた。

そんな岸井の印象については「岸井さんを表現する言葉を自分は持っていなくて、なかなか言葉にしづらい。それに言葉にした瞬間に終わりそうで、まだ終わりたくないという気持ちもある。緊張していたので初めて会った際の第一印象は覚えていませんが、岸井さんは僕を見てメッチャ怖かったそうです」と笑わせつつ、「皆さんにはこの映画で見た岸井さんとケイコという存在をたくさん言葉にしてほしいです」と期待を寄せた。

さらに、「岸井さんは今日来ることが出来ず本当に残念がっていました。そして“本当にありがとうございます!”と言付かっています」とメッセージを伝えると、観客から拍手が巻き起こった。

『ケイコ 目を澄ませて』というタイトルから岸井の目に注目しがちだが、三宅監督は環境音など音の演出にもこだわった。その理由について「ろう者とのコミュニケーションを通して音の聴こえ方が自分とは違うということを改めて意識して、その経験に基づいて音を設計するのが非当事者である自分が取れる最大の方法だと思った」と明かし、「“目を澄ませて”というタイトルですが、音にも注目してほしいです」と呼び掛けた。

また16mmフィルムで撮影した狙いについては「フィルムが好きというのもあるし、フィルムで撮ることによって、アクションシーンを何度も撮るということを避けたかった。また16mmフィルムで撮ることで、見慣れているものを普段とは違った見え方で見たいという思いもあった」と解説。

時代背景にコロナ禍という社会の現実を反映させているが「現代を舞台にする以上、今ある現実の世界から逃げることはできないと思ったし、コロナ禍の世界情勢を舞台にすることでこの作品で描きたかった題材をゆがめることなく強く表すこともできるとも思いました」と明かした。

健聴者がろう者を演じることについては「これまで当事者の方々の表現の機会が少ないという歴史的背景があって、そこに自分がどのように関わっていくべきなのかということは色々と考えた」と悩んだそうだが、物語のテーマは当事者(ろう者)と非当事者(健聴者)のコミュニケーション。三宅監督は「この映画はケイコだけの物語ではなく、当事者ではない他者がどのようにケイコとコミュニケーションをとって一緒にボクシングに向き合っていくのかということも描いています。僕らも非当事者という当事者として映画を観ます。そこで何か生まれるものがあるのではないかと…」と期待し、「映画とは、非当事者として別の世界のものを見る芸術。非当事者でしかない自分たちとしてどう世界と関わるのか?ということが映画には必要です。そのために俳優がいて映画という芸術があるのだと思います」と映画という表現媒体についても言及していた。

ストーリー
不安と勇気は背中あわせ。震える足で前に進む、彼女の瞳に映るもの――
嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。

作品タイトル:『ケイコ 目を澄ませて』
出演:岸井ゆきの
三浦誠己 松浦慎一郎 佐藤緋美
中原ナナ 足立智充 清水優 丈太郎  安光隆太郎
渡辺真起子 中村優子
中島ひろ子 仙道敦子 / 三浦友和
監督:三宅唱 
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱 酒井雅秋
製作:狩野隆也 五老剛 小西啓介 古賀俊輔
エグゼクティブプロデューサー:松岡雄浩 飯田雅裕 栗原忠慶
企画・プロデュース:長谷川晴彦 チーフプロデューサー:福嶋更一郎
プロデューサー:加藤優 神保友香 杉本雄介 城内政芳
French Coproducer:Masa Sawada
撮影:月永雄太 照明:藤井勇 録音:川井崇満 美術:井上心平 装飾:渡辺大智
衣裳:篠塚奈美 ヘアメイク:望月志穂美 遠山直美
ボクシング指導:松浦慎一郎 手話指導:堀康子 南瑠霞 手話監修:越智大輔
編集:大川景子 音響効果:大塚智子 助監督:松尾崇 制作担当:大川哲史
製作:「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会(メ~テレ 朝日新聞社 ハピネットファントム・スタジオ ザフール)文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
制作プロダクション:ザフール
2022年/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/99分
配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:https://happinet-phantom.com/keiko-movie/
公式Twitter:@movie_keiko
コピーライト:(C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

2022年12月16日(金)テアトル新宿ほか全国公開

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