【レポート】『キューブリックに魅せられた男』トークショー付き試写会に矢追純一さん×内山一樹さん(映画研究者)登壇!

キューブリックに魅せられた男今なお世界に多大なる影響を与え続ける映画監督スタンリー・キューブリック。没後20年を迎えた今年、知られざるキューブリックの総てを、全く異なるアプローチから描いた2本の秀作ドキュメンタリー映画『キューブリックに愛された男』が、『キューブリックに魅せられた男』と史上初のカップリング上映で11月1日(金)より公開となる。

そして10月24日(木)、日本テレビのディレクターとして人気深夜番組「11PM」「木曜スペシャル」などを担当し、UFO及び超能力番組のディレクターとして活躍した矢追純一さんと、映画研究者でスタンリー・キューブリック作品に関する数々の論評を手掛ける内山一樹さんを迎え、本作のトークショー付き試写会が開催された。イベントでは、過去にキューブリック監督に直接電話インタビューもしている矢追氏と、映画研究者の内山氏によるディープな話が繰り広げられた。

目次

『キューブリックに魅せられた男』試写会 概要

日程:10月24日(木)
登壇者(敬称略):矢追純一、内山一樹(映画研究者)

上映前のトークイベントに、1970年代から80年代のUFO、オカルトブームを牽引したTVプロデューサーで、キューブリックにインタビューした経験を持つ矢追純一さん、キューブリック研究の第一人者として知られる内山一樹さんが登壇した。キューブリックとの思い出や名作『2001年宇宙の旅』にまつわるエピソードなど、多岐にわたる話題で大きな盛り上がりを見せた。

キューブリックの『バリー・リンドン』に俳優として出演し、キューブリックに魅了され、彼の専属アシスタントとなったレオン・ヴィターリにスポットを当てた今回のドキュメンタリー。矢追さん「なかなかの力作で、よくここまでキューブリックに執着して作ったなと感心しました」と感想を語る。

1980年にロンドンでキューブリックへの電話インタビューを敢行した矢追さんだが、その経緯について「木曜スペシャルで、“火星移住計画”についての番組をやるためにロンドンに行ったんですけど、そこで『キューブリックが珍しくスタジオにいるらしいよ』と聞いて、電話したら『忙しくて会えないけど、電話でなら』ということで。キューブリックは“ついで”でした(笑)」と驚きの事実を明かす。

さらにキューブリックの娘の案内でスタジオの見学をしたとのことで「途中でスタジオの中でキューブリックにすれ違って、『今日はダメでごめんね』と言われました。わりと小っちゃい人で、ヒゲだらけで、(監督ではなく)照明の技師さんかな?という感じの愛想のよいいいひとでした」と振り返る。

内山さんは、矢追さんの訪英の時期が1980年の10月だった点に着目。「『シャイニング』の公開がアメリカでは5月で、日本は12月だったので、(日本公開の直前に訪れた)日本のスタッフが歓迎されたのではないか?」と推測する。

中学生だった51年前(1968年)に『2001年宇宙の旅』を見て以来、キューブリックのファンだという内山さんだが、日本公開時について「当時は(同年公開の)『猿の惑星』の方が評判でしたが、その年の洋画の興収で4位なので、コケたわけではない。1978年に世界的なリバイバルで大ヒットした」と述懐。矢追さん「当時のひとは(映画の内容を)よくわかっていなかったんだと思う」と語り、内山さん「よくわかんないからこそ、何度も見たんでしょうね」とうなずく。

矢追さんは『2001年宇宙の旅』については「宇宙映画の金字塔。傑作であり、いまでもあれ以上の宇宙映画は出てきていない」と称賛。一方で「最近のSF映画は安っぽくて大嫌い!SFということは、現実的でないものを出そうとしているはずなのに、現実が丸見えでセットもペラペラですぐにバレる」とバッサリ。内山さん「UFOが出てくる映画は?」と尋ねると、これにも「大嫌いです」と即答。会場は爆笑に包まれた。

矢追さんはさらに「僕が命がけでUFOや宇宙人を追いかけていたと思っている人が多いけど、本当は全然、関心がない!宇宙人がいようがいまいが関係ないし、興味もない」とまさかの告白。日本テレビに入社し、紆余曲折を経て深夜番組のはしりと言われる「11PM」を担当することになり、プロデューサーから「何でも好きなことをやれ」と言われたそうで「当時、街を見ていると日本人はみんな、余裕がなくて一点を見すえて急ぎ足で歩いてた。これじゃあ煮詰まっちゃうので『たまには立ち止まって空を見ろよ!』という番組を作ろうと思いました。本屋で空飛ぶ円盤の本が目に留まって、立ち読みしたら『宇宙人がUFOに乗ってやってきている』と書いてあって『これだ』と思ったんです」と行きがかり上、UFOに関する番組を作るようになったと明かし「そんな僕に、キューブリックさんへの愛情が博士のようにあるのか…(笑)?」とユーモアたっぷりに語り、会場は笑いと驚きに包まれていた。

内山さんは、キューブリックの逝去から20年が経とうとしていることに「もう、あれから20年かという感じですね」としみじみ。今回、特別企画としてカップリング上映されるドキュメンタリー『キューブリックに愛された男』についても触れつつ「これらの作品はドキュメンタリーですが、キューブリックの長編は13本しかないですし、短編もYouTubeでも見れますので、このドキュメンタリーを機にキューブリックの“本編”にまでぜひ進んでいただければ」と呼びかけ、異色のトークは幕を閉じた。


キューブリックに魅せられた男ストーリー
レオン・ヴィターリは有望な若手英国俳優。多感な時期に『2001年宇宙の旅』と『時計じかけのオレンジ』に衝撃を受けた、キューブリック監督の信奉者でもあった。その彼が全力で挑んだのが新作『バリー・リンドン』のオーディション。万全の態勢で臨んだ結果、見事に合格を果たす。撮影初日、初めて監督本人と会った瞬間「電流が走った」とレオンは回想している。撮影が進む中、監督の厳しい要求の数々にもこたえ、2人は次第に親交を深めてゆく。クランクアップの後、レオンの中に「キューブリックとまた仕事がしたい」という思いが高まり、有望視されていた俳優業からスタッフ側に転身。念願叶い『シャイニング』からキューブリック組に参加する。ダニー少年役のキャスティングを任され、その子役の世話から演技指導までを手がけ、早くも監督の信頼を勝ち取るレオン。そして、この時からキューブリックは身の回りに無数にある、ありとあらゆる細かい用事や仕事を彼に任せ始める。その量は常識をはるかに超え、レオンは24時間365日体制を強いられる。そして、監督から課せられるプレッシャーは次第に彼を肉体的、精神的に追い詰めていく…。

第70回カンヌ国際映画祭クラシック部門公式セレクション作品
作品タイトル:『キューブリックに魅せられた男』
出演:レオン・ヴィターリ/ライアン・オニール/マシュー・モディーン/R・リー・アーメイ/ステラン・スカルスガルド/ダニー・ロイド
監督・撮影・編集:トニー・ジエラ
2017年/アメリカ/カラー/94分/ビスタサイズ/5.1ch
配給:オープンセサミ/配給協力:コピアポア・フィルム

公式サイト:kubrick2019.com
コピーライト:(C)2017True Studio Media

2019年11月1日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

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