【レポート】『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督が映画化エピソード語る「漫画から受けた衝動そのままに」

マイ・ブロークン・マリコ

平庫ワカ原作のコミックを永野芽郁主演で映画化した『マイ・ブロークン・マリコ』(9月30日(金)公開)の最速試写会が行われ、トークショーにタナダユキ監督が登壇した。

目次

映画『マイ・ブロークン・マリコ』最速試写会トークイベント 概要

日程:7月11日(月)20:00~20:35
登壇者(敬称略):タナダユキ監督/MC:SYO
会場:スペースFS汐留

原作の「マイ・ブロークン・マリコ」は、2019年に無料WEBコミック誌「COMIC BRIDGE」で連載(全4回)されるやいなや毎話SNSでトレンド入りし、翌年出版された単行本(全1巻)では即重版が決定するなど、爆発的な反響を呼んだ。また、「輝け!ブロスコミックアワード2020」大賞を受賞、「この漫画がすごい!2021年オンナ編」第4位にランクインしたほか、2021年に文化庁が主催するメディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞するなど、ほぼ無名に近い新人作家の初連載作にも関わらず、異例の快挙を成し遂げ話題となった。

映画では、タナダ監督の力強さと繊細さを兼ね備えた演出、永野のこれまでのイメージを大胆に覆す役柄と演技、そして原作の持つ物語の力がひとつになり、人間の儚さと逞しさが、優しく熱をもって描かれる。

タナダ監督が原作を知ったのはネットショッピングのおすすめ欄だったという。コミック発売日に最後まで読み切り、「映画化したい!」と、即座に動き始めたという。プロデューサーへ連絡し、発売2日後には出版社にアタックをしたという凄まじいスピード感だ。

「自分が映画化しなければならないというような使命感があったのですか?」というMCの問いに対して、タナダ監督は「絶対に映画化したい!という気持ちで、漫画から受けた衝動をそのままに突っ走った感じでした」と当時を振り返る。このような形で映画作りを進めることは監督のキャリアの中でも異例だそうで、「原作権を取るのはすごく大変で、自分がどんなにやりたいと思っても叶わないことも多いんです。だけど、この作品は本当にダメと言われるまで最後まで追いかけたいと思って突き進んでいきました」と語る。

ここまで監督を動かしたのは、ずばり主人公・シイノのキャラクターだった。「無様な姿を晒して生きていっているところに強く惹かれた」と語るタナダ監督だが、その監督の期待を一身に背負ったのが永野芽郁。「誰にこの役を託せるんだろうと思った時に、絶対にお芝居がうまい人でないと難しいだろうと思っていて、打ち合わせの時に永野さんの名前が挙がったんです。今までの永野さんの作品では見たことの無いような役だったので、私自身もシイノを演じる永野芽郁さんを見てみたいと思いました」と明かした。

また、「原作の持っているイメージを仰々しく見せない、という点を監督として大切にしていました。シイノの空回っている姿に、深刻なのに思い詰まらなくて済む感じがあったので、それを背負える俳優と考えると永野さん自身が持っている軽やかさが、きっとこの作品に良い作用をもたらしてくれるんじゃないかなと思いました」と永野を絶賛。

さらに、マリコ役の奈緒に関しては「観る作品観る作品全然表情が違うので、以前からずっと気になっていました。私は知らなかったのですが、永野さんと実生活でもすごく仲が良いらしくて、これはある意味はじめましての人同士よりも良い影響をお互い与え合うんじゃないかなと思いました」とキャスティング秘話を語った。

そして監督が「絶対的安心感」と称えるのは窪田正孝。「窪田さん演じるマキオは、原作の中でセリフも少ないのですが、ちゃんと傷ついて生きてきた人なんだなということが垣間見ることができて、窪田さんだったら間違いなく任せられるなと思いオファーしました」と全幅の信頼を寄せる。

また、劇中でマリコからシイノに送られた数々の手紙は奈緒の直筆だという撮影秘話も披露された。手紙はシイノとマリコの心を繋ぐ大切なキーアイテム。「奈緒さんから自分で手紙を書きたいと言ってくれました。そんな風に作品の想いを大事にしてくれるので、こちらも大事に撮ろうと思っていました。字が原作に出てくる手紙とそっくりだったことには驚愕しました!」と、監督はもちろん、俳優部も含めチーム一丸となってこの『マイ・ブロークン・マリコ』への愛情を深めていったと分かるエピソードだ。

MCから永野と奈緒の没入演技が素晴らしかったと感想を受けた監督は、「現場で見ていると、彼女たちのお芝居をどう編集して、どう仕上げていったら最高の状態にできるのかというのが、最後の最後までプレッシャーでした」とその苦悩を語る。「俳優さんに課されるのは、セリフの無い時にどういった佇まいでいるか、ということだと思います。そういう意味では今回すばらしい方々に集まって頂くことができました」と俳優陣への感謝の気持ちも覗かせた。

今回、脚本家の向井康介とは『ふがいない僕は空を見た』以来、映画では10年振りの再タッグとなるタナダ監督。共同で脚本を担当した理由はズバリ「私が原作を好きすぎるから」だと明かし、「向井さんには、一歩引いた目で作品の事を見てもらえるだろうなと思い、お願いをしました。当時、原作のアナザーストーリーでマリコが亡くなる日のエピソードがあり、その部分を入れるか迷いましたが、向井さんと“これはマリコの死因を巡る話ではないよね”という話になり、作品にとって重要なポイントに立ち戻ることが出来ました」を制作秘話を語る。

制作時の苦労に話題が移ると、原作で印象的に描かれるロケーション探しだったと語ったタナダ監督。「海とススキが混在する場所が本当に無かったんですよ。2か所に分ける案もあったのですが、青森でやっと見つけたんです。ロケハンに行ったのが10月で、それは見事なススキで観光地もされていない場所だったのですが、撮影当日になると海風を受けすぎていて枯れていたんです。本当は東北の見ごろって10月だったんですね。そのままでも侘び寂びのあるススキだったのですが、やっぱりちょっと足りないねということになり、地元の方々の手を借りて別の箇所にあるまだ海風を受けてない元気なススキを刈り取って海辺の近くに刺していったんです」と驚きのエピソードを披露した。

日本には存在しないと思っていたイメージ通りのロケ地で撮影された永野と奈緒の姿はポスタービジュアルにも起用されている。作品の世界観が見事に投影された撮影となった。

原作に愛情を注ぎ、その映画化を心の底から望んで1本の映画へと完成させたタナダ監督。最後に観客へのメッセージとして「皆さんの大事な人に是非勧めて」という言葉でトークイベントを締めくくった。

マイ・ブロークン・マリコ

原作情報

「マイ・ブロークン・マリコ」
著者:平庫ワカ
定価:715円(税込)
レーベル:BRIDGE COMICS
発行:株式会社KADOKAWA
試し読み:https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CB01201022010000_68/


ストーリー
鬱屈した日々を送るOL・シイノトモヨは、テレビのニュースで親友・イカガワマリコが亡くなったことを知る。学生時代から父親に虐待を受けていたマリコのために何かできることはないか考えたシイノは、マリコの魂を救うために、その遺骨を奪うことを決心する。「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れてく!」。マリコの実家から遺骨を強奪、逃走したシイノは、マリコの遺骨を抱いて“ふたり”で旅に出ることに。マリコとの思い出を胸にシイノが向かった先は・・・

作品タイトル:『マイ・ブロークン・マリコ』
出演:永野芽郁
奈緒 窪田正孝 尾美としのり 吉田羊
監督:タナダユキ
脚本:向井康介 タナダユキ
音楽:加藤久貴 
原作:平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(BRIDGE COMICS/KADOKAWA刊)
音楽:加藤久貴
エンディングテーマ:「生きのばし」Theピーズ(P)2003King Record Co.,Ltd.
エグゼクティブプロデューサー:小西啓介
コー・エグゼクティブプロデューサー:堀内大示 大富國正
企画・プロデューサー:永田芳弘
プロデューサー:米山加奈子 熊谷悠
共同プロデューサー:横山一博 岡本圭三 成瀬保則
撮影:高木風太 照明:秋山恵二郎 録音:小川武 美術:井上心平 装飾:遠藤善人 編集:宮島竜治 VFXスーパーバイザー:諸星勲 音響効果:中村佳央
スクリプター:増子さおり スタイリスト:宮本茉莉 ヘアメイク:岩本みちる キャスティング:山下葉子 助監督:松倉大夏 制作担当:村山亜希子
製作:映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会(ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA/エキスプレス)
製作幹事:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:エキスプレス
制作協力:ツインズジャパン
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA

公式サイト:https://happinet-phantom.com/mariko
公式twitter:@mariko_movie
コピーライト:(C)2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

9月30日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー

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