第72回ベルリン国際映画祭をはじめ、各国の映画祭に出品が決定している三宅唱監督の最新作『ケイコ 目を澄ませて』(12月16日(金)公開)の先行特別上映会に、主演の岸井ゆきのと、岸井さんのトレーナー役で出演し、本作のボクシング指導も務めた松浦慎一郎、主人公ケイコのモデルで、ろう者の日本人女性で初めてプロボクサーとなった小笠原恵子、さらに特別ゲストとして、アマチュアボクシングで活躍した南海キャンディーズ・山崎静代が登壇した。
本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子をモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱が新たに生み出した物語。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと<目を澄ませて>闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けた。
映画『ケイコ 目を澄ませて』先行特別上映会 概要
日時:12月6日(火)20:05~20:30
登壇者(敬称略):岸井ゆきの、南海キャンディーズ・山崎静代、松浦慎一郎、小笠原恵子
会場:テアトル新宿
今年、映画やドラマ、舞台と出演作が続いた岸井。そんな2022年を締めくくる本作の公開を目前に控えた現在の心境を聞かれると、「三大映画祭のベルリンに作品が届いたのもそうだし、フィルムで撮る映画の現場に入るのも私の夢でした。『ケイコ 目を澄ませて』は私にとってとても大切な作品で、私の夢を叶えてくれた作品。私の夢と魂の籠った作品が公開されるのが嬉しいです」と喜びもひとしおだった。
特別ゲストとして登場し、アマチュアボクシングの経験もある山崎は、本作に出演していないのにも関わらず「どうも、ケイコの憧れるヘビー級ボクサーを演じました」と満面の笑みでボケながら、「ただのボクシング映画ではなくて、一人の女性として戦っているケイコの葛藤が共感できる熱い映画です」と本作を猛プッシュ。
続けて、撮影が始まる3か月前からボクシングトレーニングを行って役に挑んだ岸井の姿に「岸井さんの目がまずボクサーの目だと思った。あの目はお芝居だけでは出来ないもの。それだけ自分を追い込んで演じられたのが凄い」と賛辞を送り、岸井は「感激しております。ボクシングの基礎からしっかりとやらせていただいたのが自分の身になったと思います」と喜んでいた。
主人公ケイコのトレーナー役として出演し、本作のボクシング指導も務めた松浦が、岸井との高速ミット打ちシーンについて「ある程度のベースは決まっていたけれど、流れは決まっていなかった。岸井さんはどの手が来るのかわかっていなかった」と、即興だったという驚きの舞台裏を明かすと、山崎は「あれを自然に瞬時にやっていたんや。すげえ…」と驚愕。
さらに、これまで数多くのボクシング映画に関わってきた松浦が「正直、岸井さんは一番ボクシングから遠い人だったけれど、一番努力して一番頑張った人」と明かすと、山崎は「それをよくぞあそこまで…凄い」と岸井の努力の結晶を賞嘆していた。
その岸井は、本作でボクシング初挑戦となったが「ボクシングトレーニングを積んでいくうちに、これは自分自身との戦いだとわかる瞬間がありました。ボクサーならではの縄跳びができるようになっていく瞬間、パンチが強くなっていく瞬間、パンチが早くなっていく瞬間。それは私が練習しているからこそ習得できたもの。それを実感してからはボクシングが好きなりました」とボクシングが持つ魅力にドップリ。
するとドラマでボクシングを経験したことからボクシングにハマったという山崎は「そこからよ。私もドラマでボクシングをやってからオリンピックを目指したから。もしかしたら岸井さんも…」とニヤリとし、岸井も「もしかしたら…まずはスパーリングから始めたい」と満更ではないようだった。
またケイコとの共通点について、岸井は“口数が少ない”点を挙げて「ケイコは手話言語を使ってもお喋りな方じゃない。私もプライベートではお喋りじゃないし、頭で考えて言葉になっているときにはもうその話題は終わっている。でもそれを発散するために私は文章を書きます。ケイコも同じように文字で発散するので、その気持ちが理解できました」と共感を寄せながら、「共感というよりも、もはやケイコの目線でものを見ている感覚がありました。ケイコは私だと思っていました」と魂を共有しているようだった。
そして、最後に登場したケイコのモデルになった小笠原は、手話通訳を介して「昔の自分を思い出して涙が出ました。映画を作る前に岸井さんとは一度も会ったことがないのに、私の行動や表情が似ていて凄いと思った。初めて邦画を見て素晴らしいと感じました」と絶賛。
この言葉に岸井は「本当に嬉しいです」と目に涙を浮かべながら、「ゼロ号試写の時に2人で号泣して『今度一緒にボクシングをやろう!』と約束をしました」と固い絆を感じさせた。
イベントの締めくくりに、主演の岸井は「この映画はボクシングを基にして物語を作っているけれど、ケイコの生き方の物語だと思っています。ケイコと生き方は違うかもしれないけれど、この時代に共に生きているという共通点から皆さんに何かを感じていただければと思います。公開の際にも色々な方に観ていただいて、色々な感想を聞きたいです!」と目前に迫った全国公開に期待を抱いていた。
ストーリー
不安と勇気は背中あわせ。震える足で前に進む、彼女の瞳に映るもの――
嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。
作品タイトル:『ケイコ 目を澄ませて』
出演:岸井ゆきの
三浦誠己 松浦慎一郎 佐藤緋美
中原ナナ 足立智充 清水優 丈太郎 安光隆太郎
渡辺真起子 中村優子
中島ひろ子 仙道敦子 / 三浦友和
監督:三宅唱
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱 酒井雅秋
製作:狩野隆也 五老剛 小西啓介 古賀俊輔
エグゼクティブプロデューサー:松岡雄浩 飯田雅裕 栗原忠慶
企画・プロデュース:長谷川晴彦 チーフプロデューサー:福嶋更一郎
プロデューサー:加藤優 神保友香 杉本雄介 城内政芳
French Coproducer:Masa Sawada
撮影:月永雄太 照明:藤井勇 録音:川井崇満 美術:井上心平 装飾:渡辺大智
衣裳:篠塚奈美 ヘアメイク:望月志穂美 遠山直美
ボクシング指導:松浦慎一郎 手話指導:堀康子 南瑠霞 手話監修:越智大輔
編集:大川景子 音響効果:大塚智子 助監督:松尾崇 制作担当:大川哲史
製作:「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会(メ~テレ 朝日新聞社 ハピネットファントム・スタジオ ザフール)文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
制作プロダクション:ザフール
2022年/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/99分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/keiko-movie/
公式Twitter:@movie_keiko
コピーライト:(C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS
2022年12月16日(金)テアトル新宿ほか全国公開
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