1990年にスタートし、多くの映画人や映画ファンから愛され続ける「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が、2019年3月の開催で29回目を迎える。夕張市の財政難によって一時は開催が見送られたものの、運営を市から民間に移行し、2008年に復活。今年も3月7日(木)~3月10日(日)の4日間に渡り開催される。そしてこの度、2月6日(水)札幌市内ホテルにて「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」のラインナップ発表が行われた。
雪深く寒い札幌市内だったが、会場には大勢の道内マスコミが姿を見せ、期待の招待作品や注目のコンペ部門ノミネート作、その他の企画上映の発表、新設された「コア・ファンタ部門」についての説明、そして深津エグゼクティブ・プロデューサーより電撃発表された「プロジェクト30」について、耳を傾けていた。
オープニング招待作品は、韓流アイドル、チャン・グンソク主演作ながら、昨年のベルリン映画祭でワールドプレミアされて以来、♯MeToo問題の影響を受けてお蔵入りりしていた幻の問題作『人間、空間、時間、そして人間(仮題)』(キム・ギドク監督)。本映画祭プログラミング・ディレクターの塩田時敏氏は、「こういう作品を上映してこそ映画祭の意味がある」とアピール。空中を浮遊することになった廃軍艦というファンタスティックな設定を舞台に、取り残された人々のサバイバルを描くメランコリックかつ過激なファンタジー作品である。クロージング招待作の『レゴ(R)ムービー2』は、クリエイティビティーに富んだ映像と驚き溢れる物語で数々の賞レースを賑わし、大ヒットと共に全世界の話題をさらった『レゴ(R)ムービー』待望の最新作。ヤバいクイーンが支配する“すべてがミュージカル”な惑星で、またもや“選ばれし者”になった主人公エメットが明るくおばかに戦う。他招待作の『アナと世界の終わり』は、〝負け組〟の高校生集団が歌って踊って暴れまくる青春ゾンビミュージカル。世界各国のファンタスティック映画祭で上映され、『ショーン・オブ・ザ・デッド』× 『ラ・ラ・ランド』と評される話題作である。
また、特別上映作品としては、ムンバイに住むずる賢いマジシャンの青年が、顔も知らない父親を探す奇想天外な旅を通じて幸せを見つける物語『The Extraordinary Journey Of The Fakir(原題) 』(配給:東北新社、STAR CHANNELMOVIES)と、熱海を舞台にK-POPスターと芸者として生きる女性との運命的な恋を描く物語『熱海のやまぼうし』(配給:2018「熱海のやまぼうし」製作委員会)を上映する。
さらに、毎年業界内外から注目を集めるコンペティション部門の審査員が決定した。本映画祭の大賞となるファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門には、審査委員長として、北海道出身であり『日本で一番悪い奴ら』(16)では北海道を舞台にした白石和彌監督が就任。『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)、『狐狼の血』(18)などを手がけ、バイオレンスを通して人間の深淵を描く視点から、どんな審査を行うのか期待される。ほか審査員に、韓国・プチョン国際ファンタスティック映画祭プログラマーを務めるモ・ウニョンや、日本映画の批評も手がけるプログラミング・アドバイザーのマーク・シリング、映画『素敵なダイヤモンドスキャンダル』(18)やドラマ「ディアポリス異邦警察」(16)を手掛ける冨永昌敬監督が就任。また、「俺たちの朝」「太陽にほえろ!」「俺たちは天使だ!」など数々のドラマで幅広い視聴者の心を掴んできた女優・長谷直美が審査員として参加するのにも注目だ。この5名が、多様な視点から作品を審査していく。
さらに、毎年多彩な作品が集まるインターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門では、本映画祭の常連であり自作品でオフシアター・コンペの受賞経験もある久保直樹監督が審査委員長に初就任。また、『モリのいる場所』(18)やドラマ「面白南極料理人」(19)で知られる沖田修一監督と、妹・安藤サクラをヒロインに自作小説を映画化した「0.5ミリ」(11)が高く評価された安藤桃子監督も審査員に決定。本映画祭ではかつて奥田瑛ニが審査員を務めたこともあり、親子二代の就任が実現した。これも29年の歴史を持つ本映画祭ならではのこと。この3監督の感性が集う化学反応で、どのような評価が下されるのか。これまでも幾多の才能を発掘し世に送り出して来た本映画祭のコンペ部門にご期待頂きたい。
ラインナップ発表会 登壇者コメント
小網敏男さん/映画祭実行委員長
2008年に市民主導で復活した映画祭です。今年も、市民の手で人情溢れるおもてなしをし、いらっしゃる皆さんが感動に出会える祭典にしたいと願っています。引き続き皆さんのご支援をお願いいたします。
塩田時敏さん/コンペ部門プログラミング・ディレクター
今年は「ファンタスティック」らしいバランスのいい作品ラインナップになったと思う。オフシアター部門は若手の登竜門的に思われているが、今後は年齢に関係なく新たな才能を輩出する登竜門になっていけるようにしたい。今年は審査員に、高い評価を受けた作品を生み出している監督たちが名を連ねているのも注目すべき。
深津修一さん/エグゼクティブ・プロデューサー
29回目を迎える今年のテーマは「ファンタを止めるな!」。その言葉には、「日本一楽しい映画祭」であるこの映画祭を永く続けていくための想いが込められています。いま本映画祭はひとつの区切り。今春JRが廃線、鈴木直道市長の辞職・知事選参戦、そして来年は30周年。映画祭をより発展的にしていくためのきっかけだと考え、このタイミングで私たちは今一度「原点に帰って考えてみる」ことにしました。30周年に向けて「ゆうばり映画祭プロジェクト30」を立ち上げて考えた結果、来年の映画祭は、会期を、雪を気にせず各地からアクセスしやすく、名産品のメロンが収穫を迎える「夏」に移し、会場も、インフラが厳しく会場の確保が難しい本町の現状を受けて市内に拡大する計画です。
西村喜廣さん/コア・ファンタ部門プログラミング・ディレクター
ファンタスティックと名のつく映画祭は、いまや日本で「ゆうばり」だけ。「ファンタスティック」にはバイオレンス、ホラー、ファンタジーなどいろいろ意味があるが、実はみんな「エンターテインメント」。その中にメッセージが込められた作品を選び抜いたつもり。今年は内容が秘密のシークレット・スクリーニングも行う予定。イベント感覚で楽しんでほしい。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019
開催期間:2019年3月7日(木)~3月10日(日)
招待作品ラインナップ
オープニング
『二元、空間、時間、そして人間(仮題)』 (配給:キング・レコード)
コピーライト:(c)2018 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
クロージング
『レゴ(R)ムービー2』 (配給:ワーナー・ブラザース映画)
コピーライト:(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAIMENT INC.
その他の招待作品
『アナと世界の終わり)』 (配給:ポニーキャニオン)
コピーライト:(c)2017 ANNA AND THE APOCALYPSE LTD.
審査員
ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門
審査委員長 白石和彌(監督)
審査員
モ・ウニョン(プログラマー兼プログラミング・コンサルタント)
長谷直美(女優)
マーク・シリング(プログラミング・アドバイザー)
冨永昌敬(監督)
インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門
審査委員長 久保直樹(監督)
審査員 安藤桃子(監督)
沖田修一(監督)
各部門紹介
現状81作品の上映、企画、イベントの実施を予定。
招待作品部門(全3作品)
本映画祭の主軸となる招待作品部門。劇場公開前の話題作等をいち早くお届け。
ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門《ノミネート6作品》
多くの若手クリエーターを世に輩出している、国内屈指のコンペ部門。
インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門《ノミネート15作品》
これからが注目されている若いクリエイターの作品を集めた短編作品のコンペ。
ゆうばりチョイス部門(全6作品)
本映画祭おすすめのエンターテインメント作品を独自の視点でチョイス。
コア・ファンタ部門(24作品)
今年新設。これぞファンタスティック映画!と思える作品をクリエイター目線で選定。
フォービデンゾーン部門(6作品)
コンペ部門ディレクター塩田時敏が禁断の映画たちをセレクトするノン・コンペ部門。
協賛企画、特罰企画、特別企画協力、その他恒例プログラム
映画人にスポットを当てた上映やトーク、ゆうばりならではの企画が満載。
京楽ピクチャーズ.Presents 「ニューウェーブアワード」授賞式
これからの世の新しい波となり、業界での活躍を期待する男優・女優・クリエイターを映画祭独自の視点から選出するアワード。毎年オープニングセレモニーで表彰式を行う。
2019年度コンペティション部門応募数
応募総数:425作品(日本:362作品 海外:63作品)
オフシアター・コンペティション部門 334作品(日本:297作品 海外:37作品)
ショートフィルム・コンペティション部門 235作品(日本:192作品 海外:43作品)
海外応募国=17ヶ国(韓国、中国、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、カナダ、オランダ、デンマーク、ポーランド、イスラエル、ノルウェー、リトアニア、台湾)
※オフシアター、ショートともに重複応募があります。
上記より、ノミネート作品としてオフ上映作品は6作品、ショート上映作品は15作品を選出。映画祭期間中の厳選なる審査を経て、クロージングセレモニーで、グランプリその他受賞作品が発表される。
ゆうばり映画祭サポーターズクラブ募集中
本映画祭では「ゆうばり映画祭サポーターズクラブ」を募集しています。当日のボランティア活動から事前準備まで、関わり方は様々です。あなたも、ゆうばり映画祭サポーターズクラブに登録してゆうばりファンタを盛り上げませんか?お問い合わせは、下記ゆうばり国際ファンタスティック映画祭事務局までお願い申し上げます。
TEL:0123-57-7652
FAX:0123-57-7653
メール:yff-support-fund@next-yubari.net
サイト:http://yubarifanta.com/yubari_supporters_club/
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019
公式サイト:http://yubarifanta.com(PC・モバイル共通)
Twitter:https://twitter.com/yubarifanta/
Facebook:https://www.facebook.com/yubarifanta
開催期間: 2019年3月7日(木)~3月10日(日)
関連記事:
■ 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」開催決定!70年代の洋画ポスターを思わせるようなキービジュアル公開