【レポート】映画『さよなら、退屈なレオニー』トークイベントで大九明子監督絶賛!「足し算も引き算もいらない完璧!」

カナダに住む17歳の少女レオニーの、ひと夏の成長を描く青春映画『さよなら、退屈なレオニー』が、6月15日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開中。
この公開を記念して、『勝手にふるえてろ』『美人が婚活してみたら』など女性が主役の作品が多い大九明子監督と東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦氏登壇のトークイベントが実施された。

◆日時:7月1日(月) 20:50の回上映終了後
◆場所:新宿武蔵野館
◆登壇:大九明子(映画監督:『勝手にふるえてろ』、『美人が婚活してみたら』)、矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター) ※敬称略

2018年カナダでスマッシュヒットを記録した『さよなら、退屈なレオニー』は、自分がやりたいことも自分の居場所もみつからない、カナダの小さな街に住む17歳の少女レオニーの物語。ある日、レオニーは街のダイナーで年上のミュージシャン、スティーヴと出会う。毎日はつまらないことだらけだが、レオニーのなかで少しずつ何かが変わり始めていく。監督はカナダの新鋭、セバスチャン・ピロット。レオニーを演じるのはカレル・トレンブレイ。2015年のトロント映画祭で「未来を担うひとり」に選ばれ、2018年東京国際映画祭で(原題『蛍はいなくなった』として)上映され、輝きを放つ若手キャストに贈られる<ジェムストーン賞>を受賞している。

上映終了後、大九明子監督と矢田部吉彦氏がイベントに登壇。

一般のお客さんに交じって映画を観終わったばかりの矢田部氏は「ほんとに胸がいっぱいで、映画の雰囲気を壊さずにトークをできるか心配。改めて観て音響がいいところで観ると、音の作り込み方だとか、雰囲気をつなげるときの音楽の使い方とかやっぱり違うなと思ったし、レオニーちゃんの魅力と、スティーヴは(レオニーに)惚れるよなって、様々な感想がでてくる。映画祭で選んでいるときは色んな青春映画観るんですけども、行き詰ってる青春の映画が多いんですけれど、例えばドラッグに走って、セックスして、子供ができてっていう作品が多い中で、こういったほんとに等身大で、カナダの映画だけれども、我々がここまできちんと理解できる行き詰まり感を抱える青春映画はなかなか無いなと。改めて今日見て猛烈に感動したというか浸っています」と興奮気味。

大九監督は「矢田部さんがオールタイムBESTの青春映画だとおっしゃられていると聞いて、私はジャンルということよりも、とてもスケールの大きい壮大な映画だなと思った。音楽と映像と俳優のアンサンブルが素晴らしくて、音楽がずーっと流れている映画なのでラストに向けて、劇伴が邪魔しないように美しく伴っていく中で最後ドバァーとなって、思わず立ち上がりたいくらいの興奮を覚えて。観終わったときに話は全然違うんですが、第一印象としてラース・フォン・トリアー監督の『メランコリア』を思い出した、そういうスケール感のある映画として捉えたんです」とその印象を語った。

女性を主役にした作品が多い大九監督矢田部氏から「自分の作品と比べて観たりしましたか?」の質問には「比べて観るということはしないが、似たカットを見つけると、ハッって少し動揺する。ショットに対して嫉妬したり、こういうのやってみたかったというのはあった」と答えた。

「ラストの部分、母が亡くなって、ホタルが復活して、野球場でっていうとやっぱり『フィールド・オブ・ドリームス』を思い出してしまう」と矢田部氏大九監督もそれには大きく頷いていた。また「そういった輪廻みたいなことを考えると先ほどの大九監督の言うスケールの壮大な映画っていうの納得できる」と続ける。

「シンプルに振りと回収が行われていくんですけど、ラストシーンでは、さあみなさん考えなさいっていう、えっ!っていう驚きがある。そしてそれがとても心地よい。」と大九監督、続けてレオニーについて「めったに笑わないですよね、だから笑ってくれるとホッとする。人をくった話し方が、半笑いというか、あれは心の中で馬鹿にしながら話してみてくださいとお願いしても、できない人もいるかと思うんですけど、そういうのが根っからできるという得難い才能を持った俳優だと思う」とその才能を認める。

ギター教室のシーンでのスティーヴのカッコ良さにも言及。もともとミュージシャンとしても活動するスティーヴの超絶ギターテクニックに大九監督も「なんてことするんだ、あれは惚れるわ」と大絶賛。演出についても、ゲームセンターでのバイクのシーンでは『大したことしているわけじゃないのに足し算も引き算もいらない完ぺきなカット割りだと思うんです、最初抱きついてるだけが、そっと頬よせて、とか、人と人とが恋愛とかいうことよりも体を寄せ合うっていうところの切なさ』に涙が込み上げてきたとお気に入りのシーンを挙げた。

矢田部氏も「スティーヴのサブストーリーもレオニーの心情と相まって描かれているからただの青春映画で終わってない」と分析する。

「レオニーを『勝手にふるえてろ』での松岡茉優さんに重ねて観た方も多いと思う」と客席を見渡す矢田部氏大九監督は松岡さんについて「最初から大物感たっぷりでしたよ」と明かした。18歳当時の松岡さんが高校の制服への不満を話していたエピソードに会場では笑いが起こった。

最後に矢田部氏は「本作のようなフランス語圏のカナダの映画がここ6~7年とても勢いがあって、なんでかって言うとグザヴィエ・ドランという監督が世界的にぐわっと出てきて、そういう天才が出てくるとその国が盛り上がるということで助成金なども充実してきて。この作品も監督もその流れで出てきたわけで。カナダのフランス語圏の映画は今後も注目してほしい」とメッセージを送った。

あの頃の<きらめき>と<痛み>がよみがえる、ひと夏の泡沫青春ダイアリー。
ストーリー
カナダ・ケベックの海辺の街で暮らす17歳の少女、レオニー。高校卒業を一ヶ月後に控えながら、どこかイライラした毎日を送っていた。退屈な街を飛び出したくて仕方ないけれど、自分が何をしたいかわからない。口うるさい母親も気に入らないが、それ以上に母親の再婚相手のことが大嫌い。レオニーが唯一、頼りにしているのは離れて暮らす実の父親だけだった。
そんなある日、レオニーは街のダイナーで年上のミュージシャン、スティーヴと出会う。どこか街になじまない雰囲気を纏うスティーヴに興味を持ったレオニーは、なんとなく彼にギターを習うことに…。夏が過ぎていくなか、あいかわらず、口論が絶えない家庭、どこか浮いている学校生活、黙々とこなす野球場のアルバイト、それから、暇つぶしで始めたギター…毎日はつまらないことだらけだが、レオニーのなかで少しずつ何かが変わり始めていた。

作品タイトル:『さよなら、退屈なレオニー』
出演:カレル・トレンブレイ/ピエール=リュック・ブリラント
監督:セバスチャン・ピロット
2018年/カナダ/英題:The Fireflies Are Gone/96分/ビスタ
配給:ブロードメディア・スタジオ

公式サイト:http://sayonara-leonie.com
コピーライト:(C)CORPORATION ACPAV INC. 2018

6月15日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開中

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