映画『お母さんが一緒』の完成披露上映会が東京・新宿ピカデリーにて6月19日(水)に開催され、江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)、橋口亮輔監督が上映後の舞台挨拶に登壇した。
本作は、家族という一番身近な他人だからこそ湧いて出てくる不満や苛立ちをユーモラスに描いたホームドラマ。親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹が、あるきっかけでお互いを罵倒する修羅場へと発展。そこに三女がサプライズで用意していた恋人が現れ、物語は思わぬ方向へと進む。
映画の中では江口、内田、古川が演じる三姉妹が温泉旅館で激しい乱闘も繰り広げるが、撮影現場の様子や3人の本当の仲について尋ねられた江口は「とにかく、あの一室に閉じこもって、何日も何日もやってたので、とても大変でした…」と苦笑しつつ、「何もないところで、朝から晩まで一緒にいると、どうしたって仲良くなるんですよね」と明かした。
また、内田は乱闘シーンについて「とにかくケガだけはしないようにと思いつつ、一生懸命やりました」とふり返り、古川は「乱闘シーンに関して、あまり記憶はないんですが、映画を観て、もっと土臭く映っているかと思っていたら、意外と青春に見えたので驚きでした」と語った。
現場では橋口監督らスタッフ陣がまず見本を見せたそうだが、青山がレスリング元日本代表ということもあり、橋口監督は信頼を置いて任せていたそうで「ケガがないように僕らがやって、あとは『青山くん、頼んだ!』という感じでした」と述懐。
青山は自身も参加したこの乱闘シーンについて「内田さん、結構強かったです(笑)。圧倒されましたね。『女の人、怖っ!』って思いました(笑)」とふり返っていた。
ほかにも、劇中では姉妹たちの遠慮のない強烈な言葉のやり取りが繰り広げられるが、特に響いたセリフや心に刺さった言葉を尋ねられた江口は「(長女の)弥生としては、たくさんありますけど『うまくいかないのを全部、お母さんのせいにしてる。お姉ちゃんがブサイクなのは、根性がブサイクなんだ』と言われるのは、なかなかすごいことですよね…(苦笑)」とコメント。
このセリフを口にする次女・愛美役の内田も「あれはたしかにすごいセリフですよね。言いながら、思ってました」と納得。橋口監督も「撮影しながらみんな『いま、一線を越えたよね。他人同士だったら関係が壊れてるよね』と言ってました(笑)」とうなずいた。
古川は「内田さんが『不潔かよ!』と言われた時のあの表情が…。たしかに姉妹から『不潔』って言われたら相当ショックだろうなと思いました(笑)」と語り、内田は「初めて読んだ時、笑っちゃいましたもん。この人、家族に『不潔』って言われるんだって(笑)」と明かした。
青山は終盤に長台詞のシーンがあるが、このシーンの撮影が一発OKだったことを明かしつつ「終わった後で監督から『このシーンは2回、失敗したら、撮るのをやめていた。時間がないので2回しか撮れない予定だったけど、一発で決めてくれて良かった』と言われまして…。もし2回失敗してたらどうなってたんだろう」と告白。
橋口監督は「そんな残酷な言い方はしてないです」と苦笑しつつ、「あのシーンをやるために僕は青山くんを選んだんです」と語り、撮影の舞台裏について「リハーサルの時点で、青山くんは忙しいのでセリフも方言も入ってなくて、『どうしようかな。心配だな』と思い『恋人たち』のDVDを渡して『最後に篠原篤の長いセリフがあるけど、5時間かかったんだよ』とすごいプレッシャーを掛けてしまいまして…。あとで青山くんには謝りました。青山くんの生涯No.1の映画は『アベンジャーズ』なんですよ。そういう方に『恋人たち』という重い映画を見せて、申し訳なかったです。『観た?』と聞いたら『観ました』と言ってくれたので、『どうだった?』と聞いたら『僕にはできません…』って(笑)。それでもやっぱりプロですね。現場に来たら、セリフも方言も入っていました。私の心臓はバクバクしてまして、このシーンに5時間かけるわけにいかないから、(最大で)2回かな? と思っていたら、テストから本当に素晴らしかったです」と見事に大役をこなした青山を称賛した。
ちなみに橋口監督は「2回、失敗したらやめていた」という言葉を直接、青山に言ったわけではなく、近くにいた江口に「ポロっと言った」とのこと。江口は「テストで(青山さんの演技の素晴らしさに)わーっと思って、これは(テストで)全部聞いてしまったらもったいないと思って、聞かないようにして、本番で聞いて素敵だなと思いました。終わって、橋口さんが『2回ダメだったらあきらめようと思ってた』というのを聞いて、こんな面白い話はない! と思い、青山さんにお伝えしました(笑)」と明かし、会場は笑いに包まれた。
橋口組初参加となった古川は、「リハーサル初日の本読みの後、監督がした話が忘れられないです。役者の自己紹介の話で『事務所は〇〇で、いまこういう作品をやっていて…』という話じゃなく、あなたはどういう人間かが知りたいんですということをお話しされて、それを聞いた時、私たちも、どういう人間なのか常に見られているってことだなと思って、この作品に入る時は腹をくくらなきゃとプレッシャーと覚悟を感じたの覚えてます」と明かした。
続けて、「私がこの作品を読んだ時、最初に思い出したのが母親のことでした。母と母方のおばと祖母の3人が、この三姉妹のようで、集まるとどうしてもケンカが起こるんです。3人とも『私はお母さんに似てない』とか『お姉ちゃんに似てない』と言い張ってるけど、私は3人の中にちゃんと3人がいるなと思っていて、『だからあなたたちは家族なんだよ』と心の中で思ってたんですけど、いま、私が母に似てるんじゃないかという気持ちがどんどん芽生えてきて、何か失敗したりすると『あぁ、お母さんがこういう性格だから私もこうなっちゃった』と思ったりして、そこでハッと『私もお母さんだわ…』と気づいたり、自分の中に清美、愛美、弥生がいるなって思いました」と、しみじみ語った。
同様に、江口も映画の三姉妹の姿を通じて気づかされる部分があったようで「妹に対してあれやこれやと言うところは、共通してるところがあるかも…」と明かしつつ、「反省はしてないです!」と力強く言い切り、会場は笑いに包まれた。
また内田も、劇中の姉妹たちと同じように、家族に感情を抑えきれずに怒りをぶつけた経験があることを明かし、「この映画で好きなのは、修正不可能なくらいぶつかっても、自分の意志で再生しようと戻ってくるところ。それは『家族だから』とも言えるけど、家族はすごく近いけど他者だってことをみんなが一回、理解して、再生しようとする。自分の家族とも、そういう距離感で接することができたらいいなと思います」と語った。
そして劇中の印象的なシーンとして、江口がアイロンをかけながら鼻歌を歌うシーンを挙げた橋口監督は、この曲が昭和歌謡の「赤いサラファン」であることを明かし「たぶん、お母さんが昭和の人で、歌ってたんだと思います。いつも、悪口ばかり言ってるけど、ちゃんと弥生の中にもお母さんがいるんだなと思うし、妹たちにもいつも口うるさいけど、愛美のブラウスにアイロンをかけている姿が、お母さんの姿に重なるんですよね。僕もそういえば、両親に守られていたんだなと思いました。ケンカばかりしていたので、僕が中学の時に離婚して『良かった』と思ったけど、それでも守られていたんだなとしみじみとアイロンをかける江口さんの姿を見て思い出しました」と語っていた。
舞台挨拶の最後に、江口は「私はこの映画がとても大好きなのでいろんな人に宣伝してもらいたいです」と呼びかけ、橋口監督は「いつもの私の映画とは趣が変わって、楽しくて笑えて、そしてちょっと切なく痛いところもある、軽快な物語になっていると思います。本当にこの4人の出演者が、奇跡的にスケジュールが合いまして、去年の9月に撮影に入れたことが幸運だし幸せなことでした」と本作への強い思いとキャスト陣への感謝を口にし、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
『お母さんが一緒』
出演:江口のりこ 内田慈 古川琴音 青山フォール勝ち(ネルソンズ)
原作・脚本:ペヤンヌマキ
監督・脚色:橋口亮輔(『ぐるりのこと。』『恋人たち』)
製作:松竹ブロードキャスティング
上映時間:106分
映倫区分:G
配給:クロックワークス
(C)2024松竹ブロードキャスティング
公式サイト:www.okaasan-movie.com
公式X:@okaasan_movie
公式Facebook:movie.okaasan
7月12日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
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