映画『夜、鳥たちが啼く』(12月9日(金)公開)の完成披露舞台挨拶に、主演の山田裕貴と共演の松本まりか、城定秀夫監督が登壇し、「半同居生活」という新たな“愛のカタチ”を描いた本作の撮影秘話を語った。
映画『夜、鳥たちが啼く』完成披露舞台挨拶 実施概要
日時:11月17日(木) 18:30~19:00
登壇者(敬称略):山田裕貴、松本まりか、城定秀夫監督
場所:新宿ピカデリー
若くして小説家としてデビューするも、その後鳴かず飛ばずの鬱屈した日々を送る主人公・慎一を演じた山田は、満席の客席を眺めながら「これまでで一番感想が気になる作品です。観終わったら皆さんの感想をエゴサするので、自分の言葉で感想をいただけたら」と映画への反響を期待。
慎一は、人との距離の取り方がうまくできない人物だが、「彼の行動すべてが愛を求める叫びのように思えた。人に干渉はされたくないけれど人と関わり合いたいという葛藤を持っている人でその表現がへたくそ。演じる上では共感しつつも、こうはならないようにと自分の心の中に眠る汚い感情をそのまま出してやっていました」と演じる上での心構えを明かした。
慎一の家でいびつな「半同居生活」をする行き場のないシングルマザー・裕子役の松本は、「どうも、闇本です(笑)」と先日のツイート投稿がネットニュースで取り上げられた事を冗談として笑い飛ばしつつ、「15歳でデビューして22年くらいになりますが、今回のような作品に憧れていたのでお声がけいただけるようになって感慨深いです。目の前のことをガムシャラにやって来たから、憧れていた世界に来られたんだという思いがあります。それほど嬉しかった」と本作出演への感無量な想いを吐露。
5度目の共演となる山田については、「人間力が凄い。まさに生命体。この生命体から何が出てくるのか?その面白さにワクワクしました」と一方的に熱弁しながら「これ伝わってる?」と照れ笑いすると、山田も「うん、僕にはすごく伝わってる」と優しく答え、強い信頼関係で結ばれている様子を披露。しかし、その山田からすかさず「舞台袖にいたときは『喋れなかったら助けてね!』と言っていたのに…メチャメチャ喋るやん!」と突っ込まれると、場内には笑いが起こった。
さらに松本は、自身が演じた裕子は心の傷に蓋をして葛藤しながら生きる役どころだが「つかみどころのない人で凄く歯がゆかった。自分が何を求めているのかを見ずに蓋をして。でもその感じが当時の自分の心境と重なったので、そのもどかしさを利用しました。まるで右手と右足が同時に動いてしまうような違和感をそのまま演じたというか…」と心の中にある感情をぶつけながらキャラクターに向き合ったと言い、「だからあのシーンでもね?」と松本が山田に問いかけると、「あ、あそこね。言葉がいらない感じ。きっと観てもらったらわかると思うんですけど…」と上映前の舞台挨拶という事に配慮しつつ、まるで劇中の慎一と裕子さながら、語らずとも通じ合っているかのような以心伝心を感じさせる雰囲気で笑顔を見せていた。
「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」などで知られる作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた同名短編小説(所収「大きなハードルと小さなハードル」河出文庫刊)を原作とする本作。映画化しようと思った理由について、城定監督は「佐藤泰志さん原作の映画はどれも傑作だと思うけれど、自分の中でのチャレンジとしては明るい気持ちで観られるような雰囲気にしたかった。家族を作る話は佐藤さん原作の映画ではなかった物語でもあるので、それにもチャレンジしようと思った」と本作映画化への狙いを明かした。
劇中では、“結婚もしてないのに家庭内別居”という、これまでにない新しい愛の形とも言える「半同居」関係が描かれる。本作ならではの二人の関係について、山田は「慎一という役をやってから半同居する気持ちがわかると思った」と共感しつつも、「僕はその方向に向かってしまうのか…と思ってしまう」と苦笑い。
一方の松本は「この作品をやるまでは理解したくなくて、曖昧な関係性は耐えられないし、したくないと思っていました。二人の間に愛があるのはわかるけれど、自分ができるのかと言われたら不安。その感情に自分を持って行くのはきつかったです。でもいざ演じてみると『あー、そういうことか』と。慎一と裕子は自分よりも強いのではないかと思って、カッコいいとも思えました。枠に捕らわれて形がないと不安だと言うのは自分が子供だからだと気付かされた。成長させていただきましたし、そんな気持ちになったのは自分でもビックリのギフトでした」と作品を通して学びを得たようだった。
最後に主演の山田は「皆さん一人一人が今幸せだと思えていること、そして周りの目を気にせずに生きていくことが一番大切です。色々な人がいてよくて、みんながそれを支え合える社会になればいいという願いもこの作品に込めました。生きづらい人たちが一歩踏み出す作品なので、そういったところを見ていただければ嬉しいです」とアピールし、舞台挨拶は幕を閉じた。
ストーリー
若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子(松本まりか)が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。
慎一が恋人と暮らしていた一軒家を、離婚して行き場を失った2人に提供し、自身は離れのプレハブで寝起きするという奇妙な共同生活。自分自身への苛立ちから身勝手に他者を傷つけてきた慎一は、そんな自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。
書いては止まり、原稿を破り捨て、また書き始める。それはまるで自傷行為のようでもあった。
一方の裕子は、アキラが眠りにつくと一人町へと繰り出し、行きずりの男たちと逢瀬を重ねる。親として人として強くあらねばと言う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼女もまた苦しんでいた。そして、父親に去られ深く傷ついたアキラは唯一母親以外の身近な存在となった慎一を慕い始める。慎一と裕子はお互い深入りしないよう距離を保ちながら、3人で過ごす表面的には穏やかな日々を重ねてゆく。だが2人とも、未だ前に進む一歩を踏み出せずにいた。そして、ある夜…。
作品タイトル:『夜、鳥たちが啼く』
出演:山田裕貴、松本まりか
森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ/藤田朋子/宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹
監督:城定秀夫
脚本:高田亮
原作:佐藤泰志「夜、鳥たちが啼く」(所収「大きなハードルと小さなハードル」河出文庫刊)
2022年/日本/115分/ビスタ/DCP5.1ch 映倫:R15
製作・配給:クロックワークス
公式サイト:yorutori-movie.com
公式Twitter:@yorutori_movie
コピーライト:(C) 2022 クロックワークス
12月9日(金)新宿ピカデリー他にて公開
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